2022年07月01日

雇用関連統計22年5月-失業率は上昇したが、雇用情勢の改善傾向は続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が7月1日に公表した労働力調査によると、22年5月の完全失業率は前月から0.1ポイント上昇の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想は2.6%)となった。労働力人口が前月から▲14万人の減少となる中、就業者が前月から▲14万人減少し、失業者は前月から4万人増の180万人(いずれも季節調整値)となった。
労働力人口、就業者数ともに4ヵ月ぶりに減少し、労働市場への復帰が就業者の増加につながる動きが止まる形となった。ただし、前月までの改善ペースが速かったことの反動もあり、雇用情勢の改善基調が途切れたとはいえないだろう。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差17万人増(4月:同24万人増)と2ヵ月連続で増加した。産業別には、宿泊・飲食サービスが前年差▲3万人減(4月:同10万人増)と5ヵ月ぶりに減少に転じたほか、製造業(4月:同▲19万人減→5月:同▲9万人減)、卸売・小売(4月:前年差▲31万人減→5月:同▲39万人減)、生活関連サービス・娯楽(4月:前年差▲12万人減→4月:同▲2万人減)も減少が続いたが、医療・福祉が前年差46万人増(4月:同47万人増)の大幅増加となった。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ45万人増(4月:同72万人増)と3ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差39万人増(4月:同51万人増)と3ヵ月連続で増加し、非正規の職員・従業員数が前年差5万人増(4月:同21万人増)と4ヵ月連続で増加した。正規、非正規ともに前年と比べれば増加しているが、コロナ禍前の19年同月と比べると、正規の職員・従業員が73万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲34万人減となっている。

2.飲食店、宿泊業の休業率が低下

主な産業別休業率 休業者数は164万人となり、前年に比べて▲50万人の減少(4月:同▲10万人減)となった。休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、まん延防止等重点措置の終了を受けて、飲食店(3月:5.4%→4月:2.7%→5月:2.3%)、宿泊業(3月:6.7%→4月:5.9%→5月:2.0%)が低下し、平常時の水準に戻ったが、娯楽業(3月:4.1%→4月:2.9%→5月:4.2%)は上昇した(休業率は原数値)。

3.有効求人倍率の改善が続く

有効求人倍率の推移 厚生労働省が7月1日に公表した一般職業紹介状況によると、22年5月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.24倍(QUICK集計・事前予想:1.24倍、当社予想も1.24倍)となり、5ヵ月連続で上昇した。有効求人数が前月比1.9%の高い伸びとなり、有効求職者数の伸び(前月比1.1%)を上回った。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.08ポイント上昇の2.27倍となった。新規求職申込件数が前月比▲2.6%の減少となる一方、新規求人数が同0.3%と3ヵ月連続で増加した。
 
失業率は4ヵ月ぶりに悪化したが、2~4月の改善ペースが速かったことの反動もある。有効求人倍率、新規求人倍率の上昇が続いていることをあわせて考えれば、雇用情勢は改善していると判断される。中国のロックダウンの影響で供給制約が強まっていることもあり、製造業の生産活動は停滞しているが、まん延防止等重点措置の終了を受けて、外食、旅行などを中心に個人消費は回復している。行動制限が解除された状態が維持されれば、先行きも雇用情勢の改善傾向が続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年07月01日「経済・金融フラッシュ」)

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