- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 企業経営・産業政策 >
- 日米CEOの企業価値創造比較と後継者計画
1――日米経営者の一つの比較
1 https://hbr.org/2018/11/the-best-performing-ceos-in-the-world-2018
(邦訳は「[2018年版]日本人経営者がベストテン入り 世界のCEOベスト100」ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー2019年2月号pp.127-139)
2 国別調整済みTSR(配当の再投資を含む株主総利回り)、業種別調整済みTSR、時価総額の変化(配当、株式発行、自社株買い分を調整)の3つの数値の平均値。詳細は前掲注1参照。
3 ESGベンダーは、SustainalyticsとCSRHubの2社。詳細は前掲注1参照。
2――米国CEOの実像
米国CEO 49人のから創業者(アマゾンのジェフ・ベゾス氏など8人)を除き、さらに外部から招聘されたCEO(ベストバイのヒューバート・ジョリー氏など5人)を除いてみたところ、それでも米国CEOは36人を数える。日本のCEOは2人のみだ。米国トップクラスのCEOの実像は、著名な新興企業の創業者や外部から招いたプロ経営者ばかりではなく(49人中13人:26.5%)、多くは会社内部で経営を引き継いだCEO(以下、内部昇進CEO)なのである(49人中36人:73.5%)。内部昇進CEOだけで比較しても日米差が大きいその一因を、コーポレートガバナンスの日米の違いに求めるとすれば、CEOの「後継者計画(サクセッションプランニング)」の有無を挙げることができる。
後継者計画とは、優れた経営者を意図的かつ計画的に育成・選定する仕組みである。米国の後継者計画では、経営者とは経営という職務の高度専門職(プロフェッショナル)であり、将来有望な若手候補を早期に選抜し経営者として特別に育て上げていく。傑出した創業経営者に匹敵する経営のプロフェッショナルを会社内部で育てる挑戦が後継者計画であり、それを実現した例が上記36人の米国CEOであるという見方もできる。
米国では一般的である後継者計画も、日本では計画として文書で明確なものは1割ほどの企業にしか存在しない(図表1)。しかし、日本でも後継者計画を策定している企業では、現状より透明性の高い選出プロセスを確保すると同時に、計画的な育成を行い、より資質・能力の高いCEOを選ぼうという意識がある(図表2)。日本の後継者計画に関する検討の詳細については、拙稿「サクセッションプランニングの焦点 後継者計画の問題は決め方ではなく育成にある」(基礎研レポート2019年1月15日)を参照いただきたい。
4 ランキングはCEO就任期間にわたる中長期のパフォーマンスを反映するので、毎年大きく入れ替わるわけではない。2018年版では昨年の100人にうち70人が引き続きランクインしている。
5 SpencerStuart“CEO TARNSITIONS 2017”https://www.spencerstuart.com/research-and-insight/2017-ceo-transitions
6 クリスティー・アトウッド(石山恒貴訳)「サクセッションプランの基本 ―人材プールが力あるリーダーを生み出す―」ASTDグローバルベーシックシリーズ(2012年)P.24
3――CEOの就任年齢と在任期間
米国では、大企業の経営を任せることができる最も早い年代として 40台半ばが意識されており、以降10数年がCEOという激務をこなす気力と体力が充実している時期だという考えが、後継者計画の背景にある。しかし、現実に40台半ばでCEOに就任するよう育成・選定することは容易ではない。入社から3年毎に選抜を繰り返すとしても、CEO就任までの育成期間は20年程度しかないため時間との戦いなのである7。だからこそ、候補者を早期に選抜し、計画的に育成に力を入れるのである。
米国CEO経験者同士のある対談では次のように語られている。「アメリカ上場企業の強みは、後継者の選出プロセスが決められていることであり、株式市場から、経営トップは最高の能力を誇っているときに交代するよう期待されていることです8。」確かに、後継者計画は、コーポレートガバナンスの要諦である社長・CEOの選任に直結している。次期社長・CEOの選定は後継者計画の結果であり、後継者計画による次期候補の準備が整って初めて可能となるからだ。
7 八木洋介・金井壽宏「戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ」光文社(2012)pp.163-164
8 Harvard Business Review「コーポレート・ガバナンス」DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー(2001) P.196
4――米国は一つの参考となる
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
このレポートの関連カテゴリ
江木 聡
研究・専門分野
(2019年01月17日「基礎研レター」)
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2023年11月29日
改正ベトナム保険事業法(5)-生命保険・医療保険(その1) -
2023年11月28日
堅調を維持している2023年上期米国個人生命保険販売-下半期も引き続き増加基調か-ニーズ取り込みに課題も- -
2023年11月28日
気候変動が運輸にもたらす影響-材料の改善や技術の進展により、強靭化が可能な部分もある -
2023年11月28日
キャッシュ・アウト・リファイナンス(Cash Out Refinance)~「住宅を現金化する仕組み」はひとまず終了か? -
2023年11月28日
今週のレポート・コラムまとめ【11/21-11/27発行分】
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
-
2023年04月03日
News Release
【日米CEOの企業価値創造比較と後継者計画】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
日米CEOの企業価値創造比較と後継者計画のレポート Topへ