2021年03月05日

新型コロナ ワクチンのただ乗り ワクチン忌避をいかに減らすか?

基礎研REPORT(冊子版)3月号[vol.288]

保険研究部 主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   篠原 拓也

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ワクチン接種には、慎重な人が多い

一般に、ワクチン接種で6~7割の人が免疫を持つと、集団免疫が確立する。ただ、ワクチンには副反応がつきものだ。日経新聞の昨年末の世論調査によると、ワクチンを「ただちに接種したい」との声は約1割と少数派。7割程度の人は、「副作用の発生などの状況をみてから」。「接種したくない」との声も1割程度ある。接種には、慎重な人が多いようだ。

「ワクチン接種ゲーム」のモデル化

自分がワクチンを打たずとも、周りの多くの人が打ってくれれば、自分にも感染しないはず――これは「ワクチンのただ乗り(フリーライダー)問題」と呼ばれ、「ワクチン接種ゲーム」のモデルで研究されている。このモデルでは、未感染で免疫がない人は、他人の接種行動を参考に接種の有無を判断すると想定。ある期の始めにワクチンを接種すればその期は感染しないが、接種しなければ一定の確率で感染する。そして、次の期の始めに、また接種の有無を判断…。これを何期も繰り返して、接種率の変化と感染拡大の動向をシミュレーション計算する。
 
接種の判断には、前期に接種した人やしなかった人が受けたメリットとデメリットが参考になる。少し整理してみよう。

デメリット割合とワクチン接種率

ワクチンを打つメリットは、当然、免疫を獲得して感染を防ぐことだ。一方、デメリットには、費用と副反応がある。
 
まず費用について、日本では、新型コロナのワクチンは、無料で受けられる。ただし、費用は、接種そのものの費用だけとは限らない。接種会場までの交通費や、接種のための休業などが考えられる。
 
もう1つの副反応について、どんなワクチンでも副反応を完全にゼロにはできない。欧米では、接種後にアレルギー反応が出たケースが報告されている。一時的な炎症ではなく、生命の危険や、後遺症の残る副反応は、デメリットが大きい。
 
ワクチン接種ゲームでは、メリットを100%とし、それに対するデメリットの割合に応じて接種の有無を判断。何期か終えた後の結果のイメージをみてみよう。
 
 
イメージ図
デメリットがゼロなら接種率は100%だが、少しでもあると、接種率は大きく低下(1の部分)。「少しでもデメリットがあるなら、ワクチンは打たない」という人が出てくるためとみられる。そうした人が抜けたあとは、デメリットが大きくなるにつれて、ワクチンを打つ人がなだらかに減少(2の部分)。「接種して感染を避けたい」と思う人が徐々に減るためだ。デメリットが感染予防のメリットの9割程度になると、ほとんどの人にとって接種の意味がなくなる(3の部分)。「感染は防げても重い副反応が出てしまうのでは話にならない」という状態だ。接種率はゼロまで下がってしまう。

誰の真似をするか

何を参考に接種を判断するだろうか?「他人は気にせず、一人で決める」という人もいるだろう。だが、多くの人は、「他人が感染を防げたら、自分も受ける」などと、他人を真似するものとみられる。
 
問題は、誰の真似をするかだ。まず考えられるのは、家族や友人など身近な人だ。しかし、そればかりとは限らない。メディアで有名人の接種が報じられれば、影響を受ける人も多いはずだ。アメリカでは現大統領が、12月に接種を受ける姿を公開していた。これは国民への接種推奨効果を考えてのことといえる。
 
では、接種に関する情報が開示されていて、真似する対象が多い場合はどうなるか?先ほどのモデルによると、グラフの2の部分が違ってくる。情報が開示されるほど、デメリットが上がった時の接種率の低下の傾きが急になる。つまり、人々がデメリットの情報に敏感になる。

デマはワクチン忌避をもたらす恐れも

接種を受ける基準は、人により異なる。ただ、判断にあたって、すでに行われた接種の情報は大切だ。特に副反応については、症状の発生度合、程度、原因等の情報が正しく伝えられるかどうかで、様子見をしていた人の態度が変わってくる。
 
SNS上のデマ情報に翻弄される懸念もある。人々が疑心暗鬼に陥り、ワクチンを忌避してしまいかねないからだ。WHOは、健康に対する脅威の1つとして、「ワクチン忌避」を挙げている。
 
最終的には、一人ひとりが納得のいく判断をして、ワクチン接種に対応する。これが、集団免疫確立の近道といえそうだ。
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保険研究部   主席研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品、保険計理

(2021年03月05日「基礎研マンスリー」)

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