2018年10月01日

日銀短観(9月調査)~大企業製造業の景況感は3四半期連続で悪化、設備投資計画の勢いは弱め

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 日銀短観9月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が前回6月調査比で2ポイント低下し、3四半期連続となる景況感の悪化が示された。大企業非製造業の業況判断D.I.もやや低下した。大企業製造業では一部業種における原材料価格上昇や中国経済減速、自然災害による生産停止の影響で景況感が悪化した。一方、大企業非製造業では、深刻な人手不足や大阪北部地震等の影響による訪日客の伸び鈍化などの影響で景況感が悪化した。中小企業の業況判断D.I.は、製造業が前回から横ばい、非製造業がやや上昇した。
     
  2. 大企業の先行きの景況感は横ばいとなった。製造業では、貿易摩擦激化やその影響を受ける中国経済減速への警戒が一部で現れているが、事態は流動的であることから、影響は限定的に留まっている。非製造業では、冬の賞与増や復興需要への期待が下支えとなったとみられる。ただし、今後は既に発動された米中の追加関税の影響が現れてくるとみられるうえ、米政権は今後も強硬な通商姿勢を崩さないと考えられることから、企業マインドの下振れリスクは高い。
     
  3. 2018年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年比8.5%増へと上方修正された。伸び率は例年に比べて大幅に高い水準にある。背景には良好な企業収益や省力化投資需要がある。ただし、例年9月調査では、主に中小企業で計画が具体化してくることによって上方修正される傾向が極めて強いため、上方修正自体にあまり意味はない。今回の上方修正幅は0.6%に留まり、例年に比べて見劣りする。単に6月調査段階での上方修正幅が大きかった反動が出たということも考えられるが、前回調査以降、米国・中国が毎月追加関税を発動するなど貿易摩擦が激化しており、一部企業で投資の様子見や先送りの動きが出ている可能性がある。
足元の業況判断DIは悪化・先行きは横ばい(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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