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「情報銀行」は日本の挽回策となるのか
基礎研REPORT(冊子版)11月号[vol.272]
中村 洋介
1―「情報銀行」とは
足もと、情報銀行事業に参入を検討する企業も増えている[図表2]。
2―情報銀行にかかる期待
3―実現に向けた課題
情報銀行がビジネスモデルとして成立するのか否かは重要な論点だ。データ流通・利活用を安全・安心に行う仕組みとしては理想的なのだろうが、民間事業者が運営するのであれば、収益性等の観点から持続性のあるモデルでなければ定着しない。仮にその事業単体で収益が上がらないにしても、それを補って余りある他の事業とのシナジー効果が必要だろう。
無料で使える便利なサービスやスマートフォンアプリ等が浸透している中で、消費者からフィー(月額利用料等)を徴収するのは容易では無い。となると、データの提供先である第三者(事業者)から消費者に還元する対価の他にフィーを徴収する、集めたデータを統計データや個人が特定できないようなデータ(匿名加工情報)に加工した上で第三者に提供し対価を得る、といったことになる。情報銀行からデータ提供を受けて、消費者一人ひとりに最適化されたサービス・商品を提供しようとする事業者であれば、購買意欲の高い魅力的な消費者(例えば、旅行や教育サービス等の高額消費に積極的な高所得者層等)のデータを入手し、その消費者にアクセスしたいと思うだろう。また、データを商品開発やマーケティングに活かしたいと考えている事業者にとってみれば、ある程度まとまったサイズのデータが無いと活用出来ない。質の高い、多くのデータを集めた上で、収益化する仕組みが作れるかどうかが鍵になる。ユーザーを増やし、多くのデータを集めるために、当面は赤字覚悟の先行投資が必要かもしれない。
ただ、データを集めようにも、消費者にとって魅力あるサービスでなければデータが集まらない。消費者がデータを提供したいと思うような便益(対価)を提供出来るかどうかがポイントになる。実際にデータを提供しても数十円から数百円分の現金やポイントにしかならないといったことは十分にあり得るだろう。また、クーポン(もしくは「お得な情報」)が提供されても、似たようなクーポンや情報が溢れている中、価値を見出せない消費者もいるだろう。如何にして、消費者にデータを提供するメリットを訴求できるかが問われよう。
当然、安心してデータを預けられる管理体制の構築も必要だ。また、消費者がスマートフォンやパソコン上で容易にストレス無く操作、管理出来るユーザーインターフェースも重要だ。操作や管理が煩雑で分かりにくいようだと、消費者が魅力を感じられずに離れていってしまう。安心、透明性、分かりやすさが求められるだろう。
今後に向けては、データ様式・形式等の標準化やルール作り、行政が保有するデータの活用、データポータビリティ(自分のデータを引き出し、他に移せる仕組み)の導入、慎重意見もある健康・医療データの流通等についても議論が進んでいくと見られる。データビジネスの展望に影響するだけに、これらの議論の行方を注視したい。
4―おわりに
* あくまで「任意」の認定であって、認定が無いと事業が行えない制度とはされていない
中村 洋介
研究・専門分野
(2019年11月08日「基礎研マンスリー」)
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