2022年02月25日

中国経済の見通し-党大会を控える2022年は5%台の安定成長

三尾 幸吉郎

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■要旨
 
  1. コロナショックの打撃を受けたあと、世界に先駆けてV字回復した中国経済だが、その後は停滞感を強めている。21年に入り中国政府がコロナ対策で緩んだ財政規律を引き締めるとインフラ投資が鈍化し、金融規律を引き締めると不動産業が成長の足かせとなった。そして経済成長率は21年4-6月期以降3四半期連続で減速することとなった(左下図)。
     
  2. COVID-19の状況を確認すると、20年1月~2月には武漢(湖北省)が発火点となって全土に拡散し中国経済は大混乱に陥ったが、その後は小振りな感染にも厳格な防疫管理で臨む“ゼロコロナ”政策が奏功し、人口当たりの新規感染者数が世界でも極めて少ない状況を維持している。そして21年1月26日以降は死亡者がゼロの状況が続いている。
     
  3. 需要別に見ると、消費は低位で冴えない動きだが、消費を取り巻く環境には明るい兆しがあり、北京冬季五輪(含むパラリンピック)が終われば厳格な防疫管理が緩和に向かい、“リベンジ消費”が本格化する局面を迎えると予想している。投資は不動産開発に底割れの恐れが残るものの、インフラ投資には底打ちする兆しがある。なお、輸出に多くは期待できない。
     
  4. 党大会を今秋に控える22年は5%台の安定成長を目指すことになるだろう。6%を上回るような高成長を目指せば住宅バブル再膨張などの副作用が懸念される一方、5%を割り込むような低成長では国民の成長期待に沿えないからだ。そして、23年以降も5%台の巡行速度(=大規模な政策支援なしで無理なく成長できる水準)を維持すると予想している(右下表)。
     
  5. メインシナリオを崩すリスク要因としては、(1)新たなCOVID-19の海外からの流入、(2)デレバレッジに伴う住宅バブル崩壊、(3)インフレによる経済成長の押し下げ、(4)共同富裕に伴う統制強化などが挙げられる。一方、ポジティブ・サプライズ要因としては、(1)ゼロコロナ政策の終了宣言とリベンジ消費の急拡大、(2)大幅利下げと住宅バブルの再膨張などが挙げられる。

 
中国の実質GDPと不動産業/経済予測表
■目次

1. 中国経済の概況
  1|経済成長の状況
  2|インフレの状況
  3|新型コロナウイルス感染症の状況
2. 需要別の現状と見通し
  1|個人消費の現状と見通し
  2|投資の現状と見通し
  3|輸出の現状と見通し
3. 中国経済の見通し
  1|メインシナリオ
  2|リスク要因
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三尾 幸吉郎

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