2021年11月09日

大臣会見でツイート数と投稿者数が急増もリツイート数はごく少数のツイートが左右-「年金」を含むツイートの基礎的な動向分析(2021年9月中下旬)

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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1 ―― 本稿の問題意識と分析対象:「年金」を含むツイートは、どのように投稿されているか?

ツイートとは、Twitterに投稿されるメッセージ(発言)である。文字数が、基本的に全角で140文字(半角で280文字)までと制限されており、「つぶやき」とも呼ばれる。近年はマスコミの報道や国会審議などでも取り上げられているが、ツイートには、熟考の上で投稿されたもの、反射的に投稿されたもの、宣伝、広報、プログラムによって投稿されたものなど、様々なものが混在している。

そこで本稿では、テキストマイニングの手法を使ったツイート内容の分析に先立ち、ツイートの基礎的な投稿の状況やツイートに対する関心の動向を分析する。分析の対象とするツイートは、筆者の研究領域の1つである「年金」を含むツイートである(図表1)。後日実施するツイート内容の分析が最終目的であるため、分析対象とするツイートには単純なリツイート(投稿者自身の発言を含まないもの)と同日の他の対象ツイートと冒頭50字が同一であるものを含んでいない。言い換えれば、分析対象とするツイートは投稿者自身の何らかの態度が示されている発言、ととらえることも出来よう。
図表1 本稿が分析対象としたツイート
以下では、投稿状況の指標としてツイート数(投稿数)と投稿者数、関心動向の指標として いいね数とリツイート数を確認する。ツイート数は、前述の通り単純なリツイート等を含んでいない点に注意が必要である。投稿者数は、分析対象としたツイートのユーザー名を日付などの集計区分ごとに名寄せした件数であり、同一の集計区分において同一のユーザー名で複数のツイートを投稿していても1名と数えている。 いいね数とリツイート数は、分析対象としたツイートの いいね数とリツイート数を集計区分ごとに合計した件数である。 いいね数とリツイート数は時間の経過とともに変化するが、データ取得時点の値を集計している。なお、ツイートによって投稿からデータ取得までの間隔が異なるため、 いいね数とリツイート数はツイート間で厳密には比較できない。ツイートへの関心を大雑把に示す指標として参照している。また、9月9日のツイートに対する いいね数とリツイート数は取得していない。

2 ―― 投稿日時ごとの傾向や特徴

2 ―― 投稿日時ごとの傾向や特徴

1|本章の問題意識: 投稿日を中心に投稿の状況や関心の動向を集計し、ニュースとの関係を概観
「炎上」とも呼ばれるように、多くの関心を集めるネット上の書き込みが時として登場する。関心を集めるのは日常的な出来事である可能性もあるが、何らかのニュースである場合も考えられる。近年は、Webで公開されるニュース記事の脇にツイートを投稿するためのボタンが配置されていることが多いため、関心を持ったニュースを拡散するツイートや、記事を参照・引用した上で自分の意見を述べるツイートが散見される。

そこで本章では、ツイートの投稿日を中心に投稿の状況や関心の動向を集計し、ニュースとの関係を概観する。
2|投稿日ごとの傾向や特徴:年金に関するニュースがある日は、ツイート数や投稿者数などが多い
投稿日ごとの傾向や特徴を確認したのが、図表2である。

指標によって多少の違いはあるものの、ツイート数、投稿者数、 いいね数、リツイート数のいずれも、9月11日辺りと9月19~22日辺りに多くなっている。前者は9月10日に厚生労働大臣が定例記者会見で年金制度改正について発言したこと、後者は自民党総裁選挙において年金制度の大幅な見直しが話題になったこと、に関するニュースに関連して、多くなっていると考えられる(ツイート内容の分析は後日実施予定)。

 いいね数とリツイート数は前述のとおり大雑把な指標ではあるが、ツイート数や投稿者数とは異なり、9月12日、19日、25日にも多くなっている(図表2の左下段と右下段)。特に9月25日は、ツイート数や投稿者数が前後の日とほぼ同じであるにもかかわらず いいね数とリツイート数は多くなっており、ニュースの影響ではない可能性も考えられる。
図表2 投稿日ごとの傾向や特徴
3|投稿時刻ごとの傾向や特徴:通勤通学中や昼休みや夜間に、ツイート数や投稿者数などが多い
投稿時刻(時単位で切り捨てた1時間単位)ごとの傾向や特徴を確認したのが、図表3である。

ツイート数と投稿者数を見ると(図表3の左上段と右上段)、0時台に比較的多いものの1時台から6時台までは低調で、8時台以降に高めの水準で推移する。8時台以降の中では、8時台と12時台と18時台で前後の時刻よりも多く、通勤通学中や昼休みの合間に投稿する傾向が読み取れる。その後は、22時台まで増加したあと23時台以降は減少に転じており、0時台は23時台と比べて大きく減少している。

いいね数とリツイート数については、 いいねの付与やリツイートを行った時刻ではなく、 いいねの付与やリツイートを行った対象のツイートの投稿時刻で集計している点に、注意して見る必要がある。図表3の左下段と右下段を見ると、 いいね数やリツイート数は時刻ごとの変動が大きい。2~5時台のツイートに対しては、投稿されるツイート自体が少ないために、 いいね数とリツイート数も少ない。それ以外の時間帯は投稿時刻によって変動しているが、ツイート数が前後の時間帯より多い8時台と12時台と18時台と22時台では、 いいね数とリツイート数が前後の時間帯より多い。これらの時刻は、投稿されたツイート数自体が多いことに加えて、ツイートを閲覧している人も多く、新着のツイートに いいねの付与やリツイートを行っている姿が想像される。

