2019年10月03日

令和2年度にむけた予算・税制改正等の動き

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   安井 義浩

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第198回国会(2019.1.28~2019.6.26)では、老後生活資金不足「2,000万円問題」が、一時注目されたが、その後参議院議員選挙もあって、今では話題にならなくなった。しかし問題が解決したわけではもちろんない。年金や金融商品税制と関連あることなので、あとでも触れることにしよう。

さて、令和2(2020)年度予算についてだが、各省庁の概算要求が8月末までに財務省に提出された。それを集計すると、一般会計の総額は105兆円程度となり、昨年度の103兆円程度をさらに上回った。最終的な予算案に向けては、これを絞りこんでいくことになる。2019年度は101.5兆円にまで絞り込まれたが、当初予算としては初めて100兆円の大台を突破した。例年のことではあるが、「高齢化による社会保障費の増加」「地政学リスクの高まりに対応した安全保障関係費の増加」「景気対策の意味合いが強い公共工事の予算増加」が主なポイントとなっている。

厚生労働省の概算要求には社会保障費が含まれるため、金額が最も大きく32.6兆円(対令和元年度当初予算2.1%増、+6,593億円)である。このうち年金・医療・介護関係経費は30.5兆円(+5,353億円、1.8%増)であり、うち高齢化などに伴う自然増5,300億円を見込み、毎年のように過去最大を更新し続けている。防衛省からは過去最大の5.3兆円(+1.2%増加)が要求されており、ミサイル攻撃への対処、宇宙・サイバー分野・電磁波対応に重点が置かれ、戦闘機・ミサイルなど高額な装備品購入も含まれる。国土交通省の要求は、従来の道路整備等に加え、防災対策としての公共工事を中心として、2割増の7兆円である。なお、消費税増税に伴う景気対策が必要となれば、これらとは別枠で、今後検討されるとのことなので、さらに予算規模は膨らむ方向にある。これらの要求を、今後の折衝で絞り込んでいくことになるのが例年の流れである。

財務省の概算要求は、26.8兆円(同+1.4兆円、5.4%増)でその9割以上にあたるのが利払いなどの国債費25.0兆円で、対前年予算+1.4兆円、6.2%増である。昨今の低金利の影響という意味では、利払いの基礎となる想定金利について、8月末で長期金利がマイナスで推移している状況であるが、急な金利上昇にも予算面で対応できるよう、前年の概算要求時点と同様1.2%に設定されている。ということは、現在のゼロ(あるいはゼロ以下)金利状況が続けば、今要求するほどの予算は必要ないことになる。逆にみれば、予算を抑えるためには、いつまでも金利はあげられないという思惑が働くということであり、年金制度を金額の面で魅力的にしたい側や、実際に年金を受け取る側からすると、困ったものである。

一方、こうした「支出」である予算を策定する前提として、「収入」である税金の水準を見積もる必要があるので、各省庁からの税制改正要望もこの時期に提出される。年金あるいはさらに広く老後資金の確保といった政策に関する要望は、厚生労働省、金融庁が中心となる。

企業年金分野における厚生労働省の要望は、昨年度は特段なかったが、今回は「企業年金・個人年金制度等の見直しに伴う税制上の所要の措置」「企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃または課税停止措置の延長」が出ている。特別法人税の課税停止期間は来年3月で期限切れなので、今回は少なくとも案件として取り上げられるはずで、最低でも期限延長はされると思われる。この点に関しては金融庁も同様の要望を出している。年金関連の金融庁要望については、個人年金保険料控除の最高限度額を現行4万円から5万円に引き上げることを要望している(従来から、一般の生命保険料控除や介護医療保険料控除も合わせて拡充を要望)。省庁での議論に取り込んでもらう必要があるので、各業界からの税制改正要望も8~9月頃に発表されている。企業年金に関連する事項は、生命保険協会、損害保険協会、銀行協会、信託協会、企業年金連合会などといった団体が毎年要望してきている。確定拠出年金の拠出限度額の見直し、あるいは制度間ポータビリティの拡充に関するような利便性向上に向けた要望がいくつか挙げられている。

老後生活資金の確保という意味で、年金周辺の話題といえば、NISAとiDeCoがある。金融庁の税制改正要望のメインは、資産形成を支援する環境整備ということでNISAの恒久化ないし期限延長と利便性の向上である。NISAに関しては、「一般」、「ジュニア」、「つみたて」すべてについて恒久措置とすることを要望(「一般・ジュニアNISA」は2023年まで、「つみたてNISA」は2037年までの時限措置)した。また特に「つみたてNISA」に関しては、年40万円×20年の積立期間が売り物であるにもかかわらず、今後1年ずつ期間が縮減することを解決するため、今後も20年の積立期間が確保されるよう、2037年の制度期限を延長するよう要望している(銀行協会等も要望)。

「2,000万円問題」はこの辺と関連している。公的年金だけではそれぞれ個人が思うようなレベルの暮らしが続けられるとも限らないし、さらなる長寿化に応じて不足金額の見積もりは増えるので、不足部分は自分であらかじめ準備しよう、というのは、ずいぶん前から分かっていた話である。そしてその手段といえば、税制優遇の受けられるNISAであり、iDeCoであり、個人年金である。とはいえ、あらためて老後資金問題への関心が高まったというのが今の状況なので、こうした金融商品の利用をますます普及させる好機であろう。公的年金を補うための投資を奨励する趣旨の、金融審議会ワーキンググループの報告書が2,000万円問題の発端なのだから、世間の関心を高めるのに充分効果があったということになるのではないか。そういう意味で、老後資金確保につながる制度、投資や年金の税制などには追い風であるようだ。iDeCoに関しては、先に挙げた企業年金等の税制上の主要の措置に既に含まれており、やはり少しずつ利便性の向上や加入条件緩和の方向での要望がなされている状況である。

税制に関しては、実質最終的には政治の動きで決まる。今後10月頃以降に議論がなされ、12月の与党税制改正大綱が実質的な決着となる。その後、年明けの国会で、全体の予算とともに審議されることになる。
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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

(2019年10月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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