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コラム
2018年11月29日
日本企業はおよそ経営トップ、一般的には社長・CEOが支配している。代表的な経済団体である経団連の前会長・榊原定征氏は最近、次のようにコメントしている。
経営トップが実質的にすべてを決める経営者支配(以下、経営者支配)の下ではどのようなことが起こるのか。光と影の両面がある。例えば、権力を集中した方が、会社の黎明・成長期には経営がうまくいくこともあるであろうし、成熟・停滞期であっても改革がかえって目覚しい成果を生むかもしれない。一方、有能でない経営トップが不作為や経営の失敗によって会社の存続を危うくすることもあれば、経営トップの自己保身に歯止めが利かない事態を招いてしまうこともあるだろう。
企業不祥事の教訓として経営者支配を許さなくなっているのが、諸外国のコーポレートガバナンスの流れである。その端的な例が、2018年改訂前の英国のコーポレートガバナンス・コード<主要原則A.2:責務の分担>である。
英国人有識者はこの原則の趣旨を、権限が一人に集中してしまうと固定的な権限の集中を招き、自己保身につながりかねないのだと説明している2。当原則の後段は改訂後の<主要原則G・前段>に取り込まれ、権力集中を許さない取締役会の構成として改めて次のように規定した。
一般に、コーポレートガバナンスは、欧米では野心的過ぎる経営者の独断専行を抑止することに重きを置く一方、日本は目下、経営の不作為を回避し果断な意思決定を推奨している点に大きな違いがある。ただ、独断専行と不作為とは方向性は違っても、経営者支配の弊害という点で共通している。日本のコーポレートガバナンス・コードは、2018年6月の改訂で経営者支配を可能にする権力の源泉というべきテーマに焦点を当てた。
これまで社長・CEOの専権事項であった後継者の決定、自らの在職可否について、取締役会の関与を義務付け、透明性を確保するよう求めたものだ。上場会社(本則市場)はこれらの原則に対する対応についてコーポレートガバナンス報告書に2018年12月末までに開示する必要がある。
コーポレートガバナンス・コードの上記要請は、取締役会の権限・責務に関する会社法規定の本旨に沿った実務を示したに過ぎない3。上場によって広く市場から資金を集める公器となったという意味でも、経営の趨勢が与える社会的インパクトが大きいという意味でも、上場会社であるからには避けがたい要請と捉えるほかないだろう。
1 金融庁「英国・コーポレート・ガバナンス・コード(仮訳)」P.9
英国コーポレートガバナンス・コードは日本とは異なり、基本原則が「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象ではなく、適用(apply)が義務付けられている(コンプライ・オア・エクスプレインの対象は付随する(補助原則と)各則のみ)。
英国では対象上場会社は基本原則の適用状況をアニュアルレポートで開示するよう義務付けられており、実態として基本原則はコンプライ・アンド・エクスプレインとなっている。
2 金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第11回)議事録」ケリー・ワリングメンバー発言 https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/gijiroku/20171018.html
3 代表取締役の選定及び解職(会社法362条2項3号)、取締役の職務の執行の監督(同2号)
「取締役会は社長の上に位置し、社長ら経営陣の執行を監視する権限がある。次期社長を指名するのも取締役会の重要な仕事だが、日本は社長がすべてを決め、取締役会はそれに追随している状況がなお続いている。」(2018年10月22日付日本経済新聞朝刊)
経営トップが実質的にすべてを決める経営者支配(以下、経営者支配)の下ではどのようなことが起こるのか。光と影の両面がある。例えば、権力を集中した方が、会社の黎明・成長期には経営がうまくいくこともあるであろうし、成熟・停滞期であっても改革がかえって目覚しい成果を生むかもしれない。一方、有能でない経営トップが不作為や経営の失敗によって会社の存続を危うくすることもあれば、経営トップの自己保身に歯止めが利かない事態を招いてしまうこともあるだろう。
企業不祥事の教訓として経営者支配を許さなくなっているのが、諸外国のコーポレートガバナンスの流れである。その端的な例が、2018年改訂前の英国のコーポレートガバナンス・コード<主要原則A.2:責務の分担>である。
「会社において、取締役会の運営を担う責務と、事業の経営を担う責務とでは、明確に責務の分担がなされるべきである。何人も、制約のない決定権限を持つべきではない。」1(下線は筆者)
英国人有識者はこの原則の趣旨を、権限が一人に集中してしまうと固定的な権限の集中を招き、自己保身につながりかねないのだと説明している2。当原則の後段は改訂後の<主要原則G・前段>に取り込まれ、権力集中を許さない取締役会の構成として改めて次のように規定した。
「取締役会は、一人の取締役あるいは少数の取締役によるグループが、取締役会の意思決定を支配することのないよう業務執行取締役と非業務執行取締役(とりわけ独立性のある非業務執行取締役)について適切な組み合わせとすべきである。」(筆者仮訳)
一般に、コーポレートガバナンスは、欧米では野心的過ぎる経営者の独断専行を抑止することに重きを置く一方、日本は目下、経営の不作為を回避し果断な意思決定を推奨している点に大きな違いがある。ただ、独断専行と不作為とは方向性は違っても、経営者支配の弊害という点で共通している。日本のコーポレートガバナンス・コードは、2018年6月の改訂で経営者支配を可能にする権力の源泉というべきテーマに焦点を当てた。
・取締役会は、CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性、適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任すべきである。<補充原則4-3②>
・取締役会は、会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべきである。<補充原則4-3③>
これまで社長・CEOの専権事項であった後継者の決定、自らの在職可否について、取締役会の関与を義務付け、透明性を確保するよう求めたものだ。上場会社(本則市場)はこれらの原則に対する対応についてコーポレートガバナンス報告書に2018年12月末までに開示する必要がある。
コーポレートガバナンス・コードの上記要請は、取締役会の権限・責務に関する会社法規定の本旨に沿った実務を示したに過ぎない3。上場によって広く市場から資金を集める公器となったという意味でも、経営の趨勢が与える社会的インパクトが大きいという意味でも、上場会社であるからには避けがたい要請と捉えるほかないだろう。
1 金融庁「英国・コーポレート・ガバナンス・コード(仮訳)」P.9
英国コーポレートガバナンス・コードは日本とは異なり、基本原則が「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象ではなく、適用(apply)が義務付けられている(コンプライ・オア・エクスプレインの対象は付随する(補助原則と)各則のみ)。
英国では対象上場会社は基本原則の適用状況をアニュアルレポートで開示するよう義務付けられており、実態として基本原則はコンプライ・アンド・エクスプレインとなっている。
2 金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第11回)議事録」ケリー・ワリングメンバー発言 https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/gijiroku/20171018.html
3 代表取締役の選定及び解職(会社法362条2項3号)、取締役の職務の執行の監督(同2号)
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(2018年11月29日「研究員の眼」)
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