2022年05月11日

ふるさと納税をしない理由

基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.302]

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1―はじめに

2020年度のふるさと納税で全国の各自治体に寄付された金額の合計は約6725億円、ふるさと納税にかかる住民税控除適用者数は約552万人だった*1。ふるさと納税の利用者は増加傾向にあり、2020年度の寄付額はそれまでで最も大きい金額ではあるものの、住民税の所得割の納税義務者数は約5900万人*2であることから、利用率は1割を下回る。

ふるさと納税は、実質2000円の負担で様々なお礼の品がもらえるというメリットの見えやすい制度といえる。そして、ふるさと納税という言葉を聞いたことがある人の割合は9割を超えるという報告もある*3ことから、制度の存在は既にほとんどの人に認識されているといっていいだろう。それにも関わらず、多くの人々は利用していないのはどうしてなのか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が行った独自のアンケート調査を用いて確認した結果を紹介する。
 
*1 総務省(令和3年7月)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000761685.pdf,2022年3月22日アクセス)
*2 総務省(令和3年3月)(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran09_20.html,2022年3月22日アクセス)
*3 リサーチプラス(2018年7月)(https://www.research-plus.net/html/investigation/report/index138.html,2022年3月22日アクセス); リサーチノート(2022年3月)
https://research-platform.line.me/archives/39710497.html,2022年3月22日アクセス)

2―調査概要

本調査は、2021年の3月にWEBアンケートによって実施した。回答は、全国の26~65歳の男女*4を対象に、全国6地区の調査対象者の性別・年齢階層別(10歳ごと)の分布を、令和2年1月の住民基本台帳の分布に合わせて収集した。回答数の合計は2,601件である。本稿ではこのうち、ふるさと納税を行ったとしても金銭的なメリットが無い可能性のある、年収130万円未満の人を除いた、1,638件の情報を用いて行った分析の結果を紹介する。
 
*4 マイボイスコム株式会社のモニター会員

3―ふるさと納税をしない理由

1,638名の回答者うち2020年のふるさと納税をしなかった人は1,139名であった(約70%)。これらの人を対象に、ふるさと納税をしなかった理由を尋ねた回答の分布を、性/年齢層別に確認したのが図表1である。全体で最も大きな割合を占めたのは、「仕組みやメリットについて、よく知らないため」だった。年齢層別に見ると、男女ともに、「仕組みやメリットについて、よく知らないため」を選んだ人の割合が最も大きい年齢層は30代で、最も小さい年齢層は60代だった。また、「仕組みやメリットについては知っており、やりたいと思っているが、手続きが面倒なため」という人も各性別年齢層で約2割確認された。
[図表1]ふるさと納税をしない理由(男女/年齢層別)
さらに、図表2は、年収別にふるさと納税をしない理由の分布を示したものである。年収が700万円未満の人の間で最も選択された理由は「仕組みやメリットについて、よく知らないため」である一方、年収が700万円以上の人の間では、「仕組みやメリットについては知っているが、必要性を感じないため」の割合が最も大きく、「仕組みやメリットについては知っており、やりたいと思っているが、手続きが面倒なため」の割合が次に大きい。所得が高い人は納税額も大きいため、こうした仕組みやメリットについて調べている可能性が示唆される。
[図表2]ふるさと納税をしない理由(年収別)

4―おわりに

本調査からは、ふるさと納税を行った人を含めた納税者全体の約4分の1が、仕組みやメリットについてよく知らないためにふるさと納税をしていない可能性があることが示された。仕組みやメリットをよく周知し、納税者に判断してもらうことが重要と考えられるだろう。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

(2022年05月11日「基礎研マンスリー」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【ふるさと納税をしない理由】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

ふるさと納税をしない理由のレポート Topへ