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2019年10月01日
欧州大手保険グループの2019年上期末SCR比率の状況について-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-
7|Zurich
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、ソルベンシーIIに同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済的ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表している。
Z-ECMはソルベンシーIIやSSTとは異なり、UFRを使用していないことから、EU諸国を親会社としている保険グループと比べて、金利低下の影響をより受けることになる。
(1)SCR比率の推移
2019年上期のソルベンシー比率(Z-ECM比率)は、着実な営業利益の計上により、+8%ポイント、保険リスクや市場リスクの資本要件の減少により、それぞれ+1%ポイントの影響があったが、市場の変動で▲7%ポイント、配当支払いで▲4%ポイントとなったため、結果として、2018年末の124%から、3%ポイント低下して、121%となった。
なお、SST比率については、FINMAの規制変更に伴い、2016年末の比率が従前の227%から新たなベースによる204%に低下していたが、2017年末には12%ポイント上昇して216%となり、2018年末も5%ポイント上昇して221%となっていた。なお、ZurichのSST比率は、FINMAと合意した内部モデルで算出している。
Zurichは、ソルベンシーII制度の対象会社ではないが、ソルベンシーIIに同等と考えられているSST(スイス・ソルベンシー・テスト)による数値と社内の経済的ソルベンシー比率であるZ-ECM(Zurich Economic Capital Model)を公表している。
Z-ECMはソルベンシーIIやSSTとは異なり、UFRを使用していないことから、EU諸国を親会社としている保険グループと比べて、金利低下の影響をより受けることになる。
(1)SCR比率の推移
2019年上期のソルベンシー比率(Z-ECM比率)は、着実な営業利益の計上により、+8%ポイント、保険リスクや市場リスクの資本要件の減少により、それぞれ+1%ポイントの影響があったが、市場の変動で▲7%ポイント、配当支払いで▲4%ポイントとなったため、結果として、2018年末の124%から、3%ポイント低下して、121%となった。
なお、SST比率については、FINMAの規制変更に伴い、2016年末の比率が従前の227%から新たなベースによる204%に低下していたが、2017年末には12%ポイント上昇して216%となり、2018年末も5%ポイント上昇して221%となっていた。なお、ZurichのSST比率は、FINMAと合意した内部モデルで算出している。
(3)トピック
Zurichは、事業ポートフォリオの見直しを適宜行っており、非中核事業の撤退を通じて資本を解放する一方で、一連のボルトオン買収に再投資してきている。2019年において、例えば、以下の取得と売却を行っている。
・5月31日に、Australia and New Zealand Banking Group Limited (ANZ).の オーストラリアでの生命保険及び消費者信用事業であるOnePath(OnePath Life とOnePath General Insurance) を取得(さらに、この取引で、Zurichは、ANZと20年間の販売契約を締結し、銀行チャネルを通じて生命保険商品を販売)
・5月24日に、Zurich Seguros, S.A.の69%の株式の売却を完了
・4月2日に、Bonnfinanz AGの売却を完了
・1月1日に、ADAC Autoversicherung AGの51%の株式の売却を完了
また、Zurichは、2017年から2019年の3年間で95億ドルのキャッシュの生成を目標としていたが、2019年上期末までに92億ドルを達成したと報告している。
Zurichは、事業ポートフォリオの見直しを適宜行っており、非中核事業の撤退を通じて資本を解放する一方で、一連のボルトオン買収に再投資してきている。2019年において、例えば、以下の取得と売却を行っている。
・5月31日に、Australia and New Zealand Banking Group Limited (ANZ).の オーストラリアでの生命保険及び消費者信用事業であるOnePath(OnePath Life とOnePath General Insurance) を取得(さらに、この取引で、Zurichは、ANZと20年間の販売契約を締結し、銀行チャネルを通じて生命保険商品を販売)
・5月24日に、Zurich Seguros, S.A.の69%の株式の売却を完了
・4月2日に、Bonnfinanz AGの売却を完了
・1月1日に、ADAC Autoversicherung AGの51%の株式の売却を完了
また、Zurichは、2017年から2019年の3年間で95億ドルのキャッシュの生成を目標としていたが、2019年上期末までに92億ドルを達成したと報告している。
4―SCR比率算定等に関係するその他の事項
