2021年07月09日

景気ウォッチャー調査(21年6月)~緊急事態宣言解除やワクチン普及などから現状判断DI、先行き判断DIともに上昇

経済研究部 准主任研究員   山下 大輔

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1.景気の現状判断DIは3か月ぶりに上昇、先行き判断DIは2か月連続で上昇

現状判断DI・先行き判断DIの推移 7月8日に内閣府が公表した2021年6月の景気ウォッチャー調査(調査期間:6月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DI(季節調整値)は47.6と前月から9.5ポイント上昇した。他方、2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は52.4と前月から4.8ポイント上昇した。先行きが50を超え、現状、先行きともに上昇したのは2021年2月以来だ。
地域別でみると、現状判断DI(季節調整値)は、全国12地域で上昇した。前月からの上昇幅が最も大きかったのは北海道と中国(前月差13.8ポイント)であった。先行き判断DIも全国12地域で前月よりも上昇し、全ての地域で50を超えた。

今回の結果からは、6月20日の(沖縄県以外の)緊急事態宣言の解除やワクチンの普及などにより、景況感の改善が示された。特に先行きに対する楽観的な見方が広がっている。ただし、景気の現状水準判断DI(季節調整値)も前月から5.2ポイント上昇したものの、依然として低水準である点に留意が必要だ。
地域別現状判断DI・先行き判断DIの前月差/現状判断DIと現状水準判断DIの比較

2.景気の現状判断DI(季節調整値):家計・企業・雇用の全てで上昇

現状判断DI・回答者構成比 現状判断DI(季節調整値)は、4月に9.4まで落ち込んだ後に、5月から6か月連続で改善し、10月には50を超えた。その後の感染拡大により、11月から下落に転じ、21年1月には31.2まで落ち込んだが、2月、3月と大幅上昇に転じていた。しかし、一部地域に対する休業要請を伴う緊急事態宣言再発出などにより、4月は大きな落ち込みとなり、5月もわずかに低下した。沖縄県以外に対する緊急事態宣言が解除されたことなどから、6月は3か月ぶりに上昇した。
景気の現状判断DIの回答者構成比をみても、改善と回答した割合(「良くなっている」と「やや良くなっている」の回答の合計)(5月:11.9%→6月:21.3%)と現状維持(「変わらない」)と回答した割合 (5月:40.1%→6月:47.4%)が増加しており、悪化と回答した割合(「悪くなっている」と「やや悪くなっている」の回答の合計)が減少した(5月:48.0%→6月:31.3%)。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は44.6(前月差+11.1ポイント)、企業動向関連は53.1(同+6.2ポイント)、雇用関連は56.1(同+6.5ポイント)であり、全ての内訳で上昇した。企業動向関連や雇用関連は50を超えた。家計動向関連の内訳をみても、小売、サービス、飲食は大きく上昇した。ただし、飲食は37.8にとどまり、50には遠い状況だ。
現状判断DIの内訳の推移/現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
<緊急事態宣言解除についての主なコメント>
  • 緊急事態宣言が解除になり、出張でスーツを着るとか、結婚式でのニーズが明らかに増えてきている。また、65歳以上のワクチン接種が進んだことで、り患するおそれがなくなり首都圏から子供が帰省するといった声も2~3聞いているので、少しずつだが経済が回りつつあるのではないかとみている。(東北・衣料品専門店)
  • 緊急事態宣言が解除され、旅行者の動きが活発化している(南関東(東京都)・旅行代理店)
  • 緊急事態宣言が解除されたことによって、明らかに人流が増加しており、外食やレジャーに対する消費マインドは上向いているように感じる。(東海・百貨店)
  • 緊急事態宣言が解除され、東京オリンピックの開催を控えた環境のなか、まん延防止等重点措置といっても名ばかりのように感じる。国民が行動や飲食、買物、娯楽などを楽しむ状況になっている。(近畿・コンビニ)

<半導体不足、木材不足についての主なコメント>
  • 需要自体はもっと強いが、半導体不足のために自動車の生産が進まず減産せざるを得ない状況である。(東海・輸送用機械器具製造業)
  • 半導体不足の影響で、長納期の新車が多くなっている。長くなると客の購買意欲が低下するため、危惧している。(九州・乗用車販売店)
  • 世界的な半導体不足から、半導体関連事業の生産が好調である。(九州・電気機械器具製造業)
  • 林業木材関係は、ウッドショックの影響で好調のようであるが、建築業界は材料単価や人件費の上昇で苦戦している。(九州・設計事務所)
  • 前月と同じ傾向にあるが、ここに来て、木材、資材の値上がりが激しく、納入も遅い。景気に与える影響が心配である。(甲信越・建設業)

