2021年10月19日

コロナ禍でテレワークが増えたのはどんな人か? (5) -属性別のテレワーク頻度の変化のまとめ

保険研究部 准主任研究員   岩﨑 敬子

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1――はじめに

コロナ禍でテレワークの頻度が増えたのはどのような人なのか。ニッセイ基礎研究所が実施した独自のWEBアンケート調査1を用いて、これまで4回にわたる基礎研レターで、2020年2月から2021年2月の間のテレワークの頻度の変化について、様々な属性別に確認した結果を紹介してきた2。本稿はその締めくくりとなる5回目として、これまでの基礎研レターで紹介した傾向をより厳密に確認するために、線形確率モデルおよびプロビットモデルの推定を行った結果を紹介する。
 
1 「2021年被用者の働き方と健康に関する調査」、2021年2月-3月に、18歳-64歳の被用者を対象として行われたWEBアンケート調査(n=5,808)。調査方法や対象の詳細は、岩﨑敬子, 2021年10月13日, 「コロナ禍でテレワークが増えたのはどんな人か? (1) 属性別のテレワーク頻度の変化:企業の規模/産業分類別」基礎研レター (https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69031?site=nli) を参照。
2 岩﨑敬子2021年10月13日, 「コロナ禍でテレワークが増えたのはどんな人か? (1) 属性別のテレワーク頻度の変化:企業の規模/産業分類別」基礎研レター (https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69031?site=nli)
岩﨑敬子2021年10月14日, 「コロナ禍でテレワークが増えたのはどんな人か? (2) 属性別のテレワーク頻度の変化:雇用形態/職種別」基礎研レター (https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69035?site=nli)
岩﨑敬子2021年10月15日, 「コロナ禍でテレワークが増えたのはどんな人か? (3) 属性別のテレワーク頻度の変化:地域/通勤時間/通勤手段別」基礎研レター (https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69049?site=nli)
岩﨑敬子2021年10月18日, 「コロナ禍でテレワークが増えたのはどんな人か? (4) 属性別のテレワーク頻度の変化:男女/年代/年収別」基礎研レター (https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69062?site=nli)

2――推定したモデルについて

2――推定したモデルについて

推定した線形確率モデルとプロビットモデルの結果は、表1のとおりである。どちらのモデルも、被説明変数は、2021年2月時点で、週に1日以上のテレワークを行っていた場合に1をとり、それ以外の場合に0をとるダミー変数である。また、説明変数には、2020年2月時点で、週に1日以上のテレワークを行っていた場合に1をとり、それ以外の場合に0をとるダミー変数および、企業規模、産業分類、性別、年齢等様々な属性に関する変数が含まれている。また、2021年2月は、一部の都道府県に緊急辞退宣言が発令されていた時期である。緊急事態宣言下では、テレワークが推奨されるという可能性があり、その影響をとらえるために、2021年2月に緊急辞退宣言下にあった都道府県3に居住している場合には1、そのほかの場合には0をとるダミー変数を説明変数に含めた。
 
3 2021年2月は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、岐阜県、大阪府、京都府、兵庫県、福岡県が、緊急事態宣言下にあった。栃木県も2月1日時点では緊急事態宣言下にあったものの2月7日で対象外となったため、今回の緊急事態宣言下にあった都道府県には含めていない。

3――産業分類と企業の規模:情報通信業および…

3――産業分類と企業の規模:情報通信業および大企業に勤める人のテレワークが拡大

まず、表1から、様々な観察可能な要因を考慮しても、勤める企業の産業分類によって、テレワークの拡大状況が異なることがわかる。製造業や電気ガス業の人に比べて、情報通信業の人の間ではテレワークがより拡大した一方、そのほかの業種の人の間でのテレワークの拡大傾向は小さかったことがわかる。また、企業規模については、企業規模が大きいほど、係数が大きくなっていることから、企業規模が大きい企業で働いている人の間で特に、テレワークが拡大した傾向がみられる。

直接物を扱ったり、直接人と会ったりする必要がある業種では、テレワークの拡大が難しいことや、企業規模が小さいと、業務がシステム化されにくい状況などを反映している可能性が考えられる。

4――雇用形態と職種

4――雇用形態と職種:正社員および管理職・専門職等のテレワークが拡大

また、表1から、雇用形態によっても、テレワークの拡大傾向が異なることが確認できる。正社員の人と契約/派遣社員の人を比べると、契約/派遣社員の人の間では、テレワークの拡大傾向が小さいようだ。また、職種によっても、テレワークの拡大状況が異なる傾向があることが示されている。管理職の人と比べると、事務職、医療福祉・教育関係の専門職、営業職、販売職、生産・技能職、接客サービス職、運輸・通信職の人のテレワークの拡大傾向は小さい。

