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- 中国経済の強みと弱み~SWOT分析と今後の展開
2019年10月31日
■要旨
1――経済成長の勢いが鈍る中国経済
2018年12月、中国では改革開放から40周年を迎えて記念式典が開催された。改革開放後の道のりは必ずしも平坦ではなく、天安門事件(六四)や不良債権問題などの危機もあったが、その都度困難を克服して、年平均10%近い高成長を実現した。しかし、2012年以降、純輸出はマイナス寄与することが多くなり、投資のプラス寄与が趨勢的に低下して、経済成長率は緩やかに低下してきている。その背景には中国経済が抱える構造問題がある。
2――中国経済が抱える構造問題
中国経済が抱える構造問題としては、第一に少子高齢化に伴う人口増加率の低下、生産年齢人口の減少と従属人口比率の上昇による「人口オーナス」の問題があり、第二に従来の成長モデルが限界に達したことで、生産設備の稼働率が低下し、抱える債務が過剰になったという問題が挙げられ、経済成長率を押し下げる要因となっている。
3――構造改革とその進捗状況
こうした構造問題を克服すべく、中国政府は生産要素投入型からイノベーション型への構造改革を推進している。そして、最近では学術面でもビジネス面でもその成果が顕著に表れてきている。このまま構造改革が順調に進めば、構造問題が足かせになったとしても、新たな成長モデルが経済を牽引する可能性がある。但し、中国の科学技術力はまだ発展途上の段階にあり、米国のそれには遠く及ばないという現実も認識しておく必要がある。
4――中国経済のSWOT分析
現在の中国経済をSWOT分析の枠組みで整理し直してみると、「Strength(強み)」としては、約14億の人口がもたらす巨大な国内市場、購買力平価(PPP)の半分程度とされる割安な人民元レート、そして中国政府の後押しで芽生えたビジネス生態系(Ecosystem)が挙げられる。一方、「Weakness(弱み)」としては、少子高齢化に伴う人口オーナス、過剰設備・債務問題、目覚しく発展したものの米国にはまだ及ばない科学技術力が挙げられる。米中対立などの「Threat(脅威)」を抑制し、一帯一路などに潜在する「Opportunity(機会)」を生かして、「Strength(強み)」を発揮できれば、一定の経済成長を維持できると見られる。
5――今後の展望
今後の中国経済を展望すると、第13次5ヵ年計画(2016-20年)が終わる2020年までは、「6.5%以上」とした目標や所得倍増計画を達成するため、財政・金融に頼ってでも6%強の成長率を維持するだろう。しかし、財政・金融に依存した経済運営は持続不可能なため、第14次5ヵ年計画(2021-25年)に入る2021年以降は成長率目標を「5%前後」へ引き下げ、高齢化に伴う将来の財政負担増に備えて財政赤字を減らし、最大のリスクである過剰設備・債務の解消に向けた債務圧縮(デレバレッジ)を推進すると予想している。
1――経済成長の勢いが鈍る中国経済
2018年12月、中国では改革開放から40周年を迎えて記念式典が開催された。改革開放後の道のりは必ずしも平坦ではなく、天安門事件(六四)や不良債権問題などの危機もあったが、その都度困難を克服して、年平均10%近い高成長を実現した。しかし、2012年以降、純輸出はマイナス寄与することが多くなり、投資のプラス寄与が趨勢的に低下して、経済成長率は緩やかに低下してきている。その背景には中国経済が抱える構造問題がある。
2――中国経済が抱える構造問題
中国経済が抱える構造問題としては、第一に少子高齢化に伴う人口増加率の低下、生産年齢人口の減少と従属人口比率の上昇による「人口オーナス」の問題があり、第二に従来の成長モデルが限界に達したことで、生産設備の稼働率が低下し、抱える債務が過剰になったという問題が挙げられ、経済成長率を押し下げる要因となっている。
3――構造改革とその進捗状況
こうした構造問題を克服すべく、中国政府は生産要素投入型からイノベーション型への構造改革を推進している。そして、最近では学術面でもビジネス面でもその成果が顕著に表れてきている。このまま構造改革が順調に進めば、構造問題が足かせになったとしても、新たな成長モデルが経済を牽引する可能性がある。但し、中国の科学技術力はまだ発展途上の段階にあり、米国のそれには遠く及ばないという現実も認識しておく必要がある。
4――中国経済のSWOT分析
現在の中国経済をSWOT分析の枠組みで整理し直してみると、「Strength(強み)」としては、約14億の人口がもたらす巨大な国内市場、購買力平価(PPP)の半分程度とされる割安な人民元レート、そして中国政府の後押しで芽生えたビジネス生態系(Ecosystem)が挙げられる。一方、「Weakness(弱み)」としては、少子高齢化に伴う人口オーナス、過剰設備・債務問題、目覚しく発展したものの米国にはまだ及ばない科学技術力が挙げられる。米中対立などの「Threat(脅威)」を抑制し、一帯一路などに潜在する「Opportunity(機会)」を生かして、「Strength(強み)」を発揮できれば、一定の経済成長を維持できると見られる。
5――今後の展望
今後の中国経済を展望すると、第13次5ヵ年計画(2016-20年)が終わる2020年までは、「6.5%以上」とした目標や所得倍増計画を達成するため、財政・金融に頼ってでも6%強の成長率を維持するだろう。しかし、財政・金融に依存した経済運営は持続不可能なため、第14次5ヵ年計画(2021-25年)に入る2021年以降は成長率目標を「5%前後」へ引き下げ、高齢化に伴う将来の財政負担増に備えて財政赤字を減らし、最大のリスクである過剰設備・債務の解消に向けた債務圧縮(デレバレッジ)を推進すると予想している。
(2019年10月31日「基礎研レポート」)
三尾 幸吉郎
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