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- 硬貨の流通高が10年ぶりの前年割れに~預け入れ手数料導入前の駆け込みか?
2022年02月09日
1――硬貨流通高が約10年ぶりの前年割れに
また、コロナ禍で来客・売上の低迷が続いている飲食店や小売店において、日々の釣銭用としての硬貨需要が低迷していることも硬貨流通高の押し下げ要因になっていると考えられる(図表7)。
さらに、今年の1月中旬にゆうちょ銀行が硬貨の預け入れ手数料を導入したことも硬貨需要の押し下げに繋がったとみられる(図表8)。ここ数年、基準こそまちまちだが、大手銀行や地方銀行で同手数料の導入が広がっており、国内最大の店舗網と口座数を持つゆうちょ銀行でも今回導入されたことで、大方の金融機関で硬貨預け入れ時に手数料がかかる形になった。
ゆうちょ銀行の手数料導入は昨年7月に公表されたが、以降、今年1月の導入までの間、多くの報道がなされたこともあり、手元に硬貨を抱えていた家計や企業等の一部が導入前に「硬貨の駆け込み入金」を行った可能性がある。実際、同期間においては、報道やSNSなどで駆け込み入金に言及したものが目立った。
また、大方の金融機関で無料の硬貨預け入れが出来なくなることを受けて、貯金箱等で貯金をする習慣をやめた家計もあった可能性がある(後述)。
このような形で家計などに貯蔵される硬貨が減少することは、硬貨の流通高減少に繋がる。
さらに、今年の1月中旬にゆうちょ銀行が硬貨の預け入れ手数料を導入したことも硬貨需要の押し下げに繋がったとみられる(図表8)。ここ数年、基準こそまちまちだが、大手銀行や地方銀行で同手数料の導入が広がっており、国内最大の店舗網と口座数を持つゆうちょ銀行でも今回導入されたことで、大方の金融機関で硬貨預け入れ時に手数料がかかる形になった。
ゆうちょ銀行の手数料導入は昨年7月に公表されたが、以降、今年1月の導入までの間、多くの報道がなされたこともあり、手元に硬貨を抱えていた家計や企業等の一部が導入前に「硬貨の駆け込み入金」を行った可能性がある。実際、同期間においては、報道やSNSなどで駆け込み入金に言及したものが目立った。
また、大方の金融機関で無料の硬貨預け入れが出来なくなることを受けて、貯金箱等で貯金をする習慣をやめた家計もあった可能性がある(後述)。
このような形で家計などに貯蔵される硬貨が減少することは、硬貨の流通高減少に繋がる。
紙幣や硬貨といった現金はその特性として匿名性が極めて高く、「いつ、どこで、誰が、何に使ったのか」を捕捉することは難しい。さらに現金の動向を直接裏付けるデータも乏しいため、動向の要因についてはどうしても推測に頼らざるを得ない面がある。
筆者としては、昨年の硬貨流通高の伸び率低下については上記要因による複合的な影響があったと見ている。そして、特に年後半に伸び率が急速に低下したことを踏まえると、昨年7月に公表され、今年1月に導入されたゆうちょ銀行による硬貨預け入れ手数料導入を受けた家計等の動き(貯金箱貯金の取りやめ、駆け込み入金)が大きく影響した可能性が高いと推測している。
筆者としては、昨年の硬貨流通高の伸び率低下については上記要因による複合的な影響があったと見ている。そして、特に年後半に伸び率が急速に低下したことを踏まえると、昨年7月に公表され、今年1月に導入されたゆうちょ銀行による硬貨預け入れ手数料導入を受けた家計等の動き(貯金箱貯金の取りやめ、駆け込み入金)が大きく影響した可能性が高いと推測している。
2――今後の注目点・・・貯金箱離れ、キャッシュレス化が加速か
最後に、硬貨流通の今後について考えたい。
既述の通り、大方の金融機関で硬貨預け入れ時に手数料がかかる形になったことは、硬貨流通高に少なからず影響を与えるだろう。
まず、手数料がかかることになったことで人々が硬貨の預け入れを控えるようになり、家庭等に硬貨がより滞留するようになるという可能性だ。この場合は、硬貨流通高が押し上げられることになる。