3.景気の先行き判断DI(季節調整値):全ての内訳で上昇

先行き判断DI・回答者構成比 2~3か月先の景気の先行き判断DI(季節調整値)は、20年7月に感染拡大への懸念で大きく落ち込んだ後に、11月を除いて上昇し、21年3月から2か月連続で大きく低下したものの、先月に引き続き2か月連続で上昇した。
景気の先行き判断DIの回答者構成比でみても、悪化と回答した割合(「悪くなる」と「やや悪くなる」の回答の合計)(5月:28.1%→6月:20.8%)と現状維持(「変わらない」)と回答した割合(5月:48.5%→6月:44.1%)は減少し、改善と回答した割合(「良くなる」と「やや良くなる」の回答の合計)(5月:23.4%→6月:35,1%)は増加した。

先行き判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連は51.5(前月差5.0ポイント)、企業動向関連は52.2(同3.2ポイント)、雇用関連は59.1(同7.1ポイント)であり、全てで上昇した。家計動向関連も50を超えた。家計動向関連の内訳では、飲食、サービスが50を超えた。
先行き判断DIの内訳の推移/先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移
<ワクチンに関する主なコメント>
  • ワクチン接種のスピードが加速していることから、日常の余暇活動が上向きになることが期待できる。現時点でも、ワクチン接種が終わったから遊びに来たという観光客の声を聞いている。(北海道・観光名所)
  • 新型コロナウイルスの影響にもよるが、東京オリンピック効果などで消費者ニーズが高まり、流通や公共交通、観光等のサービス業界を中心に雇用も拡大し、景気が少し良くなると考える。これからはリモート会議、RPA化など非接触型のビジネススタイルの働き方がより求められる。(四国・人材派遣会社)

<感染者リバウンドへの懸念に関する主なコメント>
  • 新型コロナウイルス感染者数の動向によるが、顕著な回復は見込めない。逆に、東京オリンピック後の感染リバウンドが気になる。(甲信越・一般レストラン)
  • 新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、人の流れが良くなることで、新型コロナウイルス感染者数が再び増加する懸念が残っているため、景気が急速に回復するとは言い難い(中国・金融業)
  • 新型コロナウイルスの感染が一旦落ち着き、緊急事態宣言も解除されたが、再び感染拡大のおそれがあるという危機感から、来客数が減少しつつある(近畿・その他飲食[ファーストフード])

<半導体不足、木材不足に関する主なコメント>
  • 前年度はコロナ禍によるIT需要が高まり、受注量が増えたが、今年度は需要はあるものの、半導体不足により納品ができず、案件が来年度へずれ込む可能性がある(九州・通信業)。
  • ウッドショックによる木材の値上がりや、鉄の値上がりが響きそうである(四国・建設業)
  • 木造住宅の輸入材料不足により、資材価格の高騰が建築価格を押し上げ始めた。新築案件の先延ばしの動きが心配である(近畿・建設業)
  • コロナ禍とウッドショックが重なり、消費者のマインドが低下する(北陸・住宅販売会社)
  • 半導体不足、木材不足など物価上昇傾向にあり、物がなくなってきていることが怖い(南関東・精密機械器具製造業)

<経済の構造変化を指摘する主なコメント>
  • 出掛けないことが普通になり、新しい洋服を買うきっかけを失っている客が多いため、今後も景気は変わらない(中国・衣料品専門店)
  • ワクチン接種が進み、経済活動の回復を期待するものの、生活基盤の変化が進み、今後も 現状のまま進むものとみている(東北・その他専門店[ガソリンスタンド])。

6月調査の結果は、(沖縄県以外の)緊急事態宣言解除やワクチンの普及などから景況感が改善していることを示すものだった。ただし、一部地域では感染者数が再拡大し、沖縄県に加えて、東京都に対して緊急事態宣言が7月12日から適用されることとなった。他方で、まん延防止等重点措置は一部地域に対して解除されることとなった。7月調査では、今後の感染動向次第ではあるが、地域間での景況感に格差が生じる可能性がある。また、オリンピック・パラリンピックの影響も注目される。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

山下 大輔 (やました だいすけ)

研究・専門分野
日本経済

(2021年07月09日「経済・金融フラッシュ」)

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