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2022年度の年金額は0.4%減額。現役賃金の下落と痛み分け
基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.301]
保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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1―年金額改定の仕組み
本来の改定率は、物価の変動率と賃金の変動率の組合せで決まる[図表2]。
物価の変動率は、変動へ即座に対応するために前年(1~12月)平均の消費者物価指数(総合)の上昇率が使われる。2021年は年末にかけて物価が上昇したが、年平均は-0.2%となった。
他方で賃金の変動率は、前年の物価上昇率と2~4年度前の実質賃金変動率との合計が使われる。急変を避けるために3年平均となっており、今回はコロナ禍による2020年度の賃金下落が3分の1だけ影響して-0.4%となった。
この結果、2021年度の改正が機能し、年金受給者全体の本来改定率が現役賃金の下落と同じ-0.4%となった。
2―次期年金改革への影響:経済界等から調整完全適用の要望が高まる可能性
現時点の繰越は小幅であり、2021年度は2020年度と比べて賃金の水準が回復したことや昨年末から続く物価上昇などを考えれば、2023年度はある程度の調整が実施される可能性がある。しかし、仮に2023年度も調整が実施されなければ3年連続の繰越となり、繰越を撤廃し調整の完全適用を求める経済界等からの声が強まる可能性がある*。
経済界は、厚労省が2020年12月に公表した次期改革の素案と同様の方策に対して、2019年時点では慎重な姿勢を見せていた。2023年度の年金額改定が、次期年金改革を巡る駆け引きを左右する可能性がある。
* さらに繰越が続いて繰越分が大きくなれば、物価が大幅に上昇した時に物価の伸びを大きく下回る率で年金額が改定される形になるため、政治的な論点となる可能性もある。
(2022年04月07日「基礎研マンスリー」)
03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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