2021年11月30日

日本年金機構をめぐる不祥事のほか、積立金に関する前財相の発言も話題に-「年金」を含むツイートに含まれるリンクの基礎分析(2021年10月)

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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1 ―― 本稿の問題意識と分析対象:「年金」を含むツイートは、何を契機に発信されているか?

ツイートとは、Twitterに投稿されるメッセージ(発言)である。文字数が、基本的に全角で140文字(半角で280文字)までと制限されており、「つぶやき」とも呼ばれる。近年はマスコミの報道や国会審議などでも取り上げられているが、ツイートには、熟考の上で投稿されたもの、反射的に投稿されたもの、宣伝、広報、プログラムによって投稿されたものなど、様々なものが混在している。

本稿では、前稿1で行った2021年9月中下旬に発信された「年金」を含むツイートの基礎的な投稿の状況やツイートに対する関心の動向分析に続き、テキストマイニングの手法を使ったツイート内容の分析に先立ってツイートに含まれるリンクを分析する。分析の対象は、2021年10月に発信された筆者の研究領域の1つである「年金」を含むツイートである(図表1)。後日実施するツイート内容の分析が最終目的であるため、分析対象とするツイートに単純なリツイート(投稿者自身の発言を含まないもの)と同日の他の対象ツイートと冒頭50字が同一なものを含んでいない。言い換えれば、分析対象とするツイートは投稿者自身の何らかの態度が示されている発言、ととらえることも出来よう。
図表1 本稿が分析対象としたツイート
以下では、発信傾向の指標として、ツイート数(発言数)、投稿者数、 いいね数、リツイート数を確認する。ツイート数は、前述のとおり単純なリツイート等を含んでいない点に注意が必要である。投稿者数は、分析対象としたツイートのユーザー名を日付などの集計区分ごとに名寄せした件数であり、同一の集計区分において同一のユーザー名で複数のツイートを投稿していても1名と数えている。 いいね数とリツイート数は、分析対象としたツイートの いいね数とリツイート数を集計区分ごとに合計した件数である。 いいね数とリツイート数は時間の経過とともに変化するが、データ取得時点の値を集計している。ツイートによって投稿時点からデータ取得時点までの間隔が異なるため、 いいね数とリツイート数はツイート間で厳密には比較できない。ツイートへの関心を大雑把に示す指標として参照している。

2 ―― 前稿で発見した傾向の検証

2 ―― 前稿で発見した傾向の検証

1|本章の問題意識:前月に見られた傾向は、今月にも当てはまるか
前稿では、2021年9月中下旬に発信された「年金」を含むツイートに対する分析から、(1)年金に関係するニュースがあるとツイート数だけでなく投稿者数も増える、(2) いいね数とリツイート数は年金に関係するニュースとは必ずしも関係がない、(3) いいね数やリツイート数が多い少数のツイートが いいね数全体とリツイート数全体の大部分を占める、などの傾向を発見した。そこで、これらの傾向が他の時期にも当てはまるかを確認するために、2021年10月の投稿に対しても前稿と同じ枠組みの分析を行う。
2|投稿日時ごとの傾向や特徴:前月と同様にニュースへの反応は見られるが、深夜の反応は低調
前述した(1)年金に関係するニュースがあるとツイート数だけでなく投稿者数も増えるかと、(2)いいね数とリツイート数は年金に関係するニュースとは必ずしも関係がないかを確認するために、前稿と同様に投稿日と投稿時間帯(0時を起点とする6時間単位)の組み合わせごとの傾向や特徴を見たのが図表2である。

まず、ツイート数と投稿者数(図表2の左上段と右上段)は、10月6~7日辺りと10月15日と10月26日辺りに多くなっていた。10月6~7日辺りには年金振込通知書の誤送付、10月15日は年金の支給日であること、10月24日辺りには年金積立金の運用に関する前財務大臣の街頭演説での発言、10月26日辺りには日本年金機構で活用されていない市町村向け貸出用PCが多数あること、に関するニュースに影響されてツイート数と投稿者数が多くなった可能性がある。このように、(1)年金に関係するニュースがあるとツイート数だけでなく投稿者数も増える傾向は、前稿で分析した9月中下旬に投稿されたツイートに関する分析と同じであった。
図表2 投稿日×時間帯ごとの傾向や特徴
ただし、前稿で分析した9月中下旬に投稿されたツイートに関しては、9月10~11日に発生した厚生労働大臣が定例記者会見で年金制度改正についての発言に関するツイート数と投稿者数の増加において、9月10日の18~23時台から9月11日の18~23時台にかけて00~05時台も含めてツイート数と投稿者数が多かった(図表2の左下段と右下段)。これに対して、本稿で分析対象としているツイートに関しては、10月7日の00~05時台において、他の日の00~05時台よりも多い傾向が見られるものの、9月11日の00~05時台ほどの多さは見られなかった。この背景には、2つの問題に対する人々の関心の強さの違いのほか、9月11日は土曜で10月7日は木曜という曜日の違いが影響した可能性も考えられる。

