2021年06月01日

ドイツの責任準備金評価用最高予定利率が2022年から0.25%に-BMF(財務省)の決定内容と関係団体の反応-

保険研究部 研究理事   中村 亮一

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2|DAV(ドイツ・アクチュアリー会)
以前の保険年金フォーカスで報告したように、DAV(ドイツ・アクチュアリー会)は、2020年12月2日にポジション・ペーパーを公表2して、最高予定利率の水準を0.25%に引き下げることを推奨していた。

今回のBMFの決定は、これに沿ったものであることから、最高予定利率の引き下げ自体は歓迎している。ただし、GDVと同様に、リースター年金等に対する保証給付の引き下げを強く主張している。

「リースター年金の強制的な改革及び企業年金制度におけるこれに相当する種類のコミットメントがなければ、2022年1月1日現在においても、低金利の状況が続いていることを考えると、これは将来の積立型年金の給付を確保するための全体的なアプローチではない。
これは、最高利率の引き下げと同時に、年金及び最低拠出金 (BZML) において法律で要求されている拠出金の額を、たとえば支払われた拠出金の80%に引き下げることによっても達成されなければならない。
我々は、連邦政府に対し、 2022年1月1日まで続く本議会の任期の終了前に、リースター及びBZMLのために必要な法改正を導入することを求める。」

より、具体的には、以下のような内容となっている。

2021年3月31日 ケルン
保険監督法に基づく規則を改正する第5次規則の連邦財務省の報告書草案に関するドイツ・アクチュアリー会の意見
DAVは、2022年1月1日までに新規生命保険契約の最高利率を0.25%に引き下げるとの連邦財務省の決定を原則として歓迎する。これは、DAVが2020年12月1日に同省に勧告したことに沿ったものであるが、リースター年金の強制的な改革及び企業年金制度におけるこれに相当する種類のコミットメントがなければ、2022年1月1日現在においても、低金利の状況が続いていることを考えると、これは将来の積立型年金の給付を確保するための全体的なアプローチではない。

これは、最高利率の引き下げと同時に、年金及び最低拠出金 (BZML) において法律で要求されている拠出金の額を、例えば支払われた拠出金の80%に引き下げることによっても達成されなければならない。

我々は、連邦政府に対し、 2022年1月1日まで続く本議会の任期の終了前に、リースター及びBZMLのために必要な法改正を導入することを求める。

BaFinが利用可能なDAVの分析は、支払われた拠出金の全額を保証することの限界と問題を示している。

a) 回収不能な管理・助言コスト
これまで求められてきた100%の保証の下では、健全性ルールに基づき、最新の観点から、慎重に設定されたコストと慎重に選択された保証率に基づく拠出が必要である。しかし、0.25%の保証金利では、これ以上慎重にコストを設定することはできない。特に、顧客への総合的なアドバイスを必要とし、契約の変更や手当の払い戻しが頻繁に行われるリースター商品の場合、最終的な拠出金保証を削減しない限り、総コストを説明することはできない。

b) 被保険者にとって魅力のないリターン
現在の低金利の状況では、100%の拠出金を持つ商品は、会社がマイナス金利の低リスクの投資に投資しなければならないことや、保証付きのユニットリンク商品では、拠出金のごく一部しか潜在性の高いファンドに投資できないことから、被保険者の意味での投資の範囲を狭めている。このため、利益の観点からはリースター契約やBZMLは魅力的ではない。さらに、ソルベンシーIIのため、債券投資は満期が長いため、超過保証は顧客をインフレの重大なリスクにさらす。

最終的な拠出金保証を、例えば払込拠出金の80%程度に削減することで、顧客のセキュリティニーズを無視することなく、不動産、インフラプロジェクト、株式などのより魅力的な投資形態に必要な範囲を創出できる。

最高利率が引き下げられる場合、リースター商品とBZMLの退職給付引当金の枠組み条件が同時に変更されなければ、DAVは、殆どの会社がこの理由で2022年からリースター年金とBZMLから撤退しなければならないと推定している。これは、リースター商品へのさらなる損害と、公有財産の職業年金への損害につながる。

したがって、DAVは、連邦政府が議会の任期中に連立合意で合意されたリースター改革を実施することを明らかに望んでいないことを深く遺憾に思う。これは、低金利が続く状況に資金供給型年金の枠組みを適応させ、民間年金の供給に対する顧客の信頼を高めるためのもう一つの貴重な時期である。ただし、現時点では、リースターの包括的な改革がもはや不可能ならば、少なくとも100%の寄与率を撤回し、より低い比率に置き換えることを強く勧告する。

