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コロナ禍でも業績が上振れしそうな企業

金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾
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1――はじめに
2――期初予想を公表した企業は半分に満たない
3――第1四半期時点の予想修正は重要情報
期初予想を公表してから僅か3ヶ月しか経過していない上、年度末まで残り9ヶ月間あることを考えれば当然だろう。逆に言えば、「残り9ヶ月あるのに見通しを修正した」ということでもある。
実は、1Q決算時点での業績予想の修正は重要な意味を持つ。というのも、15~19年度の1Q決算時点で業績予想を上方修正した企業の53%が中間決算時点(約3ヶ月後)に再び見通しを引き上げ“2段階アップ”となったからだ(図表2右)。
もし1Q決算時点で見通しを引き上げたにもかかわらず中間決算時点で一転して下方修正となれば、上場企業の経営者としては格好がつかない。そればかりか、場合によっては経営手腕に疑問を突き付けられかねない。経営者の心理をこのように考えると、1Q決算時点での上方修正は残り9ヶ月への“自信の表れ”といえそうだ。
一方、1Q決算時点で下方修正した企業のうち34%は中間決算時点でも見通しを引き下げ“2段階ダウン”となった。残り9ヶ月での挽回を期して1Q時点では下方修正幅を限定的にしたものの、思ったほど挽回ならず中間決算時点で断念したのだろう。
株式市場では、業績不振が囁かれる企業が見通しを引き下げると「悪材料出尽くし」などとしてその企業の株が買われることもある。しかし、実際は3社のうち1社は業績見通しがさらに悪化したことから、悪材料が本当に出尽くしたのか慎重な見極めが必要だ。
4――上方修正の常連企業
当然、企業を取り巻くビジネス環境も先行き不透明感が強い。今月下旬から本格化する1Q決算時点で業績見通しを引き上げる企業は例年以上に少ないかもしれない。仮に1Q時点で上方修正する企業があれば、図表2で示したように2段階アップの可能性が高いだけでなく、中間決算時点で下方修正する可能性が低いので業績面での不安は少ないといえるだろう。
一方、企業数が多く投資先選定の参考としてより現実的なのは、1Q時点では見通しを据え置くものの、中間決算時点で上方修正する企業だろう(図表2左で95%、右で21%に該当する企業)。こうした企業の特徴を掴むため、過去5年連続で「1Q予想=据え置き、中間予想=上方修正」であった“常連企業”を探したところ、図表3の5社が該当した。
大手ゼネコンはこれまでオリンピック特需に支えられてきた面がある。ただ、オリンピック対応を優先するために建築現場の人員不足や資材不足で“順番待ち”になっていた案件は多いと聞く。
常連企業には地方銀行も目立つ。銀行は期初に貸し倒れ費用を多めに見積もるが、通常はそれほど必要にならない(見積もったほどの貸し倒れが発生しない)ので、結果的に業績が上振れしやすい。20年度はコロナ禍で例年よりも倒産が増えるとみられるが、一方でコロナ支援の保証付き融資も増えており、その綱引きとなりそうだ。
無論、これらの企業が20年度も中間決算時点で上方修正する確証はないが、投資先企業の一次スクリーニングとしては活用できるだろう。
また、世界的に社会構造が変化しつつあることを考えれば、去年までのデータでスクリーニングした上記企業の他にも、リモート関連や巣ごもり関連などコロナ禍が追い風になる業態もある。新たな観点からの企業の業績動向も注視したい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2020年07月24日「基礎研レポート」)

03-3512-1852
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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