逆に硬貨流通高の押し下げに繋がる可能性もある。従来、硬貨流通高は500円玉貯金など旺盛な貯金箱貯金需要によって比較的高い伸びを続けてきた。しかし、今後は貯金箱で貯めた大量の硬貨を預け入れようとすると手数料が発生しかねない。だからと言って、貯めた後の大量の硬貨を店舗などでの支払いに使うのは法的2・物理的・心理的なハードルがある。つまり、貯金箱で貯金すると、後々大量の硬貨の扱いに困ることになりかねないため、貯金箱で貯金するという行為自体が廃れていく可能性がある。
また、積極的に貯金箱貯金をしていない人でも、日々受け取ったお釣りを家庭等に置き続けると、「意図せざる硬貨貯金」を抱えることになり、同様に扱いに困ることになりかねない。従って、今後は硬貨を手元に貯めすぎないように「家庭等に滞留する硬貨を優先的に日々の小まめな支払いに充てる」という動きや、「そもそも硬貨の受け取りを発生させないようにキャシュレス決済にシフトする」動きが活発化する可能性がある。後者の場合はキャッシュレス化の動きを促進させることになる。
硬貨預け入れ手数料の導入は、硬貨という存在に対する人々の見方を変化させ、貯金や決済(キャッシュレス化など)の在り方をも大きく変化させる可能性があるだけに、そうした変化を汲み取るべく、硬貨流通高の今後の動きに注目している。
2 硬貨の使用については、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第7条で(各種類)「額面価格の20倍まで」を限度として通用すると規定されている。従って、各種類20枚を超える硬貨が使用された場合には、店側は受け取りを拒否することができる。
既述の通り、大方の金融機関で硬貨預け入れ時に手数料がかかる形になったことは、硬貨流通高に少なからず影響を与えるだろう。
まず、手数料がかかることになったことで人々が硬貨の預け入れを控えるようになり、家庭等に硬貨がより滞留するようになるという可能性だ。この場合は、硬貨流通高が押し上げられることになる。
逆に硬貨流通高の押し下げに繋がる可能性もある。従来、硬貨流通高は500円玉貯金など旺盛な貯金箱貯金需要によって比較的高い伸びを続けてきた。しかし、今後は貯金箱で貯めた大量の硬貨を預け入れようとすると手数料が発生しかねない。だからと言って、貯めた後の大量の硬貨を店舗などでの支払いに使うのは法的2・物理的・心理的なハードルがある。つまり、貯金箱で貯金すると、後々大量の硬貨の扱いに困ることになりかねないため、貯金箱で貯金するという行為自体が廃れていく可能性がある。
また、積極的に貯金箱貯金をしていない人でも、日々受け取ったお釣りを家庭等に置き続けると、「意図せざる硬貨貯金」を抱えることになり、同様に扱いに困ることになりかねない。従って、今後は硬貨を手元に貯めすぎないように「家庭等に滞留する硬貨を優先的に日々の小まめな支払いに充てる」という動きや、「そもそも硬貨の受け取りを発生させないようにキャシュレス決済にシフトする」動きが活発化する可能性がある。後者の場合はキャッシュレス化の動きを促進させることになる。
硬貨預け入れ手数料の導入は、硬貨という存在に対する人々の見方を変化させ、貯金や決済(キャッシュレス化など)の在り方をも大きく変化させる可能性があるだけに、そうした変化を汲み取るべく、硬貨流通高の今後の動きに注目している。
2 硬貨の使用については、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第7条で(各種類)「額面価格の20倍まで」を限度として通用すると規定されている。従って、各種類20枚を超える硬貨が使用された場合には、店側は受け取りを拒否することができる。
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
(2022年02月09日「基礎研レター」)
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