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- 2021年度税制改正(主に年金関係)について
2021年03月03日
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この原稿が公開される頃には、既に2021年度予算案とその一環としての税制改正法案が決定されていることと思われる。新型コロナ感染症拡大の影響で例年よりもひと月遅れで始まった来年度予算の議論であるが、最終段階では例年通りのペースとなっている。本稿では2021年度予算案の概要を紹介するとともに、年金制度周辺の税制がどう変化していこうとしているか、例年通り確認しておくこととしたい。
2021年度予算については、106兆6,097億円と対前年度+3兆9,517億円と3年連続で100兆円を越え、過去最大規模となっている。年金を含む社会保障費は、35兆8,421億円と対前年度+1,507億円増加し、これも過去最大となっている。ほかの主な項目は防衛費5兆3,235億円、国債費23兆7,588億円など、いずれも増加している。また今回の特徴としては、予備費5兆円が新型コロナウィルスへの対応のため計上されており、これは国会の承認を経ずに機動的に使い道を決めることができるものとされている。
新型コロナの影響は歳入のほうにも影響しており、企業業績の悪化に伴う法人税の減少により、税収全体が57兆4,480億円と2020年度当初予算より6兆円近く減少する見込みとされている。また国債発行も43兆5,970億円と、11年ぶりに新規国債発行額が前年度より増加する予算となっている。
税制全般については、短期的には減税による景気悪化への対応、中長期的には産業構造の改革を目指したデジタル化やグリーン社会の実現に向けたものが柱となっている。
年金分野では、今回大きな動きはなかったが、近年、老後生活資金に対する関心が高い状況には変わりないので、例年同様に、退職所得の適正化も併せて今後の改善に向けた大方針として掲げられている。
2021年度予算については、106兆6,097億円と対前年度+3兆9,517億円と3年連続で100兆円を越え、過去最大規模となっている。年金を含む社会保障費は、35兆8,421億円と対前年度+1,507億円増加し、これも過去最大となっている。ほかの主な項目は防衛費5兆3,235億円、国債費23兆7,588億円など、いずれも増加している。また今回の特徴としては、予備費5兆円が新型コロナウィルスへの対応のため計上されており、これは国会の承認を経ずに機動的に使い道を決めることができるものとされている。
新型コロナの影響は歳入のほうにも影響しており、企業業績の悪化に伴う法人税の減少により、税収全体が57兆4,480億円と2020年度当初予算より6兆円近く減少する見込みとされている。また国債発行も43兆5,970億円と、11年ぶりに新規国債発行額が前年度より増加する予算となっている。
税制全般については、短期的には減税による景気悪化への対応、中長期的には産業構造の改革を目指したデジタル化やグリーン社会の実現に向けたものが柱となっている。
年金分野では、今回大きな動きはなかったが、近年、老後生活資金に対する関心が高い状況には変わりないので、例年同様に、退職所得の適正化も併せて今後の改善に向けた大方針として掲げられている。
「第一 令和3年度税制改正の基本的考え方
・・・引き続き働き方の多様化を含む経済社会の構造変化への対応や所得再分配機能の回復の観点からの個人所得課税の検討を進める。企業年金・個人年金等に関する税制上の取り扱いについて、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制の構築に取り組む。」
(令和3年度税制改正大綱(以下同様):P.2)
以下、年金分野に関連する項目について要旨を紹介する。
5.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
(1)経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税のあり方(同:P.15)
(個人所得課税における諸控除の見直し等について引き続き検討されていくことにつき述べられている。)
(2)私的年金に関する公平な税制のあり方(同:P.16)
(働き方やライフコースが多様化する中で、働き方によって有利不利が生じない税制の構築を目指すこととされている。特に年金や退職金の支払われ方の違いに対し中立であるような税制のありかたや、拠出、運用、年金給付の各段階における適正かつ公平な制度の検討を進めることに触れられている。)
(具体的内容)
「(2)確定拠出年金法施行令の改正を前提に、確定拠出年金制度について次の見直し等が行われた後も、現行の税制上の措置を適用する。
1.確定給付年金制度の加入者の企業型確定拠出年金の拠出限度額(現行:月額2.75万円)を、月額5.5万円から確定給付年金ごとの掛金相当額を控除した額とする。
2.確定給付年金制度の加入者の個人型確定拠出年金の拠出限度額(現行:月額1.2万円)を、月額5.5万円から確定給付年金ごとの掛金相当額及び企業型確定拠出年金の掛金額を控除した額(月額2万円を上限)とする。」(国税・地方税とも)
(3)退職所得の適正化
(給与を少なくする一方退職金を多くするなどの過度な税軽減を防ぐ趣旨で、一部取り扱いを変更。ただし令和4年からの予定)」(同:P.35)
「<第三 検討事項>
1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間および世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。」 (同:P.129)
・・・引き続き働き方の多様化を含む経済社会の構造変化への対応や所得再分配機能の回復の観点からの個人所得課税の検討を進める。企業年金・個人年金等に関する税制上の取り扱いについて、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制の構築に取り組む。」
(令和3年度税制改正大綱(以下同様):P.2)
以下、年金分野に関連する項目について要旨を紹介する。
5.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
(1)経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税のあり方(同:P.15)
(個人所得課税における諸控除の見直し等について引き続き検討されていくことにつき述べられている。)
(2)私的年金に関する公平な税制のあり方(同:P.16)
(働き方やライフコースが多様化する中で、働き方によって有利不利が生じない税制の構築を目指すこととされている。特に年金や退職金の支払われ方の違いに対し中立であるような税制のありかたや、拠出、運用、年金給付の各段階における適正かつ公平な制度の検討を進めることに触れられている。)
(具体的内容)
「(2)確定拠出年金法施行令の改正を前提に、確定拠出年金制度について次の見直し等が行われた後も、現行の税制上の措置を適用する。
1.確定給付年金制度の加入者の企業型確定拠出年金の拠出限度額(現行:月額2.75万円)を、月額5.5万円から確定給付年金ごとの掛金相当額を控除した額とする。
2.確定給付年金制度の加入者の個人型確定拠出年金の拠出限度額(現行:月額1.2万円)を、月額5.5万円から確定給付年金ごとの掛金相当額及び企業型確定拠出年金の掛金額を控除した額(月額2万円を上限)とする。」(国税・地方税とも)
(3)退職所得の適正化
(給与を少なくする一方退職金を多くするなどの過度な税軽減を防ぐ趣旨で、一部取り扱いを変更。ただし令和4年からの予定)」(同:P.35)
「<第三 検討事項>
1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間および世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。」 (同:P.129)
なお、特別法人税の撤廃については、議論にならなかったようだ。また、NISAやその他の金融商品税制においては、手続き関係で一部変更はあるものの大きな改正はないようだ。
今回は、新型コロナの感染拡大への対応に関心が集中していて、年金関連税制の抜本的な対応というものはなかったが、課題は解決しているわけではない。大綱の最後の検討事項において常に第一に挙げられている通り、年金制度とそれに伴う税制上の優遇などの手当は、今後も活発に議論が進められる分野である。引き続き関心をもって見ていきたいところである。
今回は、新型コロナの感染拡大への対応に関心が集中していて、年金関連税制の抜本的な対応というものはなかったが、課題は解決しているわけではない。大綱の最後の検討事項において常に第一に挙げられている通り、年金制度とそれに伴う税制上の優遇などの手当は、今後も活発に議論が進められる分野である。引き続き関心をもって見ていきたいところである。
(2021年03月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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03-3512-1833
経歴
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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