2021年09月09日

景気ウォッチャー調査(21年8月)~感染急拡大や緊急事態宣言対象地域拡大で景況感大幅悪化

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1. 感染急拡大の影響から、景気の現状判断DIは大幅低下、先行き判断DIは2か月連続低下

現状判断DI・先行き判断DIの推移 9月8日に内閣府が公表した2021年8月の景気ウォッチャー調査(調査期間:8月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は34.7と前月から13.7ポイント低下した。他方、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は43.7と前月から4.7ポイント低下した。

地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)、先行き判断DI(季節調整値)ともに、全国12地域中11地域で低下した。現状判断DIで前月からの低下幅が最も大きかったのは四国(前月差▲19.0ポイント)、先行き判断DIで前月からの低下幅が最も大きかったのは中国(前月差▲10.9ポイント)と、調査期間までの感染動向が反映された結果となっている。
今回の結果からは、感染急拡大や緊急事態宣言の対象地域拡大の影響から、景況感が急激に悪化したことが示された。コロナ禍では、景況感が感染状況に左右される状況が継続しており、現在でも、その傾向は非常に強いといえるだろう。なお、このところ、新規感染者数の低下傾向がみられており、この傾向がこのまま継続すれば、来月の調査では、景況感が幾分か改善される可能性があるだろう。
地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月差/現状判断DIと現状水準判断DIの比較

2. 景気の現状判断DI(季節調整値):全ての内訳で下落

現状判断DI・回答者構成比 現状判断DI(季節調整値)は、4月に9.4まで落ち込んだ後に、5月から6か月連続で改善し、10月には50を超えた。その後の感染拡大により、11月から下落に転じ、21年1月には31.2まで落ち込んだが、2月、3月と大幅上昇に転じていた。しかし、一部地域に対する休業要請を伴う緊急事態宣言再発出などにより、4月は大きな落ち込みとなり、5月もわずかに低下した。沖縄県以外に対する緊急事態宣言が解除されたことなどから、6月は3か月ぶりに上昇したが、8月は2か月ぶりに大幅に悪化した。

景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、悪化と回答した割合が増加し、改善又は現状維持と回答した割合が減少した。
現状判断DIの内訳の推移 現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、全ての内訳で大きな落ち込みとなった。家計動向関連は31.3(前月差▲15.9ポイント)、企業動向関連は40.6(同▲8.8ポイント)、雇用関連は44.8(同▲8.9ポイント)であった。

家計動向関連のうち、特に、飲食関連やサービス関連の落ち込みが大きかった。また、前月まで50を超えていた企業動向関連の内訳の製造業や雇用関連も50を割り込んだ。製造業はコロナ禍でも好調を維持してきたが、回答者のコメントからは、緊急事態宣言の影響とともに、東南アジアでの感染拡大により、当該地域からの原材料の供給に遅れが生じていることがその要因とみられる。また、雇用関連について、回答者のコメントからは、特に飲食、旅行といったコロナ禍で影響の大きな業種で影響が大きく出ているようだ。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移/現状判断DI(企業動向関連)の内訳の推移
<製造業の回答者の主なコメント>
  • 緊急事態宣言発出の影響で、キャンセルや注文の取消し等が重なり、売上は回復してこない(甲信越・食料品製造業(製造担当))
  • 東南アジアでのロックダウンの影響で、半導体などの部品供給が遅れており、自動車生産に大きな影響が出ている(南関東・輸送用機械器具製造業(総務担当))
  • 鋼材は品不足と未曽有の値上げが続いており、今後の経済活動全体の大きな足かせとなる(東海・鉄鋼業(経営者))

<雇用関連の回答者の主なコメント>
  • 緊急事態宣言の再発出により、新規に休業を実施した飲食店から、雇用調整助成金の相談が増加している。飲食店関連の事業所にも影響が出ている(北関東・職業安定所(職員))
  • 飲食や旅行、ホテル、航空、鉄道など、人流に関わる業種はコロナ禍の影響が続いており、求人数は全く戻っていない。今回の緊急事態宣言が期間、地域共に拡大していることが、この状況に拍車を掛けている(近畿・新聞社[求人広告](管理担当))

3. 景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で下落

先行き判断DI・回答者構成比 2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、20年7月に感染拡大への懸念で大きく落ち込んだ後に、11月を除いて上昇し、21年3月から2か月連続で大きく低下したものの、5月、6月と再び上昇していた。7月以降は感染再拡大による先行きへの警戒感拡大から、2か月連続で低下した。

