2019年07月19日

消費者物価(全国19年6月)-食料品の上昇が目立つものの、コアCPI上昇率は鈍化傾向が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント縮小

消費者物価指数の推移 総務省が7月19日に公表した消費者物価指数によると、19年6月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.6%(5月:同0.8%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.6%、当社予想も0.6%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.5%(5月:同0.5%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。生鮮食品が前年比2.8%(5月:同▲0.1%)と8ヵ月ぶりに上昇したため、総合は前年比0.7%(5月:同0.7%)となり、コアCPIの伸びを上回った。
コアCPIの内訳をみると、電気代(5月:前年比3.6%→6月:同2.5%)、ガス代(5月:前年比4.8%→6月:同3.9%)、灯油(5月:前年比5.1%→6月:同0.3%)の上昇幅が縮小したことに加え、ガソリン(5月:前年比2.8%→6月:同▲2.7%)が下落に転じたことから、エネルギー価格の上昇率が5月の前年比3.7%から同1.2%へと縮小した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 一方、食料(生鮮食品を除く)の上昇率は5月の前年比1.0%から同1.2%へと高まった。人手不足に伴う人件費上昇を背景に外食が18年7月以降、前年比1%台の伸びが続いていることに加え、原材料費上昇の影響から、菓子類(5月:前年比1.8%→6月:同2.6%)、麺類(5月:前年比1.2%→6月:同3.4%)の上昇率が高まった。

なお、携帯電話通信料の値下げ(5月:前年比▲4.3%→6月:同▲5.8%)によるコアCPIへの影響は6月時点では小幅にとどまった。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.10%(5月:0.30%)、食料(生鮮食品を除く)が0.27%(5月:0.23%)、その他が0.22%(5月:0.26%)であった。

2.上昇品目数が増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、6月の上昇品目数は303品目(5月は296品目)、下落品目数は162品目(5月は168品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は57.9%(5月は56.6%)、下落品目数の割合は31.0%(5月は32.1%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は27.0%(5月は24.5%)であった。

コアCPIは上昇率が鈍化しているが、上昇品目数は18年初め頃の水準まで増加しており、食料品(生鮮食品を除く)については、上昇品目数の割合が6割を超えている。

3.コアCPI上昇率はゼロ%台前半へ

コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇幅縮小を主因として鈍化している。

原油価格(ドバイ)は18年末の50ドル程度から70ドル台まで上昇した後、足もとでは60ドル台前半で推移している。エネルギー価格の上昇率は18年10月の前年比8.9%をピークに19年6月には同1.2%まで縮小したが、夏場以降はマイナスとなることが見込まれる。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きが見られること、上昇品目数が増加していることなどを踏まえれば、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。

コアCPI上昇率は消費税率引き上げ前の9月には、ゼロ%台前半まで鈍化することが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年07月19日「経済・金融フラッシュ」)

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