2021年11月12日

マレーシア経済:21年7-9月期の成長率は前年同期比▲4.5%~感染再拡大に伴う都市封鎖の影響を受けて再びマイナス成長に転落

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2021年7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比4.5%減1(前期:同16.1%増)と減少に転じ、市場予想2(同2.6%減)を下回る結果となった(図表1)。

7-9月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に内需の悪化が成長率低下に繋がったことが分かる。

GDPの6割弱を占める民間消費は前年同期比4.2%減(前期:同11.7%増)と大きく低下して2四半期ぶりに減少した。

また政府消費は前年同期比8.0%増(前期:同9.0%増)と高成長が続いた。

総固定資本形成は同10.8%減(前期:同16.5%増)と急低下した。設備投資が同10.2%増(前期:同15.1%増)が堅調だったものの、建設投資が同26.1%減(前期:同20.2%増)と落ち込んだ。なお、投資を公共部門と民間部門に分けて見ると、全体の4分の3を占める民間部門が同4.8%減(前期:同17.4%増)と減少し、公共部門が同28.9%減(前期:同12.0%増)となり、それぞれ減少した。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲3.1%ポイント(前期:+1.8%ポイント)と悪化した。まず財・サービス輸出は同5.1%増(前期:同37.4%増)と底堅い伸びが続いた。輸出の内訳を見ると、財貨輸出(同5.0%増)とサービス輸出(同5.8%増)がそれぞれ増加した。また財・サービス輸入は同11.7%増と、前期の同37.6%増に続いて二桁増となった。
(図表1)マレーシアの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)マレーシアの実質GDP成長率(供給側)
供給側を見ると、第二次産業と第三次産業の悪化が成長率低下に繋がったことが分かる(図表2)。

まずGDPの6割弱を占める第三次産は前年同期比4.9%減(前期:同13.5%増)と大きく低下して2期ぶりのマイナス成長となった。金融・保険(同4.4%増)や情報・通信(同6.2%増)、政府サービス(同5.2%増)は増加傾向を続けたが、宿泊・飲食業(同16.5%減)や運輸・倉庫(同12.0%減)、卸売・小売(同11.7%減)、不動産・ビジネスサービス(同16.2%減)がそれぞれ大幅に減少した。

第二次産業は前年同期比3.3%減(前期:同17.8%増)と減少した。まず製造業は同0.8%減(前期:同26.6%増)と小幅に減少した。内訳を見ると、主力の電気電子機器(同8.2%増)やゴム製品(同7.6%増)、化学製品(同9.3%増)、食品加工(同9.1%増)、石油製品(同19.2%増)など増加した業種もある一方、輸送用機器(同30.6%減)や動植物性油脂(同12.1%減)、金属製品(同8.8%減)など減少した業種も多かった。また建設業は同20.6%減(前期:同40.3%増)、鉱業は同3.6%減(前期:同13.9%増)となり、それぞれ減少した。

第一次産業は同1.9%減(前期:同1.5%減)と低迷した。畜産(同3.3%増)やその他農業(同6.0%増)、漁業・養殖業(同0.2%増)、天然ゴム(同0.3%増)は増加したが、主要産品であるパーム油(同11.1%減)の落ち込みが響いた。
 
1 2021年11月12日、マレーシア中央銀行が2021年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

7-9月期GDPの評価と先行きのポイント

マレーシア経済は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に景気が悪化、国内外で実施された活動制限措置の影響により2020年の実質GDP成長率が前年比▲5.6%と減少した。マレーシアは比較的早期にウイルスの封じ込めに成功して活動制限措置を段階的に緩和したが、経済活動の回復が遅れてマイナス成長が続き、今年4-6月期には前年同期の落ち込みからの反動増(ベース効果)によりプラス成長に回復した。そして今回発表された7-9月期の成長率は前年同期比▲4.5%と再び減少することとなった。

7-9月期の成長率の急低下は感染再拡大に伴う都市封鎖により国内の経済活動が冷え込んだことが大きい。マレーシアでは今年4月に感染第3波が到来(図表3)、政府は6月に全国規模の都市封鎖を実施して生活に不可欠な業種以外の社会・経済活動を禁止したものの、その後も変異株の蔓延や規制疲れなどによって感染拡大が続き、8月中旬に感染者数が1日2万人台に達した。しかし、7~8月にかけて新型コロナウイルスワクチンが急速に普及すると(直近の完全接種率は人口の4分の3以上)、9月に入って感染状況と医療体制が改善に転じた。政府はクアラルンプール首都圏をコロナ禍からの復興の道のりを4段階で示した「国家回復計画」の第2期に移行し、都市封鎖を約3カ月ぶりに解除した。このように、7-9月期の大半が都市封鎖実施期間となったため、小売・娯楽施設への人流はコロナ前と比較して7-9月平均で約5割減(前年同期の減少幅は約2割減)となり(図表4)、民間消費は前年同期比▲4.2%と再びマイナス成長に転落した。また企業の操業にかかわる措置が導入されたことによって生産や投資活動に悪影響が広がり、総固定資本形成(同▲10.8%)も減少、財・サービス輸出(同+5.1%)は増勢が鈍化した。
(図表3)マレーシアの新規感染者数の推移/(図表4)小売・娯楽施設への移動量
マレーシア中央銀行は8月に都市封鎖の影響を考慮して、2021年の成長率予測を従来の+6.0%~7.5%から+3.0%~4.0%に大きく下方修正することとなったが、今後マレーシア経済は勢いを増すとみられる。足元においても感染状況は改善しており、首都圏は10月から国家回復計画の第3期へ、10月中旬には第4期へ移行するなど活動制限措置は順調に緩和されている。またワクチンの更なる普及や2022年度政府予算における積極的な財政支出により経済活動の正常化が進みそうだ。外需の回復や国際商品市況の上昇も資源輸出国であるマレーシア経済にとってプラスに働くだろう。政府は2022年の成長率が+5.5%~6.5%になるとし、経済回復が本格化すると予想している。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2021年11月12日「経済・金融フラッシュ」)

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