2021年11月30日

日本年金機構をめぐる不祥事のほか、積立金に関する前財相の発言も話題に-「年金」を含むツイートに含まれるリンクの基礎分析(2021年10月)

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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3|リンク先Webサイトの傾向や特徴:引用リツイートやYahoo!ニュースに加え、Webサイトの宣伝も多数
(1) リンク先Webサイト(ドメイン)ごとの傾向や特徴:少数の投稿者による参照が多いサイトあり
次に、ツイートに含まれるリンクが参照しているWebサイト(ドメイン)ごとの傾向や特徴を確認する。前節の分析でツイートに含まれるリンクの数は0個もしくは1個で約100%を占めたため、以下ではツイートに含まれるリンクのうち1個目だけに注目する。

リンク先のWebサイト(ドメイン)を名寄せして(データとしてuniqueなものを)集計したところ、分析対象のツイートで参照されているWebサイトは約2200か所あった。このうち参照しているツイート数が多い上位20件(上位約1%)を列挙したのが図表5である。

前節で述べたとおり、リンクを含んでいないツイートが約12万件(分析対象ツイートの約75%)あり、リンク先のWebサイトとして最も多かったのが「twitter.com」で、ツイート数は約1万件(分析対象ツイートの約6%、リンクを含む分析対象ツイートの約25%)である。本稿の分析対象には単純なリツイート(投稿者自身の発言を含まないもの)を含めていないため、本稿の分析対象の中でリンク先が「twitter.com」となっているのは、いわゆる引用リツイート(投稿者自身の発言を含むもの)である。投稿者が「twitter.com」のサイトやアプリで表示される情報を一種のニュースととらえ、それに対する自身のコメントを発信しているものと思われる。

次に多かったのが「news.yahoo.co.jp(Yahoo!ニュース)」で、このWebサイトをリンク先としているツイートは約6500件(分析対象ツイートの約4%、リンクを含む分析対象ツイートの約16%)であった。このサイトではニュース記事の脇にツイートを投稿するためのリンク(アイコン)が設置されているため、これを利用して、投稿者が印象に残った記事の拡散や、記事に対する自身のコメントの発信を行っているものと思われる。

以上の「リンクなし」「twitter.com」「news.yahoo.co.jp(Yahoo!ニュース)」までで、分析対象ツイートの約85%、リンクを含む分析対象ツイートの約40%を占める。
図表5 リンク先Webサイトごとの傾向や特徴 (ツイート数上位20件)
リンク先のWebサイトとして3番目に多かったWebサイトでは、このWebサイトをリンク先としているツイートが約2200件あるものの、この約2200件のツイートはわずか4名の投稿者から発信されたものであり、投稿者1人当たりの該当ツイート数は1か月間で約550件に及んだ。このようなツイートは、リンク先のWebサイトを宣伝・周知する目的で投稿されている可能性が高く、ツイート内容の分析を通じて年金に対する人々の態度を知るという筆者の最終的な研究目的にそぐわない可能性がある。

そこで、ツイート数が20位以下のWebサイトも含めてリンク先のWebサイトごとに集計したところ、そのWebサイトをリンク先としているツイートの投稿者が10人未満、かつ当該投稿者1人当たりのツイート数が31件(1日当たり1件)以上のリンク先Webサイトは、Webサイト数としては14件(リンク先Webサイト総数2165件の0.6%)あり、ツイート数としては3895件(リンクありツイート総数42,004件の9%)に及んだ一方、投稿者数は20人(リンクありツイートの投稿者数23,542人の0.1%)にとどまった。さらに対象を広げると、投稿者が10人未満、かつ当該投稿者1人当たりのツイート数が10件以上のリンク先Webサイトは、Webサイト数としては82件(リンク先Webサイト総数の4%)あり、ツイート数としては5263件(リンクありツイート総数の9%)に及んだ一方、投稿者数は103人(リンクありツイートの投稿者数の0.4%)にとどまった。

このようなリンク先のWebサイトを宣伝・周知する目的で投稿されている可能性が高いツイートは、投稿者数が少ない一方でツイート数としては一定の影響力を持っているため、ツイート内容を分析する際はこれらのツイートの取り扱い方(除外するかや区分するか)を検討する必要があろう。
図表6 リンク先Webサイトごとの投稿者数と1人当たりのツイート数の傾向や特徴
また、図表5のトップページのタイトルを見ると、報道機関と思われるWebサイトが散見される。前述したYahoo!ニュースと同様に、報道機関のWebサイトでもニュース記事の脇にツイートを投稿するためのリンク(アイコン)が設置されている傾向があるため、投稿者がこれを利用して印象に残った記事の拡散や記事に対する自身のコメントの発信を行っているものと思われる。

