2021年03月19日

消費者物価(全国21年2月)-下落率の縮小傾向が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPIの下落率は前月から0.2ポイント縮小

消費者物価指数の推移 総務省が3月19日に公表した消費者物価指数によると、21年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比▲0.4%(1月:同▲0.6%)となり、下落率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.4%、当社予想も▲0.4%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.2%(1月:同0.1%)と2ヵ月連続で上昇した。総合は前年比▲0.4%(1月:同▲0.6%)であった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(1月:前年比▲8.2%→2月:同▲7.8%)、ガス代(1月:前年比▲6.7%→2月:同▲6.2%)、ガソリン(1月:前年比▲9.5%→2月:同▲6.2%)、灯油(1月:前年比▲14.4%→2月:同▲11.6%)の下落幅がいずれも縮小したため、エネルギー価格の下落率は1月の前年比▲8.6%から同▲7.2%へと縮小した。

また、巣ごもり需要の高まりを背景に家庭用耐久財(電子レンジ、ルームエアコン、空気清浄機など)は前年比3.1%(1月:同3.1%)と高い伸びが続いた。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.59%(1月:▲0.71%)、食料(生鮮食品を除く)が0.00%(1月:▲0.02%)、その他が0.25%(1月:0.20%)であった。(制度要因(教育無償化、Go To トラベル)を除くベース)

2.上昇品目数が増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2月の上昇品目数は260品目(1月は255品目)、下落品目数は202品目(1月は208品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は49.7%(1月は48.8%)、下落品目数の割合は38.6%(1月は39.8%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は11.1%(1月は9.0%)であった。

上昇品目数の割合は20年11月から50%を下回る推移が続いているが、1、2月はその割合が若干高まった。

3.コアCPI上昇率は4月にプラス転化の公算

コアCPI上昇率は、20年12月には10年3ヵ月ぶりに▲1%台のマイナスとなったが、「Go To トラベル事業」の停止、エネルギー価格の下落幅縮小を主因として、下落率は2ヵ月で0.6ポイント縮小した。コアコアCPIは小幅ながら2ヵ月連続で上昇しており、経済活動の急激な落ち込みの割に物価の基調は弱くなっていない。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 巣ごもり需要の高まりから、食料品、日用品、家電製品など財の消費は堅調なものが多いこと、自粛要請などにより需要が急激に落ち込んでいる外食などのサービスについては、通常の景気悪化時と異なり、値下げによる需要喚起が期待できないことがその背景にあると考えられる。

先行きについては、足もとの原油価格の大幅上昇を受けて、エネルギー価格は4月に上昇に転じた後、上昇ペースが加速することが見込まれる。「Go To トラベル」の停止が継続すれば、コアCPI上昇率は4月にプラスとなり、夏場にかけてゼロ%台後半まで伸びを高めることが予想される。
 
なお、携帯大手各社は3月以降、通信料の引き下げを実施しているが、消費者物価指数にどの程度反映されるか不明であるため、現時点での見通しには織り込んでいない。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年03月19日「経済・金融フラッシュ」)

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