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2022年03月22日
オーストラリアの保険資本規制LAGIC等の改正を巡る動向
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5―LAGICの改定案-内部モデルの使用の削除
資本の枠組みについて、損害保険会社及び生命保険会社の規制資本計算に関する既存の要件の大部分が維持されるとしているが、大きな変更点の1つとして、「内部モデルの使用の削除」が挙げられている。この変更は、全ての保険会社が規制資本を計算するために、APRAの標準的な方法を採用する必要があることを意味している。
具体的には、健全性基準GPS 113自己資本比率:内部モデルに基づく手法、の削除を提案している。また、GPS 113が削除される場合、整合性のため、健全性基準LPS 110第43項の生命保険会社に対するミラーリング規定も削除されることになる。
APRAは2020年に、内部モデルを削除する意図について、業界にコメントを求め、利害関係者から様々な反応を受けた、と述べている。これによると、直接的な影響は限定的なため、殆どの提案はこの提案には関係なく、反対意見は、ICM(Internal Capital Model:内部資本モデル)がよりリスク感応度の高い資本管理ツールとして提供する価値についてコメントし、APRAの提案は業界に誤ったメッセージを送り、資本モデリングへの投資の減少につながる可能性があると述べた。また、補足資料として、規制上の資本を決定するための一貫したアプローチを持つことの利点についてコメントしていた。
APRAは、モデリングが意思決定を促進し、リスク感応度の高い資本管理ツールとして提供する価値に関する業界の見解を認識し、これに同意しているが、これは多くの場合、業界全体でのICMの使用ではなく、経済資本モデルによって推進されている。APRAは、保険会社がリスクと資本管理に関する強固な意思決定を推進するために、経済資本モデルの開発と利用を継続することを強く奨励している。APRAは、モデルが適用可能な様々な用途について、保険会社とAPRAの間で情報共有と対話を促進する方法を検討している、としている。
また、損害保険業界全体でのICMの利用が限られていること、及び多くの損害保険会社が既に経済資本モデルを使用しているという事実を考慮すると、APRAはこの提案が健全性の結果を損なうとは考えておらず、本提案が、各保険会社のリスク・プロファイルに適合した経済資本モデルの開発を促進し、適切な内部リスク及び資本管理の意思決定を促し、規制上の資本目的の一貫性と比較可能性を促進するものであると考えている、と述べた。また、現在、内部モデルの使用を承認している生命保険会社はない、としている。
具体的には、健全性基準GPS 113自己資本比率:内部モデルに基づく手法、の削除を提案している。また、GPS 113が削除される場合、整合性のため、健全性基準LPS 110第43項の生命保険会社に対するミラーリング規定も削除されることになる。
APRAは2020年に、内部モデルを削除する意図について、業界にコメントを求め、利害関係者から様々な反応を受けた、と述べている。これによると、直接的な影響は限定的なため、殆どの提案はこの提案には関係なく、反対意見は、ICM(Internal Capital Model:内部資本モデル)がよりリスク感応度の高い資本管理ツールとして提供する価値についてコメントし、APRAの提案は業界に誤ったメッセージを送り、資本モデリングへの投資の減少につながる可能性があると述べた。また、補足資料として、規制上の資本を決定するための一貫したアプローチを持つことの利点についてコメントしていた。
APRAは、モデリングが意思決定を促進し、リスク感応度の高い資本管理ツールとして提供する価値に関する業界の見解を認識し、これに同意しているが、これは多くの場合、業界全体でのICMの使用ではなく、経済資本モデルによって推進されている。APRAは、保険会社がリスクと資本管理に関する強固な意思決定を推進するために、経済資本モデルの開発と利用を継続することを強く奨励している。APRAは、モデルが適用可能な様々な用途について、保険会社とAPRAの間で情報共有と対話を促進する方法を検討している、としている。
また、損害保険業界全体でのICMの利用が限られていること、及び多くの損害保険会社が既に経済資本モデルを使用しているという事実を考慮すると、APRAはこの提案が健全性の結果を損なうとは考えておらず、本提案が、各保険会社のリスク・プロファイルに適合した経済資本モデルの開発を促進し、適切な内部リスク及び資本管理の意思決定を促し、規制上の資本目的の一貫性と比較可能性を促進するものであると考えている、と述べた。また、現在、内部モデルの使用を承認している生命保険会社はない、としている。
6―まとめ
以上、今回のレポートでは、IFRS第17号(保険契約)の基準化に伴う、オーストラリアにおける保険の資本及び報告の枠組みの改正を巡る動向について報告してきた。
保険における資本規制と会計基準の関係については、各国の保険監督当局や保険会社にとって、大変関心が高い事項であるが、それに対するオーストラリアのAPRAの方針は、(オーストラリア以外でも同様の方針で資本規制を見直している国もあるが)1つの考え方を示した形になっている。。また、資本規制における内部モデルの取扱いについても明確な姿勢を示した形になっている。
これらの課題は、日本の保険会社にとっても極めて重要な課題であることから、今回の提案を踏まえたオーストラリアの保険業界の反応やそれを踏まえたAPRAの対応については注目されるところとなる。LAGICの改正を巡る動向等については、今後も引き続き注視していくこととしたい。
保険における資本規制と会計基準の関係については、各国の保険監督当局や保険会社にとって、大変関心が高い事項であるが、それに対するオーストラリアのAPRAの方針は、(オーストラリア以外でも同様の方針で資本規制を見直している国もあるが)1つの考え方を示した形になっている。。また、資本規制における内部モデルの取扱いについても明確な姿勢を示した形になっている。
これらの課題は、日本の保険会社にとっても極めて重要な課題であることから、今回の提案を踏まえたオーストラリアの保険業界の反応やそれを踏まえたAPRAの対応については注目されるところとなる。LAGICの改正を巡る動向等については、今後も引き続き注視していくこととしたい。
(2022年03月22日「保険・年金フォーカス」)
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