2018年12月06日

日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は3ポイント低下の16と予想

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 12月調査短観では、大企業製造業で4四半期連続の景況感悪化が示されると予想する。中国向け受注の減少など、設備投資関連を中心に貿易摩擦の悪影響が顕在化しつつある。こうした貿易摩擦や海外経済減速によるマイナスの影響が7-9月に相次いだ自然災害の影響剥落というプラス効果を上回るだろう。また、非製造業も構造的な消費の伸び悩みや長引く人手不足などから景況感が悪化すると予想。携帯料金の値下げ圧力も重石になっている可能性がある。インバウンド消費は自然災害の影響こそ薄れたが、勢いが鈍化しており、景況感を押し上げるには至らない。中小企業も、製造業、非製造業ともに悪化が見込まれる。
     
  2. 先行きの景況感も幅広く悪化すると予想。製造業では、海外経済減速や貿易摩擦激化に対する懸念が示されそうだ。米中貿易摩擦の終結は依然として見通せないうえ、来年初からは日米通商交渉が開始され、米政権による対日圧力が強まることが想定される。非製造業もインバウンドを通じて世界経済との繋がりが強まっているだけに海外情勢への警戒が現れやすいほか、人手不足深刻化に対する懸念も現れそうだ。
     
  3. 2018年度の設備投資計画は、前年比8.3%増と小幅に下方修正されると予想。例年12月調査では、計画が上方修正される傾向が強いうえ、高水準の収益や省力化投資需要が一定の追い風となる。しかし、貿易摩擦や世界経済を巡る先行き不透明感の強まりによって、設備投資の様子見や先送りの動きが広がりつつあり、計画を押し下げると見込んでいる。
     
  4. 今回の短観で最も注目されるのは設備投資計画の動向だ。例年のパターン通り、上方修正されるのか、それとも海外から強まる逆風の影響で下方修正されるのかがポイントとなる。また、近年上昇基調が続いてきた販売価格判断D.I.の動向も注目される。値上げの動きが継続するのか、それとも先行き不透明感の強まりなどから一服するのかがポイントとなる。
(図表1)日銀短観業況判断D.I.の予測表
■目次

12月短観予測:貿易摩擦等の影響でマインドが悪化、設備投資も下方修正へ
  ・大企業製造業の景況感悪化は4四半期連続に
  ・注目ポイント:設備投資計画と販売価格の動向
  ・日銀金融政策への影響:追加緩和策の説明を求める声が強まる
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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