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2020年12月22日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(2)-EIOPAの2020年報告書の概要報告-
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4|内部モデルにおけるVAの取扱
SCRを計算するために内部モデルが使用される場合、VAについて2つの異なる取扱が行われている。
いくつかの内部モデルでは、VAは次の12ヶ月間変化しない(固定VA)とみなされる。このアプローチは、SCR計算のための標準式におけるVAの取扱と同じである。
他の内部モデルでは、今後12ヶ月間のVAの変化の可能性を考慮(動的VA、ダイナミックVA)している。
VA計算の基礎となる市場指標のスプレッドが変化したり、VAへのリスク修正が変化するため、VAは時間とともに変化する。さらには、VA計算で適用される代表資産ポートフォリオの年次更新に反映される形で保険及び再保険会社の投資行動が変化することにより、VAは変化する。
VAが会社の資産のスプレッドに沿って動く場合、動的VAのモデリングは、保険会社の自己資本に対するスプレッドの拡大及び縮小の効果を減少させる。スプレッドの拡大によって生じる資産価値の減少は部分的に又は完全にVAの変化による技術的準備金の減少によって補填される。同様に、より狭いスプレッドによって生じる資産価値の増加が補填される。その結果、動的VAモデルが使用されている場合、固定VAが使用されている場合よりもスプレッド拡大のリスクに対する資本要件が、通常、より低くなる。
SCRを計算するために内部モデルが使用される場合、VAについて2つの異なる取扱が行われている。
いくつかの内部モデルでは、VAは次の12ヶ月間変化しない(固定VA)とみなされる。このアプローチは、SCR計算のための標準式におけるVAの取扱と同じである。
他の内部モデルでは、今後12ヶ月間のVAの変化の可能性を考慮(動的VA、ダイナミックVA)している。
VA計算の基礎となる市場指標のスプレッドが変化したり、VAへのリスク修正が変化するため、VAは時間とともに変化する。さらには、VA計算で適用される代表資産ポートフォリオの年次更新に反映される形で保険及び再保険会社の投資行動が変化することにより、VAは変化する。
VAが会社の資産のスプレッドに沿って動く場合、動的VAのモデリングは、保険会社の自己資本に対するスプレッドの拡大及び縮小の効果を減少させる。スプレッドの拡大によって生じる資産価値の減少は部分的に又は完全にVAの変化による技術的準備金の減少によって補填される。同様に、より狭いスプレッドによって生じる資産価値の増加が補填される。その結果、動的VAモデルが使用されている場合、固定VAが使用されている場合よりもスプレッド拡大のリスクに対する資本要件が、通常、より低くなる。
(2)動的VA適用の影響
以下の図表は、VAを適用した会社がVAを非適用とした場合のSCR比率への影響を示している。それらは、1) 標準式を使用した会社、2) 内部モデルを使用し、動的VAを使用しない会社、3) 内部モデルを使用し、動的VAを使用する会社、に分類される。これらの影響は、EEAレベル及び内部モデルの適用会社が存在している国レベルで表示されている。動的VAの影響は、それを使用した62の会社のうちの61の会社のQRT(定量報告テンプレート)データに基づいている。
EEA全体では、動的VA使用会社の影響は47%ポイントであるのに対して、動的VAを使用しない内部モデル会社では9%ポイント、標準式を使用した会社では12%ポイントとなっており、動的VAの使用がそれを使用する会社のSCR比率にかなりの影響を与えていることを示している。
動的VAの適用会社数が多い国々では、全ての会社ベースで、ドイツで32%ポイント、フランスで51%ポイント、オランダで73%ポイント、オーストリアで30%ポイントの影響となっている。
3つのサンプル(標準式使用会社、内部モデルを使用するが動的VAを使用しない会社及び内部モデルを使用して動的VAを使用する会社)の規模は、国によって異なる。例えば、内部モデルを使用し、動的VAを使用する会社は、関連する管轄区域の技術的準備金の3%から64%に相当している。
これらの結果は、異なる市場におけるサンプルの構成を反映しており、例えばドイツでは、標準式VAを使用する会社のサンプルは生命保険会社が支配しているが、動的VAを適用する内部モデル会社のサンプルは異なる設定であり、生命保険会社と損害保険会社の両方で構成されている。これにより、動的VAを使用している内部モデル会社の場合とは逆に、標準式適用会社の場合はVAを非適用としたときの影響が大きくなる。
下記の図表の右側は、生命保険及び生損保兼営会社の場合の影響を示している。
以下の図表は、VAを適用した会社がVAを非適用とした場合のSCR比率への影響を示している。それらは、1) 標準式を使用した会社、2) 内部モデルを使用し、動的VAを使用しない会社、3) 内部モデルを使用し、動的VAを使用する会社、に分類される。これらの影響は、EEAレベル及び内部モデルの適用会社が存在している国レベルで表示されている。動的VAの影響は、それを使用した62の会社のうちの61の会社のQRT(定量報告テンプレート)データに基づいている。
EEA全体では、動的VA使用会社の影響は47%ポイントであるのに対して、動的VAを使用しない内部モデル会社では9%ポイント、標準式を使用した会社では12%ポイントとなっており、動的VAの使用がそれを使用する会社のSCR比率にかなりの影響を与えていることを示している。
動的VAの適用会社数が多い国々では、全ての会社ベースで、ドイツで32%ポイント、フランスで51%ポイント、オランダで73%ポイント、オーストリアで30%ポイントの影響となっている。
3つのサンプル(標準式使用会社、内部モデルを使用するが動的VAを使用しない会社及び内部モデルを使用して動的VAを使用する会社)の規模は、国によって異なる。例えば、内部モデルを使用し、動的VAを使用する会社は、関連する管轄区域の技術的準備金の3%から64%に相当している。
これらの結果は、異なる市場におけるサンプルの構成を反映しており、例えばドイツでは、標準式VAを使用する会社のサンプルは生命保険会社が支配しているが、動的VAを適用する内部モデル会社のサンプルは異なる設定であり、生命保険会社と損害保険会社の両方で構成されている。これにより、動的VAを使用している内部モデル会社の場合とは逆に、標準式適用会社の場合はVAを非適用としたときの影響が大きくなる。
下記の図表の右側は、生命保険及び生損保兼営会社の場合の影響を示している。
3―まとめ
以上、今回のレポートでは、EIOPAの報告書の第3のセクションから、VAの適用状況について、その国別の適用会社数やSCR比率への影響等を報告してきた。
VAは多くの国で、生命保険・損害保険会社を問わず、幅広く使用されている。そのため、現在のソルベンシーIIのレビューにおけるVAの見直しについては、保険業界等の利害関係者から強い関心が持たれて、多くの意見等が寄せられてきた。
次回の3回目のレポートでは、EIOPAの報告書の第3のセクションから、TTP(技術的準備金に関する移行措置)とTRFR(リスクフリー金利に関する移行措置)という移行措置の適用状況について、その国別の適用会社数やSCR比率への影響等を報告する。
VAは多くの国で、生命保険・損害保険会社を問わず、幅広く使用されている。そのため、現在のソルベンシーIIのレビューにおけるVAの見直しについては、保険業界等の利害関係者から強い関心が持たれて、多くの意見等が寄せられてきた。
次回の3回目のレポートでは、EIOPAの報告書の第3のセクションから、TTP(技術的準備金に関する移行措置)とTRFR(リスクフリー金利に関する移行措置)という移行措置の適用状況について、その国別の適用会社数やSCR比率への影響等を報告する。
(2020年12月22日「保険・年金フォーカス」)
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