しかし、ツイート数が20位以下のWebサイトにも地方紙のWebサイトなどが多数含まれており、約2200か所あるリンク先Webサイトが報道機関か否かを個別に確認することは困難である。そこで、前述のYahoo!ニュースも含めてトップページのタイトルに「新聞」「ニュース」「News」のいずれかを含むWebサイトを機械的に抽出して集計したところ、Webサイト数としては204件(リンク先Webサイト総数2165件の9%)あり、ツイート数としては11,802件(リンクありツイート総数42,004件の28%)、投稿者数は8689人(リンクありツイートの投稿者数23,542人の37%)を占めた2
 
2 この区分方法では、報道機関のうち一部の放送局や通信社あるいは報道機関の記事を掲載するサイトなどを含まず、逆に「○○新聞」などのタイトルを付けた個人のブログなどを含めてしまう懸念もあるが、客観的に処理するために機械的に割り切った。さらなる精緻化は今後の課題としたい。
(2) 投稿日とリンク先Webサイト区分ごとの傾向や特徴:Webサイトの宣伝はニュースに反応せず
この分析に基づいてリンク先Webサイトを図表7のように区分し、投稿日との関係を確認したのが図表8である。
図表7 リンク先Webサイトの区分
図表8の左上段のツイート数を見ると、まず、「a:リンクなし」と他の区分で推移の傾向が異なることが分かる。年金振込通知書の誤送付が話題になった10月6~7日辺りと、年金積立金の運用に関する前財務大臣の発言が話題になった10月24日辺りと、日本年金機構で活用されていない市町村向け貸出用PCが多数あることが話題になったには10月26日辺りには、ツイート数の大半を占める「a:リンクなし」のほか、「c:新聞等あり」「d:新聞等なし」「b:Twitter」も他の日より多い。これに対して、年金の支給日である10月15日には「a:リンクなし」が大幅な増加になっているものの、「c:新聞等あり」などでは10月6~7日辺りや10月26日辺りほどの増加は見られない。これは、10月6~7日辺りや10月26日辺りは非日常的なニュースであるため大幅に増加したが、10月15日の年金支給日は定例的な出来事だったためあまり変化しなかったと考えられる。なお、「a:リンクなし」が急増している要因は、ツイート内容の分析で明らかにする必要がある。
図表8 投稿日×リンク先Webサイト区分ごとの傾向や特徴
次に、図表8の右上段のツイート数(対数軸)を見ると、(1)「c:新聞等あり」と「d:新聞等なし」「b:Twitter」の推移の傾向が異なる、(2)「d:新聞等なし」と「b:Twitter」の推移の傾向が似ている、(3) 「e:少数者多投稿」は年金に関するニュースとは関係なく常に一定程度で推移している、ということが分かる。

(1)については、年金に関するニュースがある10月6~7日辺りや10月26日辺りには「c:新聞等あり」が「d:新聞等なし」や「b:Twitter」を上回っている一方で、他の期間には「c:新聞等あり」が「d:新聞等なし」や「b:Twitter」を下回っている。このことから、「c:新聞等あり」は年金に関するニュースに反応しやすいと言える。

他方で(2)については、「d:新聞等なし」には「c:新聞等あり」に含めきれていない報道機関やニュース掲載サイトが含まれ、「b:Twitter」にはニュースに関するツイートが投稿されるために年金に関するニュースがある時期にある程度増え、それと同時に、両者にはニュース以外の情報も掲載されるために年金に関するニュースがない時期にもあまり減少しないと考えられる3

(3)については、前節で確認したとおり「e:少数者多投稿」はリンク先Webサイトの宣伝や周知である可能性が高いため、年金に関するニュースとは関係なく常に一定程度で推移していると考えられる。

図表8左下段の いいね数と右下段のリツイート数を見ると、両者に特徴的な10月11日の急増は「a:リンクなし」の急増で起きている。他方で10月26日辺りの増加は、「c:新聞等あり」の増加が一因となった可能性がある。
 
