コラム
2019年06月03日

「ナルシシスト数」って、独特な雰囲気の名称を持つ数字を知っていますか

保険研究部 取締役 研究理事   中村 亮一

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はじめに

これまで、「博士の愛した数式」で出てきた「完全数」や「友愛数」という興味深い数字の概念を紹介させていただいてきたが、今回は「ナルシシスト数」1について、紹介したい。

何とも、独特な雰囲気を醸し出す名称であるが、一体どんな数で、なぜそのようなネーミングがなされているのであろうか。
 
1 日本では、「ナルシスト」と呼ばれることが多いが、ここでは英語に従って「ナルシシスト」と称している。

ナルシシスト数とは

ナルシシスト数(narcissistic number)」とは、「n 桁の自然数であって、その各桁の数の n 乗の和が、元の自然数に等しくなるような数」をいう。例えば、13 + 53 + 33 = 153 であるから、153 はナルシシスト数である。

定義から明らかに、1桁の自然数は全てナルシシスト数となる。2桁のナルシシスト数は存在しないことが確認されている。また、英国の数学者であるゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ(Godfrey Harold Hardy,)は、その有名な著書「ある数学者の生涯と弁明」の中で、3桁のナルシシスト数は、153、370、371、407 のみであることに言及している。

ナルシシスト数を小さな方から20個ほど列挙すると、以下の通りとなる。

1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 153, 370, 371, 407, 1634, 8208, 9474, 54748, 92727, 93084, 548834

ナルシシスト数は有限個しか存在しない

これまで紹介してきた「完全数」や「友愛数」等については、「無数に存在するのか、有限なのか」については未解決な問題であると述べてきた。ところが、「ナルシシスト数については、有限個しか存在しない」ことが、以下のように簡単に証明できる。

n 桁の自然数のうち、各桁の n 乗和が最大になるのは、各桁の数字が9の場合で、その和は n × 9n (=9n+9n+……+9n)となる。一方、n 桁の自然数のうち、最小のものは 10n1 である。

ところが、十分大きな n に対しては n × 9n < 10n1 となる(この式は、10×n<(10/9)と変形されるが、右辺の指数関数は左辺の一次関数よりも、増加速度が高いので、このような関係となる)。実際に、n ≧61 でこの不等式は成り立つことになる。従って、61桁以上のナルシシスト数は存在しないことになる。 

因みに、ナルシシスト数は、(0の累乗を0と定義せずに、0を除く場合)全部で88個存在している(0の累乗を0と定義して、0を含めて89個ということもある)。

最大のナルシシスト数は、39桁の以下の数である。
115132219018763992565095597973971522401

興味深いことに、2番目に大きなナルシシスト数は
115132219018763992565095597973971522400
である。

全部で88個しかないナルシシスト数の最大と2番目の数が連続していることになる。何とも愉快な状況だと思われるかもしれない。ただし、このようにナルシシスト数が時々連続する形になるのは、その定義から、決してレアなことではない。というのも、あるナルシシスト数の最後の桁が0であるならば、その次の最後の桁が1となる数もナルシシスト数になるからである。実際に88個の数のうちで7組の14個の数でこのように連続する状況になっている。ただし、それが最大のナルシシスト数で起こっていることが興味深いといえるだろう。

10進法以外のナルシシスト数

なお、ナルシシスト数の概念は10進法以外の他の基数でも同様に定義できる。

例えば、5進法での23は、以下の通りで、5進法でのナルシシスト数になる。

22+32=4+14=23

なぜナルシシスト数という名前が付与されたのか-そもそもナルシシストの語源は

「ナルシシスト(narcissist)」とは、ナルシシズム(narcissism)を呈する人のことをいい、「ナルシシズム」とは、「自己愛又は自己を愛し、自己を性的な対象とみなす状態」を言う。語源はギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソス(Narcissus)が水面に映る自らの姿に恋をしたというエピソードに由来している。

