2021年01月06日

コロナ禍に翻弄された1年と2021年の中国経済の見通し

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が中国武漢で広まっておよそ1年が経過した。これまでのコロナ禍との闘いを振り返ると(図表1)、昨冬(19年12月)の段階では名前も無く正体不明だった感染症の流行で中国社会は大混乱に陥った(新型コロナ混迷期)。そして習近平国家主席は20年1月20日、コロナ対策に全力を挙げるよう指示、1月23日には武漢を都市封鎖(ロックダウン)するなど防疫強化期に入った。2月中旬になると爆発的感染(オーバーシュート)がひとまず峠を越え、新規確認症例が1日当たり1000名を下回ってきたため、中国政府は「復工復産」を旗印とした経済活動再開期に入った。そして4月8日には武漢の都市封鎖を解除、5月下旬にはコロナ禍で遅れていた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の開催に漕ぎ着けた。
図表1:中国におけるCOVID-19の新規確認症例と経済運営の推移
全人代後は財政・金融両面での景気テコ入れ策が動き出し、COVID-19も散発的にクラスター(感染者集団)は発生したものの新規確認症例は多くても1日当たり100名余りと小振りに抑制できていたため、7月には映画館や国内団体旅行ツアーを再開、9月以降も「消費促進月」、「内需拡大策(自動車など)」、「インターネット+観光」などの施策を矢継ぎ早に打ち出して消費拡大を促した。さらに中国政府は「新型インフラ建設」に財政資金を投じ、次世代情報ネットワークを発展させてデータセンターの構築や新エネルギー車の普及を後押しし、新型コロナ後の経済発展を支える礎を築こうとしている。そして、上海市が23年までに2,700億元、重慶市が22年までに3,983億元、深圳市が25年までに4,119億元の行動計画を打ち出すなど地方政府も動き出し、それに呼応して民間企業もデジタル投資を加速している。こうして経済回復に向けた動きは本格化していった。

この間の経済成長率を見ると、新型コロナで混迷し防疫を強化した20年1-3月期には成長率が実質で前年比6.8%減まで落ち込み、統計を遡れる1992年以来初めてとなるマイナス成長を記録した。その後、経済活動の再開に舵を切り全人代が開催された4-6月期には同3.2%増まで回復し、経済回復の初期にあたる7-9月期には同4.9%増と2四半期連続で持ち直し、内需拡大の施策が矢継ぎ早に打ち出された10-12月期にはさらに成長率が加速する見込みである。そして、20年通期では前年比2%前後のプラス成長を確保できる見通しである。

それでは、来たる21年の中国経済はどうなるのだろうか。まず、COVID-19の現況を確認してみると、相変わらず中国各地では散発的にクラスターが発生しているものの、新規確認症例は50名を下回る状態をキープしており、経済回復の流れは途切れていない。しかし、中国では来たる21年2月12日に春節(旧正月)を迎える。昨冬の春節に際し武漢では、「春節を祝う会(日本の忘年会・新年会に相当)」が大規模なクラスターを発生させるとともに、3億人とも言われる農民工(出稼ぎ労働者)の帰省ラッシュがCOVID-19を中国全土に広げることとなってしまった。したがって、ワクチンの普及が間に合わない今冬は、春節を祝う会や帰省ラッシュなどで“三密”になるのを抑制せざるを得ず、経済回復よりも防疫管理を優先して行動制限をかけることになるだろう。そして、21年1-3月期の成長率は20年10-12月期と比べた前期比でマイナスに落ち込むだろう。ただし、世界が注目する前年比に関しては、比較対象となる前年同期が極端に低かったため、その反動で前年比14%前後の高い伸びを示すだろう。
図表2:社会融資総量残高の推移
その後、COVID-19と季節性インフルエンザのダブル感染が懸念される冬場をしのげば、世界で開発が進むワクチンが普及期に入ると見られるため、国民の恐怖心が薄れてリベンジ消費が盛り上がるだろう。また、新型インフラ建設が促す民間企業のデジタル投資も引き続き景気を押し上げる要因となる。しかし、コロナ禍に翻弄された20年は、経済危機を回避すべく財政・金融両面からのサポートで景気を底上げしたが、経済危機が峠を越えた21年4-6月期以降は新型コロナ対策で拡大した財政赤字を縮小し、膨らんだ過剰債務を縮小し、緩んだ金融規律を引き締める段階に入ることが経済成長の足かせとなる。したがって、中国経済は21年1-3月期をピークに減速し始め、21年通期の成長率は前年比7%前後に着地すると予想している。
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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

(2021年01月06日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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