この章では、SCR比率算出等に関係するその他の事項について報告する。
これらの項目については、既に2018年末数値に関するレポートとして、保険年金フォーカス「欧州大手保険グループの2018年末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーⅡに基づく数値結果報告-」(2019.4.9)の中でも一部報告している。
さらには、2018年末の詳しい内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2019.7.9)で、各社の長期保証措置や移行措置の適用状況について、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-」(2019.7.16)や保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(4)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その3)-」(2019.7.22)及び基礎研レポート「欧州保険会社の内部モデルの適用状況(標準式との差異)-2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)からのリスクカテゴリ毎の差異説明の報告-」(2019.7.29)等のレポートにおいて、各社の内部モデルの適用状況について報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
これらの項目については、既に2018年末数値に関するレポートとして、保険年金フォーカス「欧州大手保険グループの2018年末SCR比率の状況について(1)-ソルベンシーⅡに基づく数値結果報告-」(2019.4.9)の中でも一部報告している。
さらには、2018年末の詳しい内容については、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2019.7.9)で、各社の長期保証措置や移行措置の適用状況について、保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-」(2019.7.16)や保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(4)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その3)-」(2019.7.22)及び基礎研レポート「欧州保険会社の内部モデルの適用状況(標準式との差異)-2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)からのリスクカテゴリ毎の差異説明の報告-」(2019.7.29)等のレポートにおいて、各社の内部モデルの適用状況について報告しているので、これらのレポートを参照していただきたい。
AllianzとAXAは200%をベースに設定している。Generaliは経営行動を起こす下限水準のみを公表している。Prudentialは地域毎に目標を設定している。AvivaはWorking Rangeという名称で水準設定している。Aegonも地域別に目標を設定しているが、その具体的な内容は前章で述べた。また、Aegonの目標範囲は、これまでは他社に比較して低かったが、2017年の見直しに伴い、他社並みの水準に引き上げられている。また、 ZurichのZ-ECMの目標範囲は100%~120%となっているが、これはAA格付けに相当すると説明されている。
なお、SCR比率の水準毎の会社の対応方針をさらに明確にして開示している会社もある。
監督規制上のソルベンシーへの対応方針は各社各様となっている。
なお、SCR比率の水準毎の会社の対応方針をさらに明確にして開示している会社もある。
監督規制上のソルベンシーへの対応方針は各社各様となっている。
これによれば、各社によって状況は異なっており、AXAは全体SCRの96.1%が内部モデルによって算出されているのに対して、Generaliは64.5%、Avivaは65.5%に留まっている。各国の保険監督当局の内部モデル承認に対するスタンスの差異も影響しているものと思われる。
なお、SFCRでは、標準式によるSCRの数値は開示されていないが、過去の影響度調査によれば、内部モデル適用によるSCRの引き下げ効果は2割程度と想定されている。
また、内部モデルの適用によって最も影響が大きいのが、子会社間や地域間の分散効果であると考えられているが、(標準式による分も含めた)分散効果による控除率は、以下の通りとなっている。
なお、SFCRでは、標準式によるSCRの数値は開示されていないが、過去の影響度調査によれば、内部モデル適用によるSCRの引き下げ効果は2割程度と想定されている。
また、内部モデルの適用によって最も影響が大きいのが、子会社間や地域間の分散効果であると考えられているが、(標準式による分も含めた)分散効果による控除率は、以下の通りとなっている。
3|SCR等の算出方法(長期保証措置の適用状況)
ソルベンシーIからソルベンシーIIへの移行における割引率や技術的準備金についての16年間にわたる経過措置、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)といった長期保証措置4の適用については、各国の保険市場の特徴(販売商品や資産運用市場等)に大きく依存している。
