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- 景気ウォッチャー調査(21年8月)~感染急拡大や緊急事態宣言対象地域拡大で景況感大幅悪化
2021年09月09日
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1. 感染急拡大の影響から、景気の現状判断DIは大幅低下、先行き判断DIは2か月連続低下

地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)、先行き判断DI(季節調整値)ともに、全国12地域中11地域で低下した。現状判断DIで前月からの低下幅が最も大きかったのは四国(前月差▲19.0ポイント)、先行き判断DIで前月からの低下幅が最も大きかったのは中国(前月差▲10.9ポイント)と、調査期間までの感染動向が反映された結果となっている。
2. 景気の現状判断DI(季節調整値):全ての内訳で下落

家計動向関連のうち、特に、飲食関連やサービス関連の落ち込みが大きかった。また、前月まで50を超えていた企業動向関連の内訳の製造業や雇用関連も50を割り込んだ。製造業はコロナ禍でも好調を維持してきたが、回答者のコメントからは、緊急事態宣言の影響とともに、東南アジアでの感染拡大により、当該地域からの原材料の供給に遅れが生じていることがその要因とみられる。また、雇用関連について、回答者のコメントからは、特に飲食、旅行といったコロナ禍で影響の大きな業種で影響が大きく出ているようだ。
<製造業の回答者の主なコメント>
<雇用関連の回答者の主なコメント>
- 緊急事態宣言発出の影響で、キャンセルや注文の取消し等が重なり、売上は回復してこない(甲信越・食料品製造業(製造担当))
- 東南アジアでのロックダウンの影響で、半導体などの部品供給が遅れており、自動車生産に大きな影響が出ている(南関東・輸送用機械器具製造業(総務担当))
- 鋼材は品不足と未曽有の値上げが続いており、今後の経済活動全体の大きな足かせとなる(東海・鉄鋼業(経営者))
<雇用関連の回答者の主なコメント>
- 緊急事態宣言の再発出により、新規に休業を実施した飲食店から、雇用調整助成金の相談が増加している。飲食店関連の事業所にも影響が出ている(北関東・職業安定所(職員))
- 飲食や旅行、ホテル、航空、鉄道など、人流に関わる業種はコロナ禍の影響が続いており、求人数は全く戻っていない。今回の緊急事態宣言が期間、地域共に拡大していることが、この状況に拍車を掛けている(近畿・新聞社[求人広告](管理担当))
3. 景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で下落
<雇用関連の回答者の主なコメント>
- 雇用調整助成金の特例措置が延長されたが、収益を確保できない企業の経営体力は、雇用調整助成金の特例措置が続いても、早晩、経営困難に陥る可能性は否めない。年末を区切りとして、廃業する企業も出ている(九州・職業安定所(職員))
- 今の状況が長引くほどに、新型コロナウイルス禍でもどれだけ対策を講じ、業績を維持できているかが今後の大きな鍵となる。新型コロナウイルスが終息しても、もはや新型コロナウイルス発生前には戻らない。新卒採用においても、より質が求められ、相手の話を聞く力が今後ますます重要になってくる(中国・求人情報誌製作会社(広告担当))
4. 回答者コメントから
<緊急事態宣言に言及した回答者の主なコメント>
(現状判断)
(先行き判断)
(現状判断)
- 緊急事態宣言の延長や、新型コロナウイルスの感染者数の激増で、商業施設への集客に影響が出ている。家電量販店も同様であり、前年の特別定額給付金に相当する対策がなければ、かなり厳しい状況である(近畿・家電量販店(企画担当))
- 緊急事態宣言の延長、新型コロナウイルス感染者数の増加が止まらないため、来店、利用機会が制限されており、先が見えない状況である(東京都)(南関東・高級レストラン(役員))
(先行き判断)
- 新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、緊急事態宣言が発出され、新型コロナウイルス感染症が終息する兆しがないため、今後、経済活動の水準が全般的に低下する可能性がある(中国・会計事務所(経営者))
- 新型コロナウイルスの感染力は増大しているが、対応策は変わらず補償もない。また、連休設定や、大型イベント開催で、感染抑制という気持ちになっておらず、仕事や人流の抑制につながっていない。さらに、感染力が強くなった場合などを想定すると、ワクチン接種率が目標数値に達成するまでは、緊急事態宣言を解除しない等徹底した対策を望んでいる(九州・その他飲食の動向を把握できる者[酒卸売](経理))
<ワクチンに言及した回答者の主なコメント>
(現状判断)
(先行き判断)
(現状判断)
- 新型コロナウイルス新規感染者数が減らない。ワクチン接種も追い付いていない。新型コロナウイルス対策に、ロックダウンも考えるべきである(沖縄・一般小売店[酒](店長))
- 8月に入っても新型コロナウイルスの影響を大きく受け、非常に厳しい状況となっている。ワクチン接種が進み、市場の雰囲気も改善すると考えていたので、その反動はより大きい(東京都)(南関東・家電量販店(経営企画担当))
(先行き判断)
- 上期から下期への期変わり時期であるとともに、新型コロナウイルス対策のワクチン接種の割合が増加することで安全が担保され、いよいよ本格的に経済が回り出し、求人求職共に少し良くなると考える(北陸・人材派遣会社(社員))
- 新型コロナウイルス変異株により新規感染者数が増加し、日本各地で過去最多の感染者が発生するなど新型コロナウイルスの影響が続いている。ワクチン接種のめどがついてきたが、新型コロナウイルス変異株への有効性や感染力を危惧する声もあり、企業が業績の低迷から抜け出すには、まだ一定の時間が掛かるのではないかと推測される(九州・学校[大学](就職支援業務))
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(2021年09月09日「経済・金融フラッシュ」)
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