2018年05月23日

110円台回復後のドル円相場、ドル高の流れは続くか?~マーケット・カルテ6月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

文字サイズ

為替・金利 3ヶ月後の見通し ドル円は5月に入りドル高が進み、一時4ヵ月ぶりとなる111円台を回復。足元はやや下落したものの110円台半ばにある。米経済・物価指標の改善や原油高を受けた米金利上昇がドルの追い風になった。2月に米金利が上昇した際には米株価が崩れたことでリスク回避的な円高が進んだが、今回は米経済への自信を背景に米株価が持ちこたえ、素直にドル高が進んだ。

今後も中期的には円安ドル高基調が続くと予想されるが、しばらくはドル高の勢いが一服しそうだ。堅調な景気を背景とする米利上げ加速観測がドル高圧力となる一方、中間選挙を控えたトランプ政権は今後も通商・外交面での対外強硬姿勢を崩さず、リスク回避的な円買い局面が増えるだろう。また、7月以降は金融政策正常化に向かうユーロが底入れすることで、対ユーロでのドル売りがドル安の色彩を演出しそうだ。3ヵ月後の水準は現状比概ね横ばいの110円程度と予想している。

ユーロ円は、ユーロ圏の経済指標悪化やイタリア政局への警戒から下落し、足元は130円付近にある。しばらくはユーロの低迷が続きそうだが、経済指標の悪化は一時的とみられ、ECBはそのことを確認したうえで7月に量的緩和の再縮小を決定する可能性が高い。ECBの金融政策正常化に市場の目が向かいやすくなり、ユーロが底入れするだろう。3ヵ月後の水準は133円程度と予想している。

長期金利は、米金利上昇を受けてやや上昇したが、日銀の国債買入れが上昇を抑制する形で足元は0.05%付近にある。米債ヘッジコストの高止まりも円債への需要に繋がり、金利上昇を抑制している。今後も当面はこの構造が続き、長期金利は小動きの展開が予想される。3ヵ月後の金利水準は現状比で横ばい程度とみている。
 
(執筆時点:2018/5/23)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

(2018年05月23日「基礎研マンスリー」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【110円台回復後のドル円相場、ドル高の流れは続くか?~マーケット・カルテ6月号】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

110円台回復後のドル円相場、ドル高の流れは続くか?~マーケット・カルテ6月号のレポート Topへ