職種については、産業分類と同様に、実際に物を触ったり、人と会ったりする必要がある職種ではテレワークの拡大傾向が低い可能性がある。また、業種や産業分野をコントロールした上でも、契約/派遣社員の人の方が、テレワークの拡大傾向が小さいことから、個々の会社で、契約/派遣社員と正社員では、テレワーク実施について何等かのルールの違いなどが設定されている場合がある可能性も示唆される。

5――地域と通勤時間/手段

5――地域と通勤時間/手段:南関東在住者、長時間通勤者・公共交通機関での通勤者のテレワークが拡大

さらに、表1から、緊急事態宣言下のダミー変数はプラスであることから、緊急事態宣言下では、テレワークが拡大した傾向がみられる。さらに、緊急事態宣言の状況や企業規模等を考慮した上でも地域によって、テレワークの拡大傾向が異なることが確認できる。具体的には、北海道地区に比べて、南関東地区(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)は、テレワークの拡大傾向が大きい。そして、四国地区(香川県、愛媛県、徳島県、高知県)では、少し拡大傾向が小さいようだ。業種や企業規模、緊急事態宣言等を考慮した上でも、地域ごとに異なる傾向が残っていることから、テレワーク拡大と地域の関係については、今後さらなる検証が必要だろう。

また、通勤時間については、通勤時間が10分以内の人に比べて、それより長い人の方がテレワークの拡大傾向が強いことが確認できる。さらに、通勤手段については、自家用車やバイクで通勤している人に比べて、公共交通機関や、徒歩・自転車で通勤している人の間でよりテレワークが拡大した傾向がみられる。こうした傾向がみられる要因についても、今後検証が必要だが、公共交通機関の利用を避けることで感染対策していたり、通勤時間が長いほど、テレワークを行うことによる通勤時間削減のメリットが大きかったりすることが要因として考えられる。

6――男女、年代、年収

6――男女、年代、年収: 男女差見られず、若年者、年収が高い人のテレワークが拡大

また、「コロナ禍でテレワークが増えたのはどんな人か? (2) 属性別のテレワーク頻度の変化:男女/年代/年収別」で、女性に比べて男性の間で、テレワークが拡大した傾向がみられることを紹介したが、企業規模等のそのほかの要因をコントロールすると、男女でテレワークの拡大状況に、統計的に有意な違いは見られなかった。年齢については、係数が負で有意であり、年齢が低い人ほど、テレワークが拡大した傾向が示唆される。さらに、年収については、年収が高くなっていくほど係数が大きくなっていることから、企業規模等をコントロールした上でも、年収が高い人ほど、テレワークが拡大した傾向が確認できる。

年齢が低い人の間でテレワークが拡大した要因としては、デジタルネイティブ世代の多い若者ほど、テレワークの利用に積極的である可能性が考えられる4。さらに、産業分野や職種、企業規模等を考慮した上でも、年収の高い人の間での方が低い人に比べてテレワークが拡大した傾向がみられることから、テレワーク行うための自宅設備等の環境などがテレワークの活用状況に影響している可能性が考えられるかもしれない。
 
4 久我尚子, 2021年1月19日「年代別に見たコロナ禍の行動・意識の特徴~働き方編若いほどテレワークに積極的な一方、現場業務の負担も」基礎研レター (https://www.nli-research.co.jp/files/topics/66656_ext_18_0.pdf?site=nli)

7――おわりに

7――おわりに

本稿を含めた5回の基礎研レターでは、ニッセイ基礎研究所が行った独自のWEB調査のデータを用いた分析から、コロナ禍でのテレワークの拡大状況は、産業分野や、企業規模、雇用形態、職種、地域、通勤時間、通勤手段、年代、年収といった様々な属性によって異なる傾向があることを紹介してきた。これらの違いからは、テレワーク拡大についての様々な課題が示唆される。今後こうした課題やテレワーク拡大の影響が明らかになっていくことで、コロナ後の多様な働き方を支えるシステムがよりよいものになっていくことが期待される。
表1.線形確率モデルとプロビットモデルの推定結果
表1.線形確率モデルとプロビットモデルの推定結果(続き)
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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

(2021年10月19日「基礎研レター」)

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