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コラム
2020年03月04日
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(気圧)
気圧の単位は、例えば「945hPa(ヘクトパスカル)」という。その昔は「945mbar(ミリバール)」といっていたが、国際単位系に合わせるために、1992年12月1日からヘクトパスカルに変わった。とはいえ、例えば「長さの表示がヤードからメートルに変わった」というような、同じ長さを表すのに数値が変わってくるような実質的なものではなく、単位の呼び方だけが変わったものである1。
ヘクトパスカルという単語は、もともと圧力の単位「パスカル」(単位面積当たりに働く力、次元は、N/m2 =㎏m-1s-2)」だが、それに100倍する接頭語ヘクト(面積でヘクタールというのと同じ接頭語である。)をつけて、取り扱いやすい数値が出てくるようにしたものである。一方、昔から使われていたミリバールはバールに1000分の1を表す接頭語ミリをつけたものである。
地球大気については、ISO(国際標準化機構)によって作成され、国際民間航空機関(ICAO)で採用されている「標準大気」というものがある。これは地球大気の圧力、温度、密度、粘性が高度によってどう変わるかを表したモデルである。このモデルでは
地上(高度0m)では、気圧1013.25hPa、気温15.0℃、
高度11㎞(対流圏)までの気温変化率 -6.5℃/㎞
とされていて、それと高度によってどう変化するかを表す算式からなっている(密度と粘性についてもあるがここでは割愛)。こうしたデータは主に航空関係のデータ前提や表示に使われている。
天気予報でよく聞く単位ヘクトパスカルから紹介したが、一方でまさに「1気圧」という単位もある。これとヘクトパスカルの関係は1気圧=1013.25ヘクトパスカルであり、つまり高度0mの気圧が1気圧である。
気圧といえば、天気予報には「高気圧」や「低気圧」が登場するが、これは上記の標準値と比べて言っているのではなく、周りの気圧と比べて高ければ高気圧だし、低ければ低気圧という。だから1030hPaとかの低気圧も普通にある。逆に1000hPa未満の高気圧もまれにあるとのこと。さらにいえば閉じた等圧線で囲まれたところである。ただ単に周りより低い気圧のところは「気圧の谷」と呼んでおり、よく耳にすることだろう。逆の「気圧の尾根」も気象庁の用語にあるが、あまり聞かない。尾根では多分天気はいいので、さほど注意喚起の必要がないからだろうか。
さらに見ていくと、低気圧や高気圧にはその位置や性質によって、いろいろ名前がついていて、実際天気予報でもよく解説に使われている。高気圧なら、「太平洋高気圧」とか「シベリア高気圧」、「移動性高気圧」などである。低気圧のほうは、「温帯低気圧」、「熱帯低気圧」、「南岸低気圧」など。なお、「爆弾低気圧」という言葉も最近になって聞くことが多くなった気がするが、これは定義としては「急速に発達する低気圧」(これに数値基準をいれたものが定義)であり、インパクトある語なのだが、逆に「爆弾」というのが不適切だということで、使用を控える語とされており、少なくとも気象庁からの発表の際は、使用しないことになっている2。
あとで触れる予定の「気温」については、毎日天気予報と突き合わせて経験していくと、「今日は何度くらいだ」と、わかってくるような気もするが、気圧のほうは「今日は1050hPaくらいかな、圧力が高いな(?)」とは、なかなか感じられないようだ。そのため、台風がどれだけ強いのかについては「中心の気圧は945ヘクトパスカル、最大風速は・・・」などと気圧の数値を聞いて、今度の台風はそんなにすごいのか!と思うくらいしかなさそうである。
しかし、数値的にはわからなくても、あるいは言葉では表現できなくとも、体ではわかっているかもしれない、と思える経験談はあるようだ。「雨が降ると頭痛がする(逆に、頭痛がすると天気が悪くなる)」「季節の変わり目にめまいがする」と言って低気圧や台風が来るのを予感できる人も多いと聞く。天気予報は、傘が必要かどうかというだけでなく、そうした体の不調の対策を立てることにも役に立ちそうだ。
このように、天気が悪くなる(ほぼ同義だが、気圧が低くなる)と、頭痛、神経痛、腰痛、難聴など様々な症状がでてくることは、経験的にはわかっており、「気象痛」という言葉もある。しかし学問的にはまだまだ未開拓の領域が多いという。気象が生物に与える影響を研究する「生気象学」と称する学問分野もあるらしい。ここまで広げると天気だけでなく、春先の花粉症とか夏の熱中症なども対象になってくる。あるいは人間に対する影響に限らないとまでなってきそうだ。それはそれで大いに興味あるところだが、ここは単位の話に戻ることにする。
そうした健康への影響はありうるとしても、気圧そのものが低すぎたり高すぎたりすることによる直接の自然災害はなさそうだ。しかし、気圧が場所によって違うことによって生じる(温度とかも影響するが)「風」による被害が、直接の影響であろう。というわけで次回は「風速と台風」の予定。
1 ちなみに米国ではいまだにミリバールを使っているらしい(数値的には同じだが)。米国ではマイルやらヤード、フィート、ポンド、気温Fなどを今も用いており、国際単位系など全く気にしないようだ。まったく関係ない話だが、会計基準も米国は国際会計基準を採用しておらず、米国独自の会計基準である。米国はそういう文化なのだろう。
2 気象庁ホームページ https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html
