2019年01月11日

ユーロ相場の低迷は続くのか?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. ユーロ円は年初に一時119円台まで円高が進み、足元でも124円台までの戻りに留まっている。また、より長い目でみても、昨年春以降、ユーロは対ドル・対円ともに大きく下落しており、低迷から抜け出せない状況が続いている。ユーロ安が続いてきた背景には、ECBの利上げ(マイナス金利縮小)観測が後退したことがある。昨年6月にECBが「少なくとも2019年夏までは金利を据え置く」との方針を示したことで、より早期の利上げ観測は沈静化した。その後もユーロ圏の景気減速感が強まるにつれて、利上げ観測はどんどん後退していった。また、欧州の政治リスクもユーロ安に拍車をかけた。イタリアの財政に対する懸念が高まったほか、英国のEU離脱もユーロ安材料となった。
     
  2. 従って、今後のユーロ相場の行方を占ううえでポイントになるのも、ユーロ圏の景気と政治リスクの動向ということになる。当面については、ユーロの上値は重く、下振れリスクも高い状況が続きそうだ。今後は英国のEU離脱問題が山場を迎えるが、しばらく混乱が予想されるためだ。一方、春以降はユーロの持ち直しを予想している。この頃にはEU離脱問題の先行き不透明感も緩和するほか、ユーロ圏の景気も所得の改善などを通じて持ち直していく可能性が高いためだ。物価上昇率(コア)も上昇ペースを維持・拡大するだろう。ECBの利上げ(マイナス金利縮小)着手は秋から年末になるとみられるが、市場では先んじて利上げ観測が回復し、対ドル・対円でユーロ高が進むとみている。
     
  3. ただし、このメインシナリオが実現するには、海外経済の失速が避けられることが条件となる。現状ではまだリスクシナリオだが、貿易摩擦激化により米中経済が大きく減速するようなことになれば、ECBの利上げも遠のく。その際には、ユーロドルは利上げ観測消滅に伴うユーロ安圧力と利下げ観測台頭に伴うドル安圧力の綱引きとなるが、ユーロ円では緩和余地の乏しい円が買われ、円高ユーロ安が進行することになるだろう。
ユーロの対ドル・対円相場
■目次

1.トピック:ユーロ相場の低迷は続くのか?
  ・利上げ観測後退+政治リスク
  ・ユーロは春以降上昇基調へ
2.日銀金融政策(12月):海外リスクを警戒、金利低下は「問題ない」
  ・(日銀)現状維持
3.金融市場(12月)の振り返りと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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