3「c:新聞等あり」に含む報道機関や報道機関の記事を掲載するサイトを精緻化すれば、「d:新聞等なし」が年金に関するニュースに対してより鈍感になる可能性もあるが、「a:リンクなし」が年金に関するニュースにある程度反応していることを踏まえれば、それほど鈍感にならない可能性も考えられる。今後の課題としたい。
4|リンク先のWebページの傾向や特徴:報道機関記事の参照が多く、年金を含むとニュースに連動
(1) リンク先Webページごとの傾向や特徴:報道機関記事の参照が多く、話題によっては発信元に偏り
リンク先のWebページ(URL)を名寄せして(データとしてuniqueなものを)集計したところ、分析対象のツイートで参照されているWebページ(URL)は約19,000件、このうちtwitter.com以外のWebページは約12,000件あった。このうち参照しているツイート数が多い上位20件を列挙したのが図表9である。

前節で区分したWebサイト区分の列を見ると、上位20件のうち12件が「c:新聞等あり」で、1件の「d:新聞等なし」も放送局のサイトであるため、ツイートで参照されている件数が多いWebページは報道機関や報道機関の記事を掲載するWebサイトが大半を占めていると言える。他方で、上位20件のうち6件が「e:少数者多投稿」となっており、リンク先のWebサイトを宣伝・周知する目的で投稿されている可能性が高いツイートが上位に食い込んでいる。

リンク先ページのタイトルを見ると、(1)ほぼ同じタイトルが複数回登場している、(2)話題によっては記事の発信元に偏りがある、(3)同じ出来事に対する記事でも用いる単語が違う、(4)「e:少数者多投稿」のWebサイトのページタイトルには年金と直接の関係がないものも含まれる、(5)「c:新聞等あり」の1人当たりのツイート数はほぼ1.0件、という傾向が見られる。
図表9 リンク先Webページ(URL)ごとの傾向や特徴 (ツイート数上位20件)
(1)は、ほぼ同一の記事について、報道機関の記事を掲載するWebサイトの記事を参照しているツイートと、報道機関のWebサイトの記事を参照しているツイートが存在するためである。また、上位20件には入っていないが、リンクURLの末尾に「?utm_source=」などのURLパラメータがつくことで、Webページとしては同一であるものの別のURLとして集計しているものも存在する4

(2)は、年金積立金の運用に関する記事は、掲載先が違うものの1つの報道機関による記事が上位20件に入っている一方で、振込通知書の誤送付に関する記事は複数の報道機関による記事が上位20件に入っていることを指している。このことから、普段は特定の報道機関だけが注目されている訳ではないものの、記事のタイトルや内容によっては特定の報道機関だけが注目されやすい可能性を読み取れる。

(3)は、振込通知書の誤送付に関する記事には「年金振込通知書」と書く記事と「年金通知書」と書く記事が混在していることを指している。テキスト分析の際には、同一の物に対して複数の表現が存在することに留意する必要がある。

(4)は、端的に言えばリンク先のWebページのタイトルに「年金」が入っていないものが存在することを指している。「高齢者」や「終活」なども年金と関連する単語ではあるが、機械的に割り切って、Webページのタイトルに「年金」が入っているか否かとWebサイトの区分との関係を、見たのが図表10である。全体では約半数が「年金」を含んでいるが、「c:新聞等あり」に区分される報道機関等のWebサイトのページが参照される場合には、その7割強でWebページのタイトルに「年金」が含まれていた。他方で「e:少数者多投稿」に区分されるWebサイトのページが参照される場合には、その7割強でWebページのタイトルに「年金」が含まれなかった。なお、「d:新聞等なし」に区分されるWebサイトのページが参照される場合には、「年金」を含む場合と含まない場合とが半数ずつであった。

(5)は、あるページを参照してツイートを投稿したユーザーは、そのページを再度参照してツイートを投稿しない傾向が強いことを示している。これは、報道機関等のWebサイトに掲載されている記事についてコメントを発信した投稿者は、その記事に対する別のコメントの発信や同じコメントの拡散を行っていないことを示している。このようなツイートを分析することで、記事に対する投稿者の印象を把握できる可能性が示唆される。
図表10 リンク先Webサイトの区分とWebページのタイトルに「年金」を含むか否かの関係
 
4 URLパラメータを詳細に分析することでどのようにしてツイートが作成されたかを確認できる可能性はあるが、WebサイトによってURLパラメータの仕様が異なるため本稿では分析していない。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

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【日本年金機構をめぐる不祥事のほか、積立金に関する前財相の発言も話題に-「年金」を含むツイートに含まれるリンクの基礎分析(2021年10月)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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