2020年11月18日

貿易統計20年10月-輸出はコロナ前の水準をほぼ回復

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.輸出はほぼ前年並みの水準に

財務省が11月18日に公表した貿易統計によると、20年10月の貿易収支は8,729億円の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:2,519億円、当社予想は4,302億円)を大きく上回る結果となった。輸出が前年比▲0.2%(9月:同▲4.9%)と減少幅が縮小する一方、輸入が前年比▲13.3%(9月:同▲17.4%)と引き続き前年比二桁の減少となったため、貿易収支は前年に比べ8,617億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲1.6%(9月:同▲7.7%)、輸出価格が前年比1.5%(9月:同3.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲5.7%(9月:同▲8.5%)、輸入価格が前年比▲8.0%(9月:同▲9.8%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は3,143億円と4ヵ月連続の黒字となったが、9月の4,400億円から黒字幅が縮小した。輸出が前月比2.6%と5ヵ月連続で増加したが、輸入が前月比5.1%と輸出の伸びを上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 10月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=44.6ドル(当研究所による試算値)となり、9月の46.3ドルから若干低下した。原油価格(ドバイ)は40ドル台前半で推移しており、通関ベースの原油価格は、11月以降も40ドル台半ばとなる可能性が高い。

 

2.輸出はコロナ前の水準をほぼ回復

20年10月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比0.8%(9月:同▲6.1%)、EU向けが前年比▲10.9%(9月:同▲23.3%)、アジア向けが前年比2.8%(9月:同▲3.7%)、うち中国向けが前年比15.6%(9月:同15.8%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 20年10月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比6.1%(9月:同12.2%)、EU向けが前月比13.4%(9月:同2.7%)、アジア向けが前月比6.5%(9月:同2.6%)、うち中国向けが前月比5.8%(9月:同1.0%)、全体では前月比4.9%(9月:同2.3%)となった。

ロックダウン解除後の海外経済の持ち直しを背景に輸出は着実な回復を続けている。特に、米国向けの自動車、中国向けの半導体製造装置、半導体電子部品などが輸出の牽引役となっている。20年10月の輸出を新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前の20年2月と比較すると、金額ベース(財務省による季節調整値)では97.8%、数量ベース(当研究所による季節調整値)では99.1%となり、コロナ前の水準をほぼ回復した。

ただし、ここにきて欧米で新型コロナウイルスの感染者数が拡大しており、欧州では再びロックダウンの動きが広がっている。先行きの輸出は回復ペースが鈍化する可能性が高いだろう。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2020年11月18日「経済・金融フラッシュ」)

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