3|BdV(被保険者連盟)
45,000人の会員を持つ民間保険分野の非営利消費者保護団体であるBdVは、被保険者の観点から、今回の最高予定利率の引き下げ自体に反対するとともに、リースター年金等の提供に伴う必要な見直し等を提案している。

サマリー評価は、以下の通りとなっている。

2021年3月31日  
保険監督法に基づく規則を改正する第5規則案に対する被保険者連盟の意見
サマリー評価
被保険者の観点からは、法案の目的を共有し、理解することができない。このため、我々BdVは、基本的な理由から、原案で示されているような最高利率の引き下げには反対している。

・金融・財政・予算政策は役に立たない。
・競争政策の観点から問題がある。
・規制政策の観点から無意味である。

むしろ、最高利率が引き下げられると、被保険者にとってもう1つの一方的な不利益が見られる。

・最高利率の引き下げは、殆どの資本形成率にマイナスの影響を与え、年金給付の大幅な減額につながる。特に、多くの既存の契約、「リースター」と「リュルップ」年金は、保険数理上の利率が低いため、保険給付が約10% (!) 減少する。

・標準契約の手数料は、同じ保証付き年金給付で約30%(!)増加する。

提案された法案に直接関連して、これらの問題に対する行動がかなり必要となる。

1.「リースター」及び「リュルップ」年金の法定年金は、老齢年金の観点からのニーズに沿ったものではない。さらに、立法府が生命保険会社に退職給付段階で退職義務を伴う供給の独占を構築したため、競争に歪曲的な影響を及ぼし、その結果、需要側の富の喪失と財政負担を招いている。

この退職義務は廃止されるべきだ。全ての退職貯蓄者が、個人的なニーズに応じて退職給付を自由に退職することで選択できる(しない)ことで十分である。

2.立法者はもっと寛大な手段を選び、利回りを低下させる保険契約のコストを減らすべきだ。第1のアプローチは、手数料の適切な上限をタイムリーに導入することであり、算出された財務、流通、管理コストと将来の利益分配の包括的な見直しを行うことである。

3.これらの措置は、消費者団体による成果重視型の参加と、その管理と制裁のオプションに関する連邦金融監督局 (BaFin) の強化が伴うべきである。

4|保険会社の対応等
GDVの公表資料によれば、保険会社の対応等は以下の通りとなっている。

最高予定利率の引き下げは、厳格な保険料保証のない商品にはあまり関係がない。殆どの顧客は、柔軟な保証を提供し、したがってより高い潜在的利益を提供する現代の生命保険契約を既に選択している。

この戦略は、リースター商品以外でもすでに有効になっている。例えば、Allianzは、新生命保険と年金保険に対して90%以下の保証レベルしか提供していない。他の保険会社も同様に行動している。

なお、格付機関のAssekurataの報告3によると、2021年初頭の市場分析で、47の生命保険会社のうち、可能な最高予定利率で民間年金保険契約を提供したのは16社のみであった。他の会社は既に0.5%又は0.25%しか約束していないか、まったく約束していない。なお、1年前には、24の会社が0.9%の保証が付いた商品を提供していた、と述べている。

このように、保険会社は既に一定の対応を行ってきている。  

5―まとめ

5―まとめ

以上、BMF(連邦財務省)が、2022年1月1日から保険や年金に対する最高予定利率を0.9%から0.25%に引き下げることを決定したことに関して、BMFの決定内容、及びこれを受けての関係団体の反応等、ドイツの責任準備金評価用の最高予定利率を巡る最近の動きについて、報告してきた。

保険業界団体は、今回の引き下げ自体については、特段の反対はしていないが、今回の引き下げに伴って、リースター年金等が関係する保証水準の引き下げ等の必要性を要望している。一方で、被保険者団体は引き下げ自体に反対するとともに、リースター年金等の提供に伴う必要な見直し等を提案している。

今回の最高予定利率の引き下げ自体は、想定されていたことであるが、一方でこれによる影響は小さいものではない。個人保険においては、既に各社が各種の対応を行ってきたところであるが、リースター年金等については所要の対応が図られない場合には、その存在意義や存続自体が問題視されることになるほど大きな影響を与えるものと想定されている。

その意味で、関係団体の意見等を踏まえて、今後BMFがどのような対応を行っていくのかが注目されていくことになる。こうしたリースター年金等を巡る動向については、別途のレポートで報告することにする。

いずれにしても、ドイツの保険・年金商品に対する責任準備金制度等を巡る動向には眼を離せないことから、引き続き注視していくこととしたい。
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保険研究部   研究理事

中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
保険会計・計理

(2021年06月01日「保険・年金フォーカス」)

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