2020年12月18日

男女、年代、地域別、年賀状を出した人の割合(2020)

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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1――はじめに

年末年始の日本の恒例行事に年賀状による新年の挨拶があるが、近年は年賀状離れが伝えられている。日本郵便によると、2021年用の年賀ハガキの発行部数は19億4198万枚で、2004年用以降で最も少ないことが報告されている1。ではこうした状況の中で、どういった人が年賀状を出していて、どういった人が年賀状を出さない傾向があるのだろうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所が全国の被用者を対象に行った独自の調査から、男女別、年代別、地域別に、2020年用の年賀状を出した人の割合を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、男女別では女性の方が、地域別では中部地方や近畿地方在住者が年賀状を出した人の割合が大きい傾向が見られた。また、年代別では年代が高いほど年賀状を出す人の割合が大きくなっていく傾向が確認された。
 
 
1 朝日新聞DIGITAL(2020/10/29) https://www.asahi.com/articles/ASNBY36QZNBYULFA001.html#:~:text=2021年用の年賀,過去最大となった。(2020/12/15アクセス)
 

2――調査の概要

2――調査の概要

本調査は、ニッセイ基礎研究所が全国の15~64歳の被用者2を対象3に実施したインターネット調査である4。調査回答は、全国 11 地区の性別、年齢の分布を国勢調査の分布に合わせて収集された。回答数は 6,485 件。そのうち、一定の基準に基いて不正確と考えられる回答を除いた、5,594件を用いて分析を行った。調査項目には、年齢や性別、居住地域の他、2020年の年賀状を出したかどうか、という質問が含まれている。
 
2 会社などに雇用されている人、もしくは公務員
3 株式会社クロスマーケティングのモニター会員
4 2020年被用者の働き方と健康に関する調査
 

3――男女別年賀状を出した人の割合

3――男女別年賀状を出した人の割合

まず、回答者全体では、2020年の年賀ハガキを出した人の割合は52.4%、ハガキ以外の方法で出した人は5.1%、喪中の人が6.5%、出さなかった人は、36.0%であった。男女別に見ると、年賀ハガキを出した人の割合は、男性は51.8%で、女性は53.2%であり(図1)、年賀ハガキを出した人の割合について、男女別の比較では、少し女性の方が割合が大きい傾向があるが、その差は大きくはないようである5
図1. 男女別年賀状を出した人の割合
 
5 z検定の結果、男女の割合に統計的に有意な差は確認されなかった。
 

4――年代別年賀状を出した人の割合

4――年代別年賀状を出した人の割合

では、年代別ではどうだろうか。年代別に年賀状を出した人の割合を示したのが図2である。まず、20代以下(15歳~29歳)の回答者で、年賀ハガキを出した人の割合は、31.7%であった。そして、年賀ハガキを出した人の割合は、30代では45.7%、40代では56.5%、50代では63.0%、60代では68.1%であった。20代以下で年賀状を出した人の割合は、50代、60代に比べて半分以下になっており、年賀ハガキを出した人の割合は、年代が上がるにつれて大きくなっていく傾向が見られた。
図2. 年代別年賀状を出した人の割合

5――地域別年賀状を出した人の割合

5――地域別年賀状を出した人の割合

それでは、年賀状を出した人の割合は、地域別に違いは見られるのだろうか。それを確かめるために、全国7地域別の年賀状を出した人の割合を示したのが図3である。
図3. 地域別年賀状を出した人の割合
地域別で、最も年賀ハガキを出した人の割合が大きかったのは、中部地方で55.7%であった。そして、次に年賀ハガキを出した人の割合が大きかったのは、近畿地方で55.3%であった。一方、最も年賀ハガキを出した人の割合が小さかったのは、九州・沖縄地方で46.8%で、その次に年賀ハガキを出した人の割合が小さかったのは、関東地方で50.7%であった。年賀ハガキを出した人の割合が最も大きかった中部地区と最も小さかった九州・沖縄地区の割合を比較すると、その差は8.9%であり、地域間で年賀状を出した人の割合に違いがある可能性があること6が確認された。
 
6z検定の結果、中部地方と九州・沖縄地方の割合には統計的に有意な差が見られた(p<0.01)。
 

6――プロビットモデルの推計結果

6――プロビットモデルの推計結果

最後に、性別、年代、地域の違いと、年賀ハガキの利用率との関連を確認するために、年賀ハガキを出した場合に1、それ以外の場合に0を取るダミー変数を被説明変数とし、性別、年代、地域を説明変数として、プロビットモデルの推計を行った。喪中の人は除いて推計を行っている。その結果は、表1の通りである。
表1. 年賀ハガキを出したかどうかと性別、年齢、地域の関係
このプロビットモデルの推計結果からは、2020年の年賀ハガキにおいて、地域や年代の影響を一定にした上では、男性よりも女性の方が年賀ハガキを出した傾向あることが確認された。また、年代や性別の影響を一定にした上でも、関東地方に比べて、中部地方や近畿地方在住者の方が年賀ハガキを出した傾向があること、性別や地域の影響を一定にした上でも、年代が高いほど年賀ハガキを出した傾向があることが確認された。
 

7――おわりに

7――おわりに

この分析では、性別、年代、地域によって、年賀状の利用率に違いがある可能性が示された。具体的に見ると、2020年においては、男女別では女性の方が、地域別では中部地方や近畿地方の在住者が、そして年代別では年代が高い人ほど年賀ハガキの利用率が高い傾向があったことが示された。中でも年代は年賀ハガキを出すかどうかと顕著な関係が見られた。この要因には、本調査の対象である、被用者の15歳から64歳の間では年代が上がるにつれて社会的なつながりが広がっていく傾向がある可能性に加え、世代による年賀状への意識の違いも考えられるだろう。そして、この世代による年賀状への意識の違いは、近年の年賀状離れが進む要因の1つと考えられるかもしれない。

(2020年12月18日「基礎研レター」)

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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

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