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介護保険制度が直面する「2つの不足」(下)-「通い」の場や住民主体の地域づくりを巡る論点と課題

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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3年に一度の介護保険制度改正の議論が本格化しつつある。(上)では過去の制度改正の流れを見つつ、介護予防を強化する流れが強まっている点を確認したほか、「介護保険財源の不足」「介護現場における労働力の不足」という「2つの不足」が大きな制約条件となる中、認知症ケアなど「多様化・複雑化するニーズへの対応」を迫られている難しさを浮き彫りにした。
(下)では、高齢者が体操などで日常的に通える「通い」の場が制度改正の柱になっているため、これを巡る論点や課題を考察する。具体的には、「通い」の場の整備が「介護保険財源の不足」「介護現場における労働力の不足」という「2つの不足」に対応する目的が秘められている点を明らかにする。その上で、地域福祉を巡る法体系から見ると、「通い」の場はごく一部に過ぎない点を論じ、実効性が担保できるのかどうかを問う。
さらに、「通い」の場や介護予防・日常生活支援総合事業(以下、新しい総合事業)の拡充が論じられる際、地域づくりや住民主体が論じられている点を考察し、地域づくりや住民主体が「2つの不足」に対応するための方策と考えられている点を取り上げる。
しかし、こうした考え方は制度の持続可能性を確保するための論理であり、「通い」の場に通ったり、こうした場を運営したりする住民のスタンスとは大きな乖離が存在する。そこで、社会心理学の「互恵的利他性」などの概念も使いつつ、「通い」の場などの拡充を図る上では、「住民の見方」で発想する必要性を強調する。
■目次
1――はじめに~重要な柱とされる「通い」の場づくり~
2――「通い」の場を巡る議論
1|「通い」の場が制度改正に位置付けられている現状
2|「通い」の場が制度改正に位置付けられている現状に対する評価
3――地域福祉に関する法体系からの違和感
1|地域福祉の法体系から見た介護保険制度
2|地域福祉法改正論議と整合していない現状
4――生活をベースにした「住民の見方」からの違和感
1|住民活動を「2つの不足」に対応する方策として捉える問題点
2|ボランティアに参加する動機
3|『地域づくり戦略』の長所と短所
4|住民主体の地域づくりを考える視点
5――おわりに
(2019年07月16日「基礎研レポート」)

03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
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