気圧の単位は、例えば「945hPa(ヘクトパスカル)」という。その昔は「945mbar(ミリバール)」といっていたが、国際単位系に合わせるために、1992年12月1日からヘクトパスカルに変わった。とはいえ、例えば「長さの表示がヤードからメートルに変わった」というような、同じ長さを表すのに数値が変わってくるような実質的なものではなく、単位の呼び方だけが変わったものである1。
ヘクトパスカルという単語は、もともと圧力の単位「パスカル」(単位面積当たりに働く力、次元は、N/m2 =㎏m-1s-2)」だが、それに100倍する接頭語ヘクト(面積でヘクタールというのと同じ接頭語である。)をつけて、取り扱いやすい数値が出てくるようにしたものである。一方、昔から使われていたミリバールはバールに1000分の1を表す接頭語ミリをつけたものである。
地球大気については、ISO(国際標準化機構)によって作成され、国際民間航空機関(ICAO)で採用されている「標準大気」というものがある。これは地球大気の圧力、温度、密度、粘性が高度によってどう変わるかを表したモデルである。このモデルでは
地上(高度0m)では、気圧1013.25hPa、気温15.0℃、
高度11㎞(対流圏)までの気温変化率 -6.5℃/㎞
とされていて、それと高度によってどう変化するかを表す算式からなっている(密度と粘性についてもあるがここでは割愛)。こうしたデータは主に航空関係のデータ前提や表示に使われている。
天気予報でよく聞く単位ヘクトパスカルから紹介したが、一方でまさに「1気圧」という単位もある。これとヘクトパスカルの関係は1気圧=1013.25ヘクトパスカルであり、つまり高度0mの気圧が1気圧である。
気圧といえば、天気予報には「高気圧」や「低気圧」が登場するが、これは上記の標準値と比べて言っているのではなく、周りの気圧と比べて高ければ高気圧だし、低ければ低気圧という。だから1030hPaとかの低気圧も普通にある。逆に1000hPa未満の高気圧もまれにあるとのこと。さらにいえば閉じた等圧線で囲まれたところである。ただ単に周りより低い気圧のところは「気圧の谷」と呼んでおり、よく耳にすることだろう。逆の「気圧の尾根」も気象庁の用語にあるが、あまり聞かない。尾根では多分天気はいいので、さほど注意喚起の必要がないからだろうか。
さらに見ていくと、低気圧や高気圧にはその位置や性質によって、いろいろ名前がついていて、実際天気予報でもよく解説に使われている。高気圧なら、「太平洋高気圧」とか「シベリア高気圧」、「移動性高気圧」などである。低気圧のほうは、「温帯低気圧」、「熱帯低気圧」、「南岸低気圧」など。なお、「爆弾低気圧」という言葉も最近になって聞くことが多くなった気がするが、これは定義としては「急速に発達する低気圧」(これに数値基準をいれたものが定義)であり、インパクトある語なのだが、逆に「爆弾」というのが不適切だということで、使用を控える語とされており、少なくとも気象庁からの発表の際は、使用しないことになっている2。
あとで触れる予定の「気温」については、毎日天気予報と突き合わせて経験していくと、「今日は何度くらいだ」と、わかってくるような気もするが、気圧のほうは「今日は1050hPaくらいかな、圧力が高いな(?)」とは、なかなか感じられないようだ。そのため、台風がどれだけ強いのかについては「中心の気圧は945ヘクトパスカル、最大風速は・・・」などと気圧の数値を聞いて、今度の台風はそんなにすごいのか!と思うくらいしかなさそうである。
しかし、数値的にはわからなくても、あるいは言葉では表現できなくとも、体ではわかっているかもしれない、と思える経験談はあるようだ。「雨が降ると頭痛がする(逆に、頭痛がすると天気が悪くなる)」「季節の変わり目にめまいがする」と言って低気圧や台風が来るのを予感できる人も多いと聞く。天気予報は、傘が必要かどうかというだけでなく、そうした体の不調の対策を立てることにも役に立ちそうだ。
このように、天気が悪くなる(ほぼ同義だが、気圧が低くなる)と、頭痛、神経痛、腰痛、難聴など様々な症状がでてくることは、経験的にはわかっており、「気象痛」という言葉もある。しかし学問的にはまだまだ未開拓の領域が多いという。気象が生物に与える影響を研究する「生気象学」と称する学問分野もあるらしい。ここまで広げると天気だけでなく、春先の花粉症とか夏の熱中症なども対象になってくる。あるいは人間に対する影響に限らないとまでなってきそうだ。それはそれで大いに興味あるところだが、ここは単位の話に戻ることにする。
そうした健康への影響はありうるとしても、気圧そのものが低すぎたり高すぎたりすることによる直接の自然災害はなさそうだ。しかし、気圧が場所によって違うことによって生じる(温度とかも影響するが)「風」による被害が、直接の影響であろう。というわけで次回は「風速と台風」の予定。
1 ちなみに米国ではいまだにミリバールを使っているらしい(数値的には同じだが)。米国ではマイルやらヤード、フィート、ポンド、気温Fなどを今も用いており、国際単位系など全く気にしないようだ。まったく関係ない話だが、会計基準も米国は国際会計基準を採用しておらず、米国独自の会計基準である。米国はそういう文化なのだろう。
2 気象庁ホームページ https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html
(2020年03月04日「研究員の眼」)

03-3512-1833
経歴
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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【天気予報にでてくる単位(2)-気圧】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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