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中間決算から探る 銘柄選びのヒント-利益の進捗率に注目

金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾
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1――はじめに
このような状況では、(5G関連など貿易摩擦とは別次元で成長が期待される分野は別として)国内外の企業が設備投資や雇用を積極的に増やすなど前向きの状況にはなりにくい。消費者マインドも大きく改善するとは考えにくく、景気や企業業績のV字回復などはなかなか望めないのではないだろうか。期待先行で世界中の株が買い上げられたが、市場が現実を意識して来春までに日経平均が2万2,000円程度まで下落する可能性は十分にあると見ている。
2――日本企業は慎重姿勢を堅持
中間決算時点における通期の経常利益予想の変化を過去10年平均(例年)と比較すると、上方修正した企業が少ないのが特徴だ。例年は36%あった上方修正が今年度は僅か13%と極端に少なく、その分、見通しを据え置いた企業が例年の約1.4倍にあたる53%で過半を占めている。また、下方修正が例年より多いのも貿易摩擦の影響だろう。
市場で先行して広がった米中対立の緩和期待や景気底入れ期待が本物かどうかはいずれ明らかになるが、少なくとも現時点では企業は慎重姿勢を崩していない。肝心なのは2021年3月期(来期)だろう。市場では2020年3月期の業績が冴えないことは織り込み済みだ。最近の株価上昇は来年度以降の業績改善を先取りしたものと考えられるだけに、もし来期の業績改善幅が市場の期待に届かず限定的となれば、株価は一時的に調整を余儀なくされるだろう。
3――銘柄選びの拠り所、利益の「進捗率」
利益の進捗率とは「1年間の予想利益に対して上半期の実績が何%に相当するか」を表すので、50%が目安になる。ここでは業績が好調な銘柄を選ぶことが目的なので少しハードルを上げて「上半期の経常利益進捗率が60%以上」であることを第一条件とした。
そのうえで、近年は業績に勢い(業績モメンタム)がある銘柄が買われやすいこと、さらに企業によってはビジネスに季節性があることを考慮するため、「進捗率の前年同期比」で細分化した。
2016~2018年度の3年平均では、「今期の進捗率が60%以上、かつ進捗率が前年より10%以上改善した企業」は翌年1月末までの株式リターン(配当込み投資収益率)が東証株価指数(配当込みTOPIX)を平均で2.3%上回った。
逆に、「経常利益進捗率が60%以上であっても、進捗率が前年より10%以上悪化した企業」の株式リターンはTOPIXを平均で2.7%下回った。また、経常利益進捗率が60%以上でも、進捗率が前年並み(±10%以内)の企業は、年明け以降のリターンがTOPIXを下回る結果となった。
新年に入ると市場が来期業績を意識し始めることも多い。今期利益の進捗率が高くかつ前年からの改善度も高い企業は、来期への期待も高まると考えられる。逆に、今期の進捗率が60%を超えていても前年より低下した企業は、業績のピークアウトが意識されやすいのかもしれない。
4――「進捗率が高く前年度比改善幅の大きい企業」
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年11月20日「基礎研レポート」)

03-3512-1852
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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