保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2019.7.9)で報告したように、Zurich以外のソルベンシーII制度下にある6社については、全社がボラティリティ調整を適用し、PrudentialとAviva(及びAegonがほんの一部)が、マッチング調整や技術的準備金に関する移行措置を適用している。
これらの措置の適用による影響(2018年末ベース)については、以下の通りであり、英国の保険グループがこれらの措置に大きく依存していることが示されている。下記の表の数値は、GeneraliもAvivaも監督ベースの数値である。
ソルベンシーIからソルベンシーIIへの移行における割引率や技術的準備金についての16年間にわたる経過措置、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)といった長期保証措置4の適用については、各国の保険市場の特徴(販売商品や資産運用市場等)に大きく依存している。
保険年金フォーカス「欧州保険会社が2018年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-」(2019.7.9)で報告したように、Zurich以外のソルベンシーII制度下にある6社については、全社がボラティリティ調整を適用し、PrudentialとAviva(及びAegonがほんの一部)が、マッチング調整や技術的準備金に関する移行措置を適用している。
これらの措置の適用による影響(2018年末ベース)については、以下の通りであり、英国の保険グループがこれらの措置に大きく依存していることが示されている。下記の表の数値は、GeneraliもAvivaも監督ベースの数値である。
4 長期保証措置(経過措置を含む)の内容及びそのEU各国における適用状況については、筆者による、保険・年金フォーカス「EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)~(8)-EIOPAの2018年報告書の概要報告-」(2019.1.25~2019.3.4)を参照していただきたい。
4|自己資本の内訳
ソルベンシーIIの資本要件に算入可能な各種自己資本は、劣後性や損失吸収性、期間といった資本適格性からTier1~Tier3 に分類5され、 それぞれについて算入制限が設定されている。具体的には、「Tier1(無制限)は無制限、Tier1(制限付)はTier1全体の20%未満、Tier3 はSCRの15%未満、Tier2とTier3の合計でSCRの50%未満」となっている。
各社とも、着実にTier1の割合を高めてきており、自己資本のうち、Tier1の自己資本が7割から9割程度、さらに、Tier1(無制限)がそのうちの8割から9割程度を占めている。また、各社とも、既存のTier1 やTier2の劣後債務について、グランド・ファザーリング・ルール(既得権認容ルール)を適用しているが、こうした債務については、早期償還等を行い、段階的にソルベンシーII適格なものに変更してきている。
2019年上期末における自己資本の内訳については、例えばPrudential 、Aviva、Aegon等が開示している。2018年末から大きく変化しているわけではないが、PrudentialではTier1(無制限)の残高及び割合が若干増加して、AvivaでもTier1(無制限)の残高が若干増加しているのに対して、AegonではTier1(無制限)の残高及び割合が若干減少している。
各社のデータが揃う2018年末ベースの数値は、次ページの図表の通りとなっている。
ソルベンシーIIの資本要件に算入可能な各種自己資本は、劣後性や損失吸収性、期間といった資本適格性からTier1~Tier3 に分類5され、 それぞれについて算入制限が設定されている。具体的には、「Tier1(無制限)は無制限、Tier1(制限付)はTier1全体の20%未満、Tier3 はSCRの15%未満、Tier2とTier3の合計でSCRの50%未満」となっている。
各社とも、着実にTier1の割合を高めてきており、自己資本のうち、Tier1の自己資本が7割から9割程度、さらに、Tier1(無制限)がそのうちの8割から9割程度を占めている。また、各社とも、既存のTier1 やTier2の劣後債務について、グランド・ファザーリング・ルール(既得権認容ルール)を適用しているが、こうした債務については、早期償還等を行い、段階的にソルベンシーII適格なものに変更してきている。
2019年上期末における自己資本の内訳については、例えばPrudential 、Aviva、Aegon等が開示している。2018年末から大きく変化しているわけではないが、PrudentialではTier1(無制限)の残高及び割合が若干増加して、AvivaでもTier1(無制限)の残高が若干増加しているのに対して、AegonではTier1(無制限)の残高及び割合が若干減少している。
各社のデータが揃う2018年末ベースの数値は、次ページの図表の通りとなっている。
5 Tier1(無制限)は払込資本や剰余金等、Tier1(制限付)はグランド・ファザーリング・ルールに基づく劣後債務、Tier2は、劣後債務、Tier3は繰延税金資産等である。
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