2022年03月15日

中国も建国100周年を迎える頃には現役2人で高齢者を支える社会に!

三尾 幸吉郎

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1――人口増加が止まった中国

[図表-1]中国の人口 中国国家統計局が公表した人口統計によると、2021年末時点の全人口(31の省・自治区・直轄市と現役軍人の人口を指し、31の省・自治区・直轄市に住む香港・マカオ・台湾住民および外国籍者は含まない)は14億1260万人で、前年末に比べ48万人増えた。中華人民共和国が建国された1949年の総人口は5億4167万人だったので、約2.6倍に増えたことになる。建国以来の人口推移を見ると、1960-61年には大躍進政策の失敗やその後の飢饉により2年連続で減少したこともあったが、平均寿命が延びたことなどから基本的には増加傾向だった。しかし、少子化が進んだことを背景に人口増加率はしだいに鈍化し、1960年代の年率2.3%増をピークに、1970年代が同1.7%増、1980年代が同1.5%増、1990年代が同1.0%増、2000年代が同0.6%増、2010年代は同0.5%増、そして2021年にはほぼゼロとなった[図表-1]。

2――少子高齢化が進展し現役世代人口が減少

2――少子高齢化が進展し現役世代人口が減少

ここで少子高齢化の現状を確認しておこう。まず、出生率(出生数÷全人口)の推移を見ると、改革開放が始まる前(1970年代)の出生率は年平均2.45%だったが、1979年に食糧難に備えて「一人っ子政策」を導入したことを背景に、1980年代には同2.12%、1990年代には同1.76%、2000年代には同1.26%と低下傾向を辿った。2016年には「一人っ子政策」から「二人っ子政策」に移行したため1.357%と前年の1.199%を上回った。ところが、2017年には1.264%、2018年には1.086%、2019年には1.041%、2020年には0.852%と再び低下し始めたため、2021年には「三人っ子政策」に移行して少子化に歯止めを掛けようとした。しかし、2021年の出生人口は1062万人で出生率は0.752%と建国以来の最低水準を更新してしまった。教育費など子育てコストが高く、二人以上の子供の誕生を望まない家庭が多いことが主な原因と見られる。

他方、中国では高齢化も進んでいる。全人口に占める高齢者(65歳以上)比率を見ると、改革開放直後(1982年末)には4.9%を占めるに過ぎなかったが、1990年末には5.6%、2000年末には7.0%(高齢化社会)、2010年末には8.9%と、平均寿命が延びたことなどを背景にじわじわと上昇し、2021年末には14.2%(高齢社会)に達し、ついに2億人を超えることとなった。

そして、現役世代となる生産年齢人口(15~64歳)は2013年の10億1041万人をピークに減少し始め、2020年には9億6871万人となり、全人口に占める比率は68.6%まで低下した[図表-2]。しかも、生産年齢人口の減少傾向は今後も続きそうである。中国の人口ピラミッドを見ると[図表-3]、新たに生産年齢に達する若年層(0~14歳)の人口よりも、新たに生産年齢を卒業する中年層(50~64歳)の人口の方が多いからである。
[図表-2]中国の生産人口(15~64歳)/[図表-3]中国の人口ピラミッド(2019年)

3――建国100周年を迎える頃には現役2人で高齢者を支える社会に!

3――建国100周年を迎える頃には現役2人で高齢者を支える社会に!

そして、中華人民共和国が建国100周年を迎える21世紀半ばには、現役世代2人で高齢者1人を支える社会となりそうである。国連経済社会局(DESA)人口部(Population Division)が発表した「世界人口予測2019(World Population Prospects 2019)」のデータを元に計算したところ[図表-4]、現在(2020年)は現役世代5.9人で高齢者1人を支える状況にある。しかし、2050年には現役世代2.3人で高齢者1人を支える状況になると見込まれている。振り返って見れば日本でも、1990年には現役世代5.9人で高齢者1人を支える状況にあったが、現在は現役世代2.1人で高齢者1人を支える状況に変化している。したがって、日本が1990年から現在に至る30年間に経験した高齢化過程を、中国はこれから30年間で経験することになると見込まれる。

そこで中国政府は、社会全体で積極的に高齢化に対応する枠組みを作ることを目指して、「第14次5ヵ年計画期(2021~25年)における国家高齢者事業発展・高齢者介護サービス体系計画」を打ち出した[図表-5]。そこでは、老人ホームなど高齢者施設のベッド数を900万床以上にするなどの箱モノ整備に加えて、ソーシャルワーカーを2025年までに高齢者1000人当たり1人以上にするなどのサービス充実を、数値目標を掲げて取り組むこととしている。さらに「シルバー経済の発展に全力を挙げる」とした第7章では、高齢者の生活改善に資する健康機器や家事ロボットなどの研究開発を促進することやシルバー産業に特化した産業園区を国内に10ヵ所ほど設置する計画であることを表明するなど、産業政策に関する方針もセットとなっている。

高齢化に関しては中国より30年先輩の日本では、高齢者施設などの箱モノや介護ロボットなどの研究開発が進んでいるのに加えて、ソーシャルワーカーの育成だけでなく高齢者向けの健康・娯楽などのサービスもすでに充実してきているので、日本で成功したモノ、サービス、ビジネスモデルは中国でも役立つ可能性が高い。高齢者向けビジネスは、その国の社会保障制度を踏まえる必要があり、社会文化風土の違いもあるので一筋縄ではいかないものの、中国政府が重点をおく分野には補助金・税制優遇などの施策やサポートを得られることが多いだけに、日本企業にとってチャンスと言えるだろう。
[図表-4]現役世代何人で高齢者を支えるか(生産年齢人口÷高齢従属人口/[図表-5]第14次5ヵ年計画期(2021~25年)における国家高齢者事業発展・高齢者介護サービス体系計画
 
 

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三尾 幸吉郎

研究・専門分野

(2022年03月15日「保険・年金フォーカス」)

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