次に、図表2の左中段と右中段にある いいね数とリツイート数を見ると、ツイート数と投稿者数が多かった時間帯に加えて、10月11日の06~11時台にも多くなっている。このように、(2)いいね数とリツイート数は年金に関係するニュースとは必ずしも関係していない傾向は、前稿で分析した9月中下旬に投稿されたツイートに関する分析と同じであった。なお、 いいね数とリツイート数は、 いいねの付与やリツイートを行った日時ではなく、 いいねの付与やリツイートを行った対象のツイートの投稿日時で集計している点に、注意して見る必要がある。
3|投稿日と いいね数・リツイート数区分ごとの傾向や特徴:ごく少数のツイートが全数を左右
前述した(3) いいね数やリツイート数が多い少数のツイートが いいね数全体とリツイート数全体の大部分を占めるかを確認するために、前稿と同様に投稿日と各ツイートの いいね数やリツイート数の区分を組み合わせて傾向や特徴を見たのが、図表3である。

図表3の左上段と右上段を見ると、前述した、ニュースと関連せずに いいね数やリツイート数が多い10月11日を始めとして、それぞれの上位0.1%以上に該当するツイートの いいね数やリツイート数が いいね数やリツイート数の大半を占めている。図表3の左中段と右中段(ともに対数軸)を見ると、それぞれの上位0.1%以上に該当するツイートは各日とも概ね数件(10の0乗=1件と10の1乗=10件の間)であり、 いいね数やリツイート数が多い10月11日に上位0.1%以上に該当するツイートが多いわけでもない。これらの状況から、(3) いいね数やリツイート数が多い少数のツイートが いいね数全体とリツイート数全体の大部分を占めるという傾向は、前稿で分析した9月中下旬に投稿されたツイートに関する分析と同じであったと言える。

なお、各ツイートの いいね数の区分は、 いいね数の分布の上位0.1%以上(各ツイートの いいね数が554件以上)、上位1%以上(各ツイートの いいね数が65件以上)、上位10%以上(各ツイートの いいね数が6件以上)、下位90%未満(各ツイートの いいね数が6件未満)の4区分である。また、各ツイートに対するリツイート数の区分は、分布の上位0.1%以上(各ツイートに対するリツイート数が118件以上)、上位1%以上(各ツイートに対するリツイート数が14件以上)、上位10%以上(各ツイートに対するリツイート数が1件以上)、下位90%未満(各ツイートに対するリツイート数が0件)の4区分である。

前稿で分析した9月中下旬に投稿されたツイートと比べると、各区分の境界となる件数はすべて減少していた。この傾向は、図表3の左上段と右上段に示した10月の いいね数やリツイート数の縦軸目盛が、図表3の左下段と右下段に示した9月中下旬の いいね数やリツイート数の縦軸目盛の概ね半分の水準になっていることからも伺える。
図表3 投稿日× いいね数とリツイート数の区分(それぞれの上位パーセンタイル)ごとの傾向や特徴

3 ―― ツイートに含まれるリンクの傾向や特徴

3 ―― ツイートに含まれるリンクの傾向や特徴

1|本章の問題意識:ニュースがある日にツイートが多いのは、記事ページから投稿しているためか?
前章で確認したとおり、9月中下旬と10月の双方で、年金に関係するニュースがあるとツイート数だけでなく投稿者数も増える傾向があった。この要因に関して、前稿では「Webで公開されるニュース記事の脇にツイートを投稿するためのボタンが配置されていることが多いため、関心を持ったニュースを拡散するツイートや、記事を参照・引用した上で自分の意見を述べるツイートが散見される」と記載したが、具体的な確認には至らなかった。

そこで本章では、Web上のニュース記事がツイートを投稿する契機になっているかを確認するために、ツイートに含まれるリンク(Webページの参照)の傾向や特徴を分析する。ツイートに含まれるリンクのURLがWeb上のニュース記事のものであれば、Web上のニュース記事がツイートを投稿する契機になっている可能性が高いと言えよう。
2|ツイートに含まれるリンク数の傾向や特徴:ツイートの75%はリンクなし、25%はリンク1個
本節では、1つのツイートに含まれるリンクの数ごとに傾向や特徴を確認する。

まず、1つのツイートに含まれるリンクの数ごとにツイート数を集計したのが、図表4の上段である。本稿の分析対象である約16万件のツイートのうち、リンクを含んでいないもの(0個)が約75%(約12万件)、リンクが1個だけのツイートが約25%(約41,000件)であり、これらでツイートのほとんどを占めていた。少数ではあるが、リンクが複数あるものは合計で約2,700件あり、リンクの数は最大でも5個であった。リンクの数が2個、3個、4個と増えて行くのに従って該当するツイートの数は少なくなっているが、リンクを5個含んでいるツイートはリンクを4個含んでいるツイートよりも多かった。

リンクの数ごとに投稿者数を集計したのが、図表4の中段である。リンク数が0~4個についてはツイート数と同じ傾向だが、リンクを5個含んでいるツイートの投稿者数は、ツイート数の傾向とは違い、リンクを4個含んでいるツイートの投稿者数よりも少なかった。

リンクの数ごとに いいね数とリツイート数を集計すると、リンク数が0~3個についてはツイート数と同じ傾向だが、リンク数が4~5個については いいね数とリツイート数に大きな差がなく、ツイート数の傾向と投稿者数の傾向の中間的な傾向が見られた。
図表4 1つのツイートに含まれるリンクの数ごとの傾向や特徴
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

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