- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 経済予測・経済見通し >
- 2020~2022年度経済見通し-20年7-9月期GDP2次速報後改定
2020~2022年度経済見通し-20年7-9月期GDP2次速報後改定
経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
このレポートの関連カテゴリ
1. 2020年7-9月期の実質GDPは前期比年率22.9%へ上方修正
2020年7-9月期は内外の経済活動の再開を受けて、大幅なプラス成長となったが、過去最大のマイナス成長となった4-6月期の落ち込みの6割弱を取り戻したにすぎない。また、日本経済は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前に、消費税率引き上げの影響で落ち込んでいた。直近のピークである2019年7-9月期と比較すると、2020年7-9月期の実質GDPは▲5.7%、民間消費は▲7.2%低い水準にとどまっている。経済活動の正常化に向けた足取りは重い。
2020年7-9月期の2次速報と同時に、国民経済計算の基準改定(2011年基準→2015年基準)が実施された。今回の基準改定では、2015年の「産業連関表」、「国勢調査」等の結果を反映させるとともに、国際基準への対応や経済活動の適切な把握に向けた推計方法の改善が実施された。
具体的には、(1)改装・改修(リフォーム・リニューアル)の総固定資本形成への計上、(2)分譲住宅販売マージン・非住宅不動産の売買仲介手数料の計上、(3)娯楽作品原本の資本化・著作権等サービスの記録、(4)住宅宿泊事業の反映、などである。
基準改定後の名目GDPの水準は1994年度以降の平均で7.7兆円(GDP比1.5%)、直近の2019年度は7.2兆円(GDP比1.3%)の上方改定となった(2019年度の名目GDPは559.7兆円)。改装・改修(リフォーム・リニューアル工事)、分譲住宅販売マージン・非住宅不動産の売買仲介手数料の計上が名目GDPを大きく押し上げたとみられる。需要項目別には、住宅投資(4.5兆円)、設備投資(3.6兆円)の上方改定幅が大きく、名目GDPに占める割合は住宅投資が旧基準の3.1%から3.8%へ、設備投資が旧基準の15.9%から16.4%へと高まった(いずれも2019年度の数値)。
財務省が12月1日に公表した法人企業統計によると、2020年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く)の経常利益は前年比▲28.4%と6四半期連続で減少したが、減少幅は4-6月期の同▲46.6%から縮小し、季節調整済・前期比では33.7%と6四半期ぶりに増加した。経常利益(季節調整値)は14.5兆円とピーク時(2018年4-6月期の24.5兆円)の6割弱の水準にとどまっているが、緊急事態宣言の解除を受けた経済活動の再開によって最悪期は脱したとみてよいだろう。

個人消費は2020年5月を底に持ち直しているが、引き続きコロナ前の水準を下回っている。「家計調査(総務省統計局)」の実質消費支出の動きを形態別に見ると、財については巣ごもり需要の拡大や特別定額給付金の効果からすでにコロナ前の2019年平均の水準を上回っているのに対し、サービスは緊急事態宣言時の落ち込みが非常に大きかったことに加え、その後の戻りも弱い。特に、対面型サービス消費(一般外食、交通、宿泊料、パック旅行費、入場・観覧・ゲーム代)は、2020年4、5月にコロナ前の2割程度にまで落ち込んだ後、直近(2020年10月)でも6割程度の水準にとどまっている。
2. 実質成長率は2020年度▲5.2%、2021年度3.4%、2022年度1.7%
輸出は好調を維持しているが、欧米で再び新型コロナウイルスの感染者数が増加していることを受けて経済活動を制限する動きが広がっていることもあり、先行きについては減速が避けられないだろう。その一方で、7-9月期に前期比▲8.8%の大幅減少となった輸入は、10-12月期はその反動で高めの伸びとなる可能性が高い。10-12月期の外需寄与度は7-9月期の前期比2.7%(年率11.5%)からプラス幅が大きく縮小することが予想される。
また、7-9月期の大幅プラス成長の主因となった民間消費は、ペントアップ需要の一巡などから財の消費が伸び悩むことに加え、Go To キャンペーン事業の一時停止によってサービス消費の改善が足踏みとなることから、10-12月期は伸びが低下するだろう。
景気底打ち後も減少が続いている設備投資は、2020年10-12月期に3四半期ぶりに増加に転じるものの、企業収益の悪化や先行き不透明感の高さを背景に持ち直しのペースは当面緩やかにとどまる可能性が高い。
実質GDPは、2020年7-9月期の前期比年率22.9%から10-12月期に同4.2%へと伸びが大きく低下した後、2021年入り後も減速するが、経済正常化の過程にあることから当面は潜在成長率を明確に上回る成長が続くことが予想される。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急事態宣言が再発令されるようなことがあれば、経済成長率は再びマイナスとなり、景気の失速は不可避となるだろう。

実質GDPの水準がコロナ前(2019年10-12月期)を上回るのは2022年7-9月期となるが、消費税率引き上げ前の直近のピーク(2019年7-9月期)に戻るのは2023年度までずれ込むだろう。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2020年8月から3ヵ月連続で下落しており、10月には2019年10月の消費税率引き上げと幼児教育無償化の影響がほぼ一巡したことから、前年比▲0.7%まで下落幅が拡大した。

一方、予測期間を通じて円安、原油高傾向が続くことを想定しており、輸入物価の上昇が国内物価に波及することが物価の押し上げ要因となる。コアCPI上昇率は2020年4-6月期から2021年4-6月期までマイナスが続いた後、2021年7-9月期に6四半期ぶりのプラスとなり、その後は概ねゼロ%台半ばで推移するだろう。
年度ベースのコアCPI上昇率は、2020年度が前年比▲0.6%、2021年度が同0.3%、2022年度が同0.5%と予想する。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1836
(2020年12月08日「Weekly エコノミスト・レター」)
ソーシャルメディア
新着記事
-
2021年04月15日
さくらレポート(2021年4月)~多くの地域で持ち直しているとの認識が維持されるも、一部地域は景気判断を引き下げ -
2021年04月15日
国民負担率は過去最高-高齢化を背景に、今後もさらに上昇するか? -
2021年04月15日
民間銀行が発行する紙幣 -
2021年04月15日
ネット病院の急増(中国)-新型コロナの経験をどう活かすのか。 -
2021年04月15日
高まる米国の連邦最低賃金引上げ機運―バイデン大統領、民主党が09年以来の最低賃金引上げを模索
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2021年04月12日
News Release
-
2021年04月02日
News Release
-
2021年01月21日
News Release
【2020~2022年度経済見通し-20年7-9月期GDP2次速報後改定】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
2020~2022年度経済見通し-20年7-9月期GDP2次速報後改定のレポート Topへ