また、11時台と13時台は12時台よりもツイート数が少ない点では共通しているが、11時台のツイートに対する いいね数とリツイート数が12時台と同水準であるのに対して、13時台のツイートに対する いいね数とリツイート数は12時台よりも少ない。これも、ツイート数が多い時刻にはツイートを閲覧している人も多く、閲覧時刻近くに投稿されたツイートに いいねの付与やリツイートを行っている姿が想像される。

なお、22~23時台のツイート数が多いわりに、 いいね数の23時台とリツイート数の22~23時台は少なめになっている。これには、これらの時間帯に投稿されたツイートでは投稿からデータ取得までの間隔が短くかつ深夜帯であることが、影響している可能性がある。
図表3 投稿時刻ごとの傾向や特徴
4|投稿日時ごとの傾向や特徴:9月11日は未明にも投稿が多かったが、9月19~22日の未明は低調
投稿日と投稿時間帯(0時を起点とする6時間単位)の組み合わせごとの傾向や特徴を確認したのが、図表4である。なお、投稿時間帯については、投稿時刻ごとの傾向(図表3)で確認したとおり、今回の分析対象期間全体では、18~23時台、12~17時台、06~11時台、00~05時台の順でツイート数と投稿者数が多い傾向がある。

ツイート数と投稿者数を確認すると(図表4の左上段と右上段)、投稿日ごとの集計において9月11日辺りで多い状況は9月10日の18~23時台から9月11日の18~23時台にかけて発生し、9月19~22日辺りで多い状況は9月19日の06~11時台から9月23日の12~17時台にかけて発生したことが分かった。ただし、9月11日辺りでは普段はツイート数と投稿者数が少ない00~05時台でもかなり多かったのに対して、9月19~22日辺りの00~05時台は他の日と大きな違いが見られず、この2つの期間ではニュースへの関心の高まり方に違いがあることが分かった。
図表4 投稿日×時間帯ごとの傾向や特徴
いいね数とリツイート数を見ると(図表4の左下段と右下段)、9月11日辺りでは9月10日の18~23時台のツイートに対してかなり多くなった後、9月11日の00~05時台から12~17時台にかけてのツイートに対して、これらの時間帯のものとしては多めの いいね数とリツイート数となっている。他方で9月19~22日辺りについては、9月11日辺りのように連続した時間帯のツイートを対象にして いいね数とリツイート数が多い傾向が続くような状況は見られず、9月18日の12~17時台、9月19日の06~11時台と18~23時台、9月20日と9月21日の06~11時台に投稿されたツイートに対して、 いいね数とリツイート数が多くなっている。図表2のように投稿日ごとに見ると、この期間に連続して多くなっているように見えるが、投稿日と投稿時間帯を組み合わせて確認すると、実際には散発的であったことが分かった。

また、 いいね数とリツイート数については、ツイート数や投稿者数の傾向とは異なり9月25日に投稿されたツイートに対しても多くなっていたが、これは9月25日の06~11時台から18~23時台に投稿されたツイートに対して多くなっていたことが分かった。9月26日の00~05時台に投稿されたツイートに対しても、この時間帯に投稿されたツイートに対するものとしては多めの いいね数とリツイート数になっており、9月11日辺りと似た傾向になっている。ただし、9月11日辺りはツイート数と投稿者数も多かったのに対して、9月25日のツイート数や投稿者数は前後の日と大きな違いがないため、9月11日辺りとも違った関心の高まり方になっている。

3 ―― いいね数とリツイート数の傾向や特徴

3 ―― いいね数とリツイート数の傾向や特徴

1|本章の問題意識:なぜ いいね数やリツイート数の動向が、ツイート数等の動向と異なるのか?
前章の分析では、関心動向の指標である いいね数とリツイート数は、投稿日別に見ると(図表2)、投稿状況の指標であるツイート数と投稿者数と同様にニュースに連動して増える傾向があったが、ツイート数や投稿者数がそれほど多くない9月12日、19日、25日にも多くなっていた。また、投稿時刻別に見ると(図表3)、ツイート数や投稿者数とは異なる傾向を示していた。

そこで本章では、 いいね数やリツイート数の動向がツイート数や投稿者数の動向と異なる部分がある理由を探るために、 いいね数とリツイート数を軸にして分析する。
2| いいね数とリツイート数の分布:ゼロ件が大半だが少数のツイートに多くの いいねとリツイート
まず、分析対象期間全体における各ツイートの いいね数とリツイート数の分布を見たのが、図表5である。 いいね数がゼロ件のツイートが分析対象の半数以上を占め、9件以下のツイートで大半を占めた。しかし、その一方で(図表5の左上段)、 いいね数が10,000件以上のツイートが数件存在した(図表5の右上段)。同様にリツイート数の分布を見ると、リツイート数がゼロ件のツイートが分析対象の9割以上を占めた一方で(図表5の左下段)、リツイート数が4,000件以上のツイートが数件存在した(図表5の右下段)。
図表5 各ツイートの いいね数とリツイート数の分布
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

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