2020年05月01日

プラチナはとうとう金の半値以下に~コロナショックがダメ押し

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. プラチナ価格が金価格の半分以下に落ち込んでいる。4月末のプラチナ価格は1オンス786ドルと金価格(1688ドル)の0.47倍に低下している。もともと両者の差は拡大傾向にあり 2月上旬のプラチナ価格は金の0.6倍強まで下がっていたが、下旬には0.5倍を割り込んだ。新型コロナの拡大に伴って、安全資産である金の価格が上昇した一方で、プラチナ価格は「主用途であるディーゼル車向け需要の減少」、「南アランドの下落」を受けて急落した。ちなみに、リーマンショックの際にもプラチナ価格は急落している。
     
  2. プラチナも金も貴金属で実物資産であるという点では共通しているが、世界の景気変動に対する価格の反応は大きく異なっている。世界経済が悪化する局面において金は上昇しやすい一方で、プラチナは下落しやすい。従って、危機への備えとして金は有効だが、プラチナの有効性は低いということになる。また、資産運用における分散効果やヘッジ効果についても同様だ。金は株安局面で上昇することで、株安による損失を補填する効果が期待できるが、株価との連動性が強いプラチナにはそうした効果は期待できない。
     
  3. 今後、新型コロナが収束に向かうのであれば、自動車生産の回復に伴ってプラチナ価格も持ち直し、金価格の半値を一旦回復することも視野に入る。ただし、プラチナには新型コロナ拡大の前から「ディーゼル車離れ」という構造的な需要減少圧力が存在していた点には注意が必要だ。排ガス不正問題を背景として、ディーゼル車の欧州市場でのシェアは急低下が続いてきたため、新型コロナが収束した後も、プラチナ価格にはディーゼル車離れという重荷が残り続けるだろう。将来的に、新たな大口の用途が生まれることで大化けする可能性を否定することはできないが、その実現が見えない段階では、プラチナ価格が大きく持ち直し、金との価格差を大きく埋める展開は想定しづらい。
プラチナと金の国際価格
■目次

1.トピック:プラチナはとうとう金の半値以下に
  ・プラチナ価格が急落した理由
  ・プラチナと金は兄弟だが性格が違う
  ・今後の行方:コロナ収束後も構造的な重荷は残る
2.日銀金融政策(4月):連月で追加緩和決定、資金繰り対策強化
  ・(日銀)追加緩和
  ・評価と今後の予想
3.金融市場(4月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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