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2019年04月16日
欧州大手保険グループの2018年末SCR比率の状況について(2)-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-
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4|Prudential
(1)SCR比率の推移
営業利益の計上による資本創出等に加えて、新たに16億ポンドの劣後債の発行を行ったことが大きく貢献して、自己資本が2017年末に比べて39億ポンド増加した。このため、市場の変動等のマイナスの影響を相殺しても、2018年末のSCR比率は、2017年末の202%から30%ポイントと大きく上昇して、232%となった。
なお、SCR比率への影響については資本創出等が+23%ポイント、市場の変動で▲2%ポイント、また、発行及び償還に伴う債務残高の増減と配当の影響がほぼ相殺され、これらを含むその他で▲5%ポイントであった。
因みに、2016年末から2017年末にかけては、ポンドによる業績表示における為替面でのマイナスの影響や米国の税制改革の影響で、SCR比率は2016年末の201%から2017年末の202%にわずか1%ポイントの上昇にとどまっていた。
(1)SCR比率の推移
営業利益の計上による資本創出等に加えて、新たに16億ポンドの劣後債の発行を行ったことが大きく貢献して、自己資本が2017年末に比べて39億ポンド増加した。このため、市場の変動等のマイナスの影響を相殺しても、2018年末のSCR比率は、2017年末の202%から30%ポイントと大きく上昇して、232%となった。
なお、SCR比率への影響については資本創出等が+23%ポイント、市場の変動で▲2%ポイント、また、発行及び償還に伴う債務残高の増減と配当の影響がほぼ相殺され、これらを含むその他で▲5%ポイントであった。
因みに、2016年末から2017年末にかけては、ポンドによる業績表示における為替面でのマイナスの影響や米国の税制改革の影響で、SCR比率は2016年末の201%から2017年末の202%にわずか1%ポイントの上昇にとどまっていた。
(3)トピック
(3-1)グループのSCR比率
会社はソルベンシーIIの算出に反映されていない経済的資本のソースとして、例えば、1) ソルベンシーIIの契約境界の定義によって除外されるアジアの生命保険事業に関連する部分(2018年末で17億ポンド)、2) 区分された(ring-fenced)有配当ファンド部分(2018年末で55億ポンド)や有配当ファンドの消滅契約の株主持分、3) 職員の年金ファンド、を挙げている。
また、2018年12月末のSCR比率では、2018年3月からの120億ポンドの英国の年金ポートフォリオのRothesay Lifeへの出再及びPrudential plcの香港の子会社のPrudential Corporation Asia Limitedへの移転が考慮されている。これらにより、2018 年末ベースでは、英国のソルベンシーII剰余が33億ポンド減少し、グループのソルベンシーII剰余が4億ポンド増加する、としている。
さらに、長期金利の低下に対して、Jackson Nationalを保護するために取られた一定のデリバティブ商品に関する未実現利益も控除されている。
なお、Jackson Nationalとグループの他の会社との分散効果は考慮していない。
(3-2)地域別のソルベンシー比率
地域別にソルベンシー比率をみると、以下の通りとなっている。
米国のJackson NationalのRBC比率に関しては、以下の説明がなされている。
1) 2017年末から2018年末にかけて49%ポイントも上昇した理由
・ネットの資本形成等で+121%ポイント
・配当で▲37%ポイント
・税制改革で▲35%ポイント
さらに、市場の悪化にも関わらず、準備金のバッファーや下落市場でデフェンシブな傾向にあるファンド及びヘッジ戦略の影響で、市場の低下の影響が軽減されたとしている。
2) 将来の規制変更の影響
・RBCのC1ファクターの更新により、2020年から30~40%ポイントの影響
・VAフレームワークのNAICによる変更により、2020年から40~50%ポイントの影響
(3-1)グループのSCR比率
会社はソルベンシーIIの算出に反映されていない経済的資本のソースとして、例えば、1) ソルベンシーIIの契約境界の定義によって除外されるアジアの生命保険事業に関連する部分(2018年末で17億ポンド)、2) 区分された(ring-fenced)有配当ファンド部分(2018年末で55億ポンド)や有配当ファンドの消滅契約の株主持分、3) 職員の年金ファンド、を挙げている。
また、2018年12月末のSCR比率では、2018年3月からの120億ポンドの英国の年金ポートフォリオのRothesay Lifeへの出再及びPrudential plcの香港の子会社のPrudential Corporation Asia Limitedへの移転が考慮されている。これらにより、2018 年末ベースでは、英国のソルベンシーII剰余が33億ポンド減少し、グループのソルベンシーII剰余が4億ポンド増加する、としている。
さらに、長期金利の低下に対して、Jackson Nationalを保護するために取られた一定のデリバティブ商品に関する未実現利益も控除されている。
なお、Jackson Nationalとグループの他の会社との分散効果は考慮していない。
(3-2)地域別のソルベンシー比率
地域別にソルベンシー比率をみると、以下の通りとなっている。
米国のJackson NationalのRBC比率に関しては、以下の説明がなされている。
1) 2017年末から2018年末にかけて49%ポイントも上昇した理由
・ネットの資本形成等で+121%ポイント
・配当で▲37%ポイント
・税制改革で▲35%ポイント
さらに、市場の悪化にも関わらず、準備金のバッファーや下落市場でデフェンシブな傾向にあるファンド及びヘッジ戦略の影響で、市場の低下の影響が軽減されたとしている。
2) 将来の規制変更の影響
・RBCのC1ファクターの更新により、2020年から30~40%ポイントの影響