景気の先行き判断DIの回答者構成比でみても、悪化と回答した割合は増加し、改善又は現状維持と回答した割合は減少した。
先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は43.3(前月差▲3.8ポイント)、企業動向関連は45.5(同▲5.0ポイント)、雇用関連は42.6(同▲9.7ポイント)であり、全てで低下し、企業動向関連と雇用関連は再び50を割り込んだ。雇用関連の大きな落ち込みについて、回答者のコメントからは、感染再拡大による先行き不透明感が強くなったことがその背景にあるようだ。
先行き判断DIの内訳の推移/先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
<雇用関連の回答者の主なコメント>
  • 雇用調整助成金の特例措置が延長されたが、収益を確保できない企業の経営体力は、雇用調整助成金の特例措置が続いても、早晩、経営困難に陥る可能性は否めない。年末を区切りとして、廃業する企業も出ている(九州・職業安定所(職員))
  • 今の状況が長引くほどに、新型コロナウイルス禍でもどれだけ対策を講じ、業績を維持できているかが今後の大きな鍵となる。新型コロナウイルスが終息しても、もはや新型コロナウイルス発生前には戻らない。新卒採用においても、より質が求められ、相手の話を聞く力が今後ますます重要になってくる(中国・求人情報誌製作会社(広告担当))

4. 回答者コメントから

<緊急事態宣言に言及した回答者の主なコメント>
(現状判断)
  • 緊急事態宣言の延長や、新型コロナウイルスの感染者数の激増で、商業施設への集客に影響が出ている。家電量販店も同様であり、前年の特別定額給付金に相当する対策がなければ、かなり厳しい状況である(近畿・家電量販店(企画担当))
  • 緊急事態宣言の延長、新型コロナウイルス感染者数の増加が止まらないため、来店、利用機会が制限されており、先が見えない状況である(東京都)(南関東・高級レストラン(役員))

(先行き判断)
  • 新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、緊急事態宣言が発出され、新型コロナウイルス感染症が終息する兆しがないため、今後、経済活動の水準が全般的に低下する可能性がある(中国・会計事務所(経営者))
  • 新型コロナウイルスの感染力は増大しているが、対応策は変わらず補償もない。また、連休設定や、大型イベント開催で、感染抑制という気持ちになっておらず、仕事や人流の抑制につながっていない。さらに、感染力が強くなった場合などを想定すると、ワクチン接種率が目標数値に達成するまでは、緊急事態宣言を解除しない等徹底した対策を望んでいる(九州・その他飲食の動向を把握できる者[酒卸売](経理))
「緊急事態宣言」のコメント数と現状景気判断/「緊急事態宣言」のコメント数と先行き景気判断
<ワクチンに言及した回答者の主なコメント>
(現状判断)
  • 新型コロナウイルス新規感染者数が減らない。ワクチン接種も追い付いていない。新型コロナウイルス対策に、ロックダウンも考えるべきである(沖縄・一般小売店[酒](店長))
  • 8月に入っても新型コロナウイルスの影響を大きく受け、非常に厳しい状況となっている。ワクチン接種が進み、市場の雰囲気も改善すると考えていたので、その反動はより大きい(東京都)(南関東・家電量販店(経営企画担当))

(先行き判断)
  • 上期から下期への期変わり時期であるとともに、新型コロナウイルス対策のワクチン接種の割合が増加することで安全が担保され、いよいよ本格的に経済が回り出し、求人求職共に少し良くなると考える(北陸・人材派遣会社(社員))
  • 新型コロナウイルス変異株により新規感染者数が増加し、日本各地で過去最多の感染者が発生するなど新型コロナウイルスの影響が続いている。ワクチン接種のめどがついてきたが、新型コロナウイルス変異株への有効性や感染力を危惧する声もあり、企業が業績の低迷から抜け出すには、まだ一定の時間が掛かるのではないかと推測される(九州・学校[大学](就職支援業務))
「ワクチン」のコメント数と現状景気判断/「ワクチン」のコメント数と先行き景気判断
<オリンピックに言及した回答者の主なコメント>
(現状判断)
  • 今月は東京オリンピック・パラリンピックの影響で、大会関係者が約3割宿泊してくれたことにより、販売量が約95%と向上している(東京都)(南関東・都市型ホテル(スタッフ))
  • 東京オリンピック需要があるとみていたテレビやBDレコーダーの売行きが平年と変わらない(北陸・家電量販店(店長))

(先行き判断)
  • 東京オリンピック後、明るい話題は特に見当たらない。緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の適用などで、交通、レジャー関係は売上が下がり、巣籠り需要が増えることを考えると景気は変わらないと判断している(四国・通信業(企画・売上管理))
「オリンピック」のコメント数と現状景気判断/「オリンピック」のコメント数と先行き景気判断
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2021年09月09日「経済・金融フラッシュ」)

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