2018年10月03日

平成31年度に向けた予算・税制改正等の動き

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   安井 義浩

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今年も、そろそろ平成31年度予算や税制改正に向けた議論が始まる季節となった。振り返って、今年の通常国会(第196回国会 1/22~7/22)においては、いまだに「加計・森友」が問題にされ(この辺は様々な評価があろう。)、また関係者の証人喚問などは大きなニュースになったりしてきた。その一方で、3/28には平成30年度予算が成立し、その後、働き方改革関連法案、いわゆる統合型リゾート法案(カジノ法案とも)など、重要な(というのも立場次第だが)法案がいくつか成立している。また、東京五輪が開催される2020年に限り「体育の日」「海の日」「山の日」を開・閉会式前後に移す特別措置法も成立したりもしている。(「体育の日」は2020年より「スポーツの日」に改称される(祝日法の改正)ことも、この国会で決まった。)

なお、「平成」という年号は31年までで、来年5月からは新しい元号になることが予定されているが、次に紹介する予算概算要求の中でも使用されているので、以降「平成31年度」と表現する。(なお、いくつかの省は概算要求の中のまとめ表で、今後2年を「平成30年度、2019年度」と並べた表示をしていた。こうした表現は、特に省庁を超えた統一はされていないようだ。)

さて、その平成31年度予算についてだが、まず各省庁が要望(概算要求)を、8月末までに財務省に提出した。それを集計すると、一般会計の総額は103兆円程度となり、5年連続して100兆円を突破した。最終的な予算案に向けて、これを絞りこんでいくことになるのだが、どうやら今回初めて100兆円を突破するのではないかという見方が強いようである。社会保障費をもつため、金額が最も大きい厚生労働省の概算要求は31.8兆円(対平成30年度当初予算2.5%増)である。このうち年金・医療・介護関係経費は29.8兆円(+6,179億円、2.1%増)であり、うち高齢化などに伴う自然増6,000億円を見込み、毎年のように過去最大を更新し続けている。

次に規模の大きい財務省の概算要求は、26.5兆円(同 +1.0兆円、4.0%増)でその9割以上にあたるのが国債費24.5兆円で、対前年予算+1.2兆円、5.5%増である。国債費とは公債や借入金の償還、利子支払いに必要な経費などからなる。利払いの基礎となる想定金利については、日銀が7月に長期金利の変動幅を拡げた動きに対応して、平成30年度当初予算よりも0.1%分引き上げて1.2%に設定した。この水準は昨年の概算要求時点と同じ水準であり、結果として要求段階から国債費が増額となるのは3年ぶりのことだそうである。

ちなみに金額規模として厚生労働省、財務省に次ぐのが、総務省で16.4兆円。これは地方交付税等の財源への繰入が主なものである。以下国土交通省(6.9兆円 主に一般公共事業費)、文部科学省(5.9兆円 主に義務教育国庫負担金、国立大学法人運営費交付金)と続く。文部科学省の要求の中には、教室へのエアコン設置や危険なブロック塀の撤去・改修なども含まれている。今後財務省の査定が行われる中でも、こうした緊急性・話題性のあるものは認められやすいのだろうか。

その次にくるのが防衛省で過去最大の5.2兆円(+7.2%増加)となり、航空・机上領域の能力強化、ミサイル攻撃への対処、さらには宇宙・サイバー分野・電磁波対応にも予算を振り向ける要求となっている。よく防衛費の伸びが問題視されることがあるが、対前年度当初予算増加率だけでいえば、経済産業省+19.8%、国土交通省+18.9%、農林水産省+18.5%などが目立つ。もちろん、今後の査定・折衝で絞り込まれていくのだが。

それと同時に、こうした「支出」である予算を策定する前提の一つとして、「収入」としての各省庁からの税制改正要望もこの時期になされる。厚生労働省の今回の要望は、昨年度同様、子育てあるいはそれに関わる働き方支援、そして医療制度に関するテーマが並んでおり、年金関係は要望事項がない。金融庁も同様で、年金税制に関する要望事項がない。金融庁は、後にも紹介するNISAの拡充など家計の資産形成に向けての緩和措置、金融のグローバル化に対応した外国子会社関係の税制措置などを要望している。

省庁での議論に取り込んでもらう必要があるので、各業界からの税制改正要望もこの時期に発表される。生命保険協会、損害保険協会、銀行協会、信託協会、企業年金連合会といった団体が企業年金に関連する事項を、毎年要望してきている。確定拠出年金の拠出限度額の緩和、あるいは制度間ポータビリティの拡充に関するような利便性向上に向けた要望がいくつか挙げられている。しかし関係省庁が要望していないので、今後議論される可能性は残念ながら小さいだろう。なお毎年挙がっている「特別法人税の撤廃」要望は、一昨年の議論で、課税停止期間が平成32年3月まで3年間延長されたところである。上にあげたような関係業界団体が、撤廃要望を続けてはいるものの、今年は盛り上がりに欠けるのはやむをえない。

年金周辺の話題といえば、NISAとiDeCoということになろうか。NISAに関しては、家計の安定的な資産形成を継続的に後押しする観点から、NISA(一般、ジュニア、つみたて)について、恒久措置とすることを、金融庁が要望する(「一般・ジュニアNISA」は2023年まで、「つみたてNISA」は2037年までの時限措置)。また特に「つみたてNISA」に関しては、年40万円×20年の積立期間が売り物であるにもかかわらず、今後1年ずつ期間が縮減することを問題視する観点から、少なくとも2037年の制度期限を延長するよう、要望している。(業界団体では銀行協会も要望。)iDeCoに関しては、銀行協会が「第3号被保険者によるiDeCoへの掛金に対する税制支援措置(実際に掛金を負担した者の課税所得から控除等)を設けること」を要望している。

税制に関しては、実質最終的には政治の場面で決まる。今後10月頃以降に議論がなされ、12月の与党税制改正大綱が実質的な決着となる。その後、年明けに国会の中で、全体の予算とともに審議されることになる。
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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

(2018年10月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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