・VAフレームワークのNAICによる変更により、2020年から40~50%ポイントの影響
5|Aviva
Avivaも会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。
Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2018年末で26億ポンド)、職員年金制度(2018年末で11億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。それゆえ、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1)SCR比率の推移
Avivaの会社ベースの数値は、2018年末に、着実な営業利益の計上及び各種の経営行動(英国の長寿年金のリリースで6億ポンド、ヘッジングやモデリングの影響で4億ポンド等)を行ったことを主因として、債務の返済や株式買戻しに15億ポンドを投入したにも関わらず、2017年末の198%に比べて6%ポイント上昇して、204%となった。なお、監督ベースの数値も、169%から180%に11%ポイント上昇した。
Avivaも会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。
Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2018年末で26億ポンド)、職員年金制度(2018年末で11億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。それゆえ、会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1)SCR比率の推移
Avivaの会社ベースの数値は、2018年末に、着実な営業利益の計上及び各種の経営行動(英国の長寿年金のリリースで6億ポンド、ヘッジングやモデリングの影響で4億ポンド等)を行ったことを主因として、債務の返済や株式買戻しに15億ポンドを投入したにも関わらず、2017年末の198%に比べて6%ポイント上昇して、204%となった。なお、監督ベースの数値も、169%から180%に11%ポイント上昇した。
(3)トピック
Avivaは、2017年11月に、2019年末までに30億ポンドの現金を投入するという計画を述べていた。このうち、2018年においては、1) 6億ポンドの株式買戻し、2) 約9億ポンドの債務のレバレッジ解消、3) アイルランドにおけるFriends Firstの買収、等で17億ポンドが実施された。
「1) 6億ポンドの株式買戻し」については、2018年7月末において、3.76億ポンドの買戻し、9月に残りの2.24億ポンドの株式買戻しを行い、完了している。また、「2) 約9億ポンドの債務のレバレッジ解消」については、5月に5億ユーロのTier2債務の返済が行われ、11月に5.75億ドルの制限付Tier1債務の返済が行われた。これらにより、SCR比率は13%ポイント低下したとしている。また、6月にアイルランドのFriends Firstの買収に1.46億ユーロが使用された。
残りの13億ポンドについては2019年以降に持ち越されている。なお、Avivaは、2019年から2022年の間に、約30億ポンドの満期債務を抱えており、そのうち15億ポンドを再融資(リファイナンス)することなく返済する予定である、としている。プロフォーマベースでは、これにより、未払債務残高は約20%減少し、ソルベンシーII自己資本に対する債務の比率は29%に4%ポイント減少し、SCR比率は194%に10%ポイント減少する、としている。
なお、Avivaは、2018年2月にジョイントベンチャー持分の売却により、スペイン市場から撤退することを公表しているが、これにより、ソルベンシーIIの資本が150百万ポンド増加するとしている。
また、Avivaは英国のバルク年金やペンション市場に注力してきているが、ソルベンシーIIの下での資本の負荷を軽減するために、2018年8月には、米国のPrudential Financialに対して、年金負債に関連する約10億ポンドの長寿リスクを出再している。
Avivaは、2017年11月に、2019年末までに30億ポンドの現金を投入するという計画を述べていた。このうち、2018年においては、1) 6億ポンドの株式買戻し、2) 約9億ポンドの債務のレバレッジ解消、3) アイルランドにおけるFriends Firstの買収、等で17億ポンドが実施された。
「1) 6億ポンドの株式買戻し」については、2018年7月末において、3.76億ポンドの買戻し、9月に残りの2.24億ポンドの株式買戻しを行い、完了している。また、「2) 約9億ポンドの債務のレバレッジ解消」については、5月に5億ユーロのTier2債務の返済が行われ、11月に5.75億ドルの制限付Tier1債務の返済が行われた。これらにより、SCR比率は13%ポイント低下したとしている。また、6月にアイルランドのFriends Firstの買収に1.46億ユーロが使用された。
残りの13億ポンドについては2019年以降に持ち越されている。なお、Avivaは、2019年から2022年の間に、約30億ポンドの満期債務を抱えており、そのうち15億ポンドを再融資(リファイナンス)することなく返済する予定である、としている。プロフォーマベースでは、これにより、未払債務残高は約20%減少し、ソルベンシーII自己資本に対する債務の比率は29%に4%ポイント減少し、SCR比率は194%に10%ポイント減少する、としている。
なお、Avivaは、2018年2月にジョイントベンチャー持分の売却により、スペイン市場から撤退することを公表しているが、これにより、ソルベンシーIIの資本が150百万ポンド増加するとしている。
また、Avivaは英国のバルク年金やペンション市場に注力してきているが、ソルベンシーIIの下での資本の負荷を軽減するために、2018年8月には、米国のPrudential Financialに対して、年金負債に関連する約10億ポンドの長寿リスクを出再している。
(2019年04月16日「保険・年金フォーカス」)
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