では、なぜ、先に定義されたような数字が「ナルシシスト数」と呼ばれるようになったのか。

確かに、「自らの構成要素である各桁の数字から、累乗と言う手法を用いて自らの数字を再現できる」という意味において、ナルシシズム的な要素を有しているといえるかもしれない。ただし、それでも「友愛数」の時の説明とは異なって、今ひとつしっくりこないという印象を受けるだろう。

実際に、「ナルシシスト数」は、「アームストロング数(Armstrong number)」、「プラス完全数(plus perfect numbers)」及び「完全デジタル不変数(perfect digital invariant numbers)」等とも呼ばれる。このように、複数のネーミングが存在することを考えると、「ナルシシスト数」という名称は必ずしも数学者の間の感覚に十分にフィットせずに、広く受け入れられてこなかったのかもしれない。

なお、「ナルシシスト数」は、数学に一定程度知識のある方々の間で、一般の数学用語の中で興味深い用語ランキングのアンケートを取ると、上位にランクされるようである。その意味では、ショッキングな名称であることには変わりは無く、その他の名称が一般的になっていたら、これほど存在が知られる数字にはなっていなかっただろう。

ナルシシスト数の類似概念-ミュンヒハウゼン数

ナルシシスト数には、さらに類似の概念が存在している。

例えば、「完全桁間不変数(perfect digit-to-digit invariant:(PDDI))」と呼ばれる数字があるが、これはその名が示すように、「各桁の数字と同じ累乗の合計が元の数字に等しくなるような数」のことを言う。この概念はむしろ「ミュンヒハウゼン数(Münchhausen Number)」として知られているので、むしろ以下ではこの名称を使用する。

ナルシシスト数が与えられた数の固定された累乗の合計に等しい数であるのに対して、ミュンヒハウゼン数は、自分と同じ累乗の合計、ということになる。「ミュンヒハウゼン数(Münchhausen Number)」という名前は、1943年のファンタジーコメディ映画Münchhausen(日本語タイトル「ほら男爵の冒険」)の主人公であるHieronymus von Münchhausen男爵のエピソードに由来している。なお、Münchhausen男爵は、有名なナルシシストとして設定されており、このことも名前の選定に関係していたようだ。

ミュンヒハウゼン数は、0の累乗を0と定義しない場合には、1と3435の2つしか存在していない。

3435 = 33+44+33+55

もし、0の累乗を0と定義する場合には、さらに、0と438579088の2つが加わって、ミュンヒハウゼン数は4個になる。

「ミュンヒハウゼン数が有限個しか存在しない」ことも容易に証明できるが、ここでの紹介は割愛させていただく。結局は、ナルシシスト数の有限性の証明と同様に、一次関数と指数関数の増加速度の差異からの制約に基づいて、証明がなされることになる。

ナルシシスト数の類似概念-その他

ナルシシスト数が与えられた数の固定された累乗の合計に等しい数であるのに対して、各桁の数字の連続する累乗の合計に等しい数、というものも考えられる。

具体的には、1676について、以下の通りとなっている。
1676 = 11+62+73+64

さらには、2646798について、以下の通りとなっている。
2646798 = 21+62+43+64+75+96+87

このような数も有限個しか存在せず、19個(0を含めれば20個)が確認されている。

ナルシシスト数は、社会でどのように役立っているのか

それでは、「ナルシシスト数」という概念は、一般社会において、どのように役立っているのだろうか。これについても、私が調査した限りにおいては、現段階においては特段に利用されているわけではないようである。

その意味では、純粋に興味・関心の世界から、研究が行われてきたようである。「友愛数」の場合とは異なり、既に有限個しか存在しないことが確認されていることから、これからも研究の対象になっていくことはあまりないのかもしれない。

ただし、類似の概念もいろいろと拡がりもあることから、数字の持つ不思議な要素を認識できる1つの概念として、今後も人々の興味・関心の的になり続けるものと思われる。

まとめ

今回は、独特な雰囲気を醸し出す名称を有する「ナルシシスト数」について、紹介した。これからも、こうした数字の紹介を行っていきたい。これを通じて、少しでも数学や数字に興味・関心を持っていただければと思っている。
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中村 亮一 (なかむら りょういち)

研究・専門分野
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(2019年06月03日「研究員の眼」)

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