2019年11月08日

コンビニ24時間営業の是非ー高齢化する来店客、持ち回りの深夜営業でインフラ機能を維持してはー

基礎研REPORT(冊子版)11月号[vol.272]

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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1―24時間営業は今の時代に必要か

今年2月、大阪府のコンビニエンスストアのオーナーが人手不足を理由に営業時間の短縮に踏み切った。これをきっかけにコンビニの24時間営業の是非は、世論を巻き込む大論争となった。その後、コンビニの深夜営業を短縮する実証実験が開始され、経済産業省がコンビニオーナーの聞き取り調査をするまでとなった。
 
「24時間タタカエマスカ」とは平成元年の流行語だが、コンビニの店舗はこの頃から増え始めている。2017年では5.8万店、1989年の3.5倍にもなるが、この間、生産年齢人口は約1割減少している。
 
時代は平成から令和へと移り、長時間労働は美徳ではなく是正されるべきものとして「働き方改革」が進んでいる。24時間営業というコンビニのビジネスモデルは、今の時代に必要なのだろうか。

2―高齢化するコンビニ来店客

かつてコンビニは若者のもの、という印象が強かった。しかし、日本のコンビニ最大手のセブンイレブンの来店客は高齢化が進んでいる。1989年では20代以下が約6割を占めていたが、2017年ではわずか2割だ(図表)。一方、50歳以上は約1割から約4割へと4倍にも増えている。
来店客の年齢分布
高年齢層では、若者と比べて深夜のコンビニ利用が少ないことは容易に予想できる。今後、更なる高齢化の進行により、24時間営業へのニーズは低下するはずだ。
 
実はセブンイレブンの来店客は日本の人口以上に高齢化している。1989年から2017年にかけて、50歳以上の人口は全体の29.7%から46.4%へと約1.5倍増にとどまる(総務省「人口動態調査」)。
 
コンビニ来店客が人口以上に高齢化が進む背景には、若者の消費行動の変化と高齢単身世帯の増加があげられる。

3―若者のコンビニ離れと増える高齢単身世帯

アベノミクスで景気は一旦回復したものの、バブル崩壊後に長らく続いた景気低迷の中で、若い世代ほど厳しい経済状況にある。非正規雇用者が増え、正規雇用者でも賃金水準が低下しており、少子高齢化による将来の社会保障不安もある。
 
一方で、現在では技術革新によって、安くて品質の良い商品やサービスがあふれている。成熟した消費社会に生まれ育った世代は、コストパフォーマンス意識が高い傾向がある。定価で商品が売られるコンビニよりも、値引き率の高いディスカウントストアやネット通販などを利用し、十分に比較検討した上で商品を買う傾向がある。また、未婚化や晩婚化、核家族化の進行で高齢単身世帯が増えている。現在、単身世帯は全体の3割強であり、うち3分の1が65歳以上だ(「国勢調査」)。
 
高齢単身世帯のライフスタイルとコンビニは親和性が高い。コンビニの商品は小分けの惣菜や3枚入りの食パンなど、商品単位が小さい。また、住宅街にもあり、遠くのスーパーよりも利便性が高い。
 
高齢単身世帯は、高齢化の進む地方部で多いため、人手不足に悩む地域ほど、実は深夜営業の必要性は低下している。
 
また、コンビニは家事の時短化ニーズの強い共働き世帯の受け皿でもある。現在、18歳未満の子のいる世帯の約6割が共働きだが(厚生労働省「平成30年国民生活基礎調査」)、子育て世帯では、深夜営業に対するニーズは強くないだろう。

4―コンビニはどうあるべきか

24時間営業をやめれば利便性が低下すると言う意見もある。しかし、今は、注文後に数時間で商品が届くネット通販等の代替手段もある。コンビニだけが24時間営業に固執して疲弊する必要はない。
 
一方でコンビニはインフラ機能としての存在意義も大きい。特に高齢単身世帯の多い地方部では、24時間営業の店舗が全く無いと、緊急時の不安は高まる。
 
そこで提案だが、地域の診療体制のように、コンビニ各社が持ち回りで24時間営業を担ってはどうか。24時間営業をする店舗が1つでもあればインフラ機能を維持できる。また、減っているとはいえゼロではない深夜需要を捉えることで、コンビニ側の売上げも担保できる。
 
なお、コンビニは24時間営業を前提としたビジネスモデルだ。よって、営業時間を変えれば、製造や物流、店舗運営などの全てのシステムを見直す必要がある。
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

(2019年11月08日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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