2019年02月22日

消費者物価(全国19年1月)-コアCPIは4ヵ月ぶりに伸びを高めたが、先行きは鈍化へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPIは4ヵ月ぶりに伸びを高める

消費者物価指数の推移 総務省が2月22日に公表した消費者物価指数によると、19年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(12月:同0.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.8%、当社予想は0.7%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.4%(12月:同0.3%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。生鮮食品が12月の前年比▲9.4%から同▲11.1%へと下落幅が拡大したことから、総合は前年比0.2%(12月:同0.3%)と上昇率が前月から0.1ポイント縮小した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(12月:前年比6.4%→1月:同7.2%)、ガス代(12月:前年比4.8%→1月:同5.6%)の上昇幅は拡大したが、ガソリン(12月:前年比5.0%→1月:同0.6%)、灯油(12月:前年比12.2%→1月:同6.3%)の上昇幅が大きく縮小したため、エネルギー価格の上昇率は12月の前年比6.0%から同4.9%へと縮小した。


一方、自動車保険料(任意)(12月:前年比▲0.6%→1月:同2.3%)、新聞代(12月:前年比0.0%→1月:同2.4%)の値上げが行われたこと、宿泊料(12月:前年比2.0%→1月:同5.8%)の上昇幅が拡大したことがコアCPIを押し上げた。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.39%(12月:0.48%)、食料(生鮮食品を除く)が0.16%(12月:0.16%)、その他が0.25%(12月:0.06%)であった。

2.下落品目数が増加

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、1月の上昇品目数は272品目(12月は272品目)、下落品目数は185品目(12月は180品目)となり、下落品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は52.0%(12月は52.0%)、下落品目数の割合は35.4%(12月は34.4%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は16.6%(12月は17.6%)であった。

上昇品目数の割合は18年8月に50%を割り込んだ後、9月以降は再び50%を上回っている。しかし、17年までに比べるとその水準は低く、物価上昇に裾野の広がりは見られない。先行きは、輸入物価下落の影響が国内物価に波及することにより、下落品目数が増加することが見込まれる。

3.コアCPI上昇率は再び鈍化へ

コアCPIは4ヵ月ぶりに伸びを高めたが、自動車保険料、新聞代の値上げなど一時的な要因が大きく、持続性はないだろう。原油価格(ドバイ)は18年末に50ドル程度まで下落した後、足もとでは60ドル台後半まで持ち直している。ただし、電気代、ガス代は原油価格の動きが遅れて反映されるため、18年度末頃をピークに上昇率が鈍化し始め、エネルギー価格の上昇率は19年夏頃には前年比でほぼゼロ%となる可能性が高い。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 また、サービス価格との連動性が高い賃金は伸び悩みが続いているが、景気の先行き不透明感の高まりなどから、19年の賃上げ率は前年を下回ることが見込まれる。基調的な物価上昇圧力が高まる材料は見当たらず、現時点では、コアCPI上昇率は19年度入り後にはゼロ%台半ばまで鈍化すると予想している。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年02月22日「経済・金融フラッシュ」)

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