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- 急落後のユーロ相場の行方~円の独歩高に繋がるリスクも
2018年06月01日
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■要旨
- 5月下旬、ユーロが急落した。イタリアの政治不安が台頭したことが主因だが、ユーロ圏の景気減速が目立っていた点も影響した。
- 今後のユーロ相場を占ううえでもこの2つの材料がカギになる。メインシナリオとしては、イタリアの新政権は実際に政権を担ううえで、現実路線にシフトしていくとみている。今回の政治不安で同国の長期金利が跳ね上がったことが新政権への牽制として作用することも期待できる。ユーロ圏の景気についても、一時的な悪影響が剥落することで持ち直し、ECBが金融政策の正常化を進めることでユーロは持ち直していくだろう。
- ただし、過度の楽観はできない。もしイタリアの新政権が支持基盤固を優先してバラマキ政策を推し進めようとすれば、財政不安が高まるとともに、EUとの摩擦が発生し、再びユーロ安圧力がぶり返すことになる。また、ユーロ圏の景気についても、減速の主因が昨年進んだユーロ高や米保護主義によるマインドの悪化であるのだとしたら、景気の低迷が長びき、ECBの正常化の遅れから、さらなるユーロ安を招く恐れがある。
- そして、今後もさらにユーロ安が進む場合には、円高ドル安を誘発する可能性がある点に注意が必要だ。ドルの実効レートが押し上げられることで、米景気の減速に繋がりかねない。FRBの利上げスタンスが慎重化し、円高ドル安圧力が強まることが想定される。また、トランプ政権が対外強硬姿勢を強めることを通じて円高が進む可能性もある。ドル高による景気減速を懸念するトランプ政権がドル安誘導発言や円安誘導批判を行う可能性があるほか、支持基盤固めを目的として保護主義的政策にさらに傾倒し、リスク回避的な円買いに繋がる事態も考えられる。その際、円は主要通貨のなかで独歩高になることになる。これまで大規模な金融緩和を続けてきた結果、日銀には追加緩和余地が殆ど残されていないため、日本サイドに打てる有効な手段は見当たらない。
■目次
1.トピック:急落後のユーロ相場の行方
・イタリア懸念などからユーロが急落
・ユーロ相場の行方
・さらなるユーロ安が円独歩高を招くリスクも
2.日銀金融政策(5月)
・(日銀)現状維持
3.金融市場(5月)の振り返りと当面の予想
・10年国債利回り
・ドル円レート
・ユーロドルレート
1.トピック:急落後のユーロ相場の行方
・イタリア懸念などからユーロが急落
・ユーロ相場の行方
・さらなるユーロ安が円独歩高を招くリスクも
2.日銀金融政策(5月)
・(日銀)現状維持
3.金融市場(5月)の振り返りと当面の予想
・10年国債利回り
・ドル円レート
・ユーロドルレート
(2018年06月01日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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