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- 日銀短観(12月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は3ポイント低下の16と予想
2018年12月06日
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12月短観予測:貿易摩擦等の影響でマインドが悪化、設備投資も下方修正へ
(大企業製造業の景況感悪化は4四半期連続に)
12月14日に公表される日銀短観12月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が16と前回9月調査比で3ポイント低下し、4四半期連続の景況感悪化が示されると予想する。また、大企業非製造業の業況判断D.I.も20と前回比で2ポイントの悪化を見込んでいる。
前回9月調査では、7-9月に相次いだ自然災害や中国経済減速、一部原材料価格上昇や人手不足などの影響で、大企業製造業、非製造業ともに景況感が悪化していた。
12月調査の結果を考えるうえで、前回9月調査後の事業環境を点検すると、追い風としては、自然災害の悪影響剥落が挙げられる。9月にかけては自然災害の影響で生産や消費などの経済活動が落ち込んでいたが、10月以降は持ち直しが確認できる。一方で、海外発の逆風は強まっている。中国や欧州などの海外経済減速を受けて輸出は減速基調となっているうえ、米中貿易摩擦激化が輸出環境悪化に拍車をかけている。中国の企業マインド悪化を通じた同国向け受注の減少など、日本企業でも設備投資関連を中心に悪影響が顕在化しつつある。長引く人手不足も引き続き非製造業を中心に景況感の重荷になる。10月以降に原油価格が大きく下落したことは、多くの業種にとって収益改善要因となるが、原材料価格に十分に反映されるまでにはタイムラグがあるため、影響は限定的だろう。
このように強弱材料がともに存在するが、大企業製造業では海外経済減速や貿易摩擦によるマイナスの影響が自然災害の影響剥落というプラス効果を上回り、景況感が悪化するだろう。その場合、景況感は4期連続の悪化となり、停滞感がますます強まることになる。また、大企業非製造業でも、構造的な消費の伸び悩みや長引く人手不足などから景況感が悪化すると予想。携帯料金の値下げ圧力も景況感押し下げに繋がっている可能性がある。インバウンド消費は自然災害の影響こそ薄れているものの、勢いが鈍化しており、全体の景況感を押し上げるには至らない。
中小企業の業況判断D.I.は、製造業が前回から2ポイント下落の12、非製造業が1ポイント下落の9と予想。大企業同様、製造業、非製造業ともに悪化が見込まれる。
12月14日に公表される日銀短観12月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が16と前回9月調査比で3ポイント低下し、4四半期連続の景況感悪化が示されると予想する。また、大企業非製造業の業況判断D.I.も20と前回比で2ポイントの悪化を見込んでいる。
前回9月調査では、7-9月に相次いだ自然災害や中国経済減速、一部原材料価格上昇や人手不足などの影響で、大企業製造業、非製造業ともに景況感が悪化していた。
12月調査の結果を考えるうえで、前回9月調査後の事業環境を点検すると、追い風としては、自然災害の悪影響剥落が挙げられる。9月にかけては自然災害の影響で生産や消費などの経済活動が落ち込んでいたが、10月以降は持ち直しが確認できる。一方で、海外発の逆風は強まっている。中国や欧州などの海外経済減速を受けて輸出は減速基調となっているうえ、米中貿易摩擦激化が輸出環境悪化に拍車をかけている。中国の企業マインド悪化を通じた同国向け受注の減少など、日本企業でも設備投資関連を中心に悪影響が顕在化しつつある。長引く人手不足も引き続き非製造業を中心に景況感の重荷になる。10月以降に原油価格が大きく下落したことは、多くの業種にとって収益改善要因となるが、原材料価格に十分に反映されるまでにはタイムラグがあるため、影響は限定的だろう。
このように強弱材料がともに存在するが、大企業製造業では海外経済減速や貿易摩擦によるマイナスの影響が自然災害の影響剥落というプラス効果を上回り、景況感が悪化するだろう。その場合、景況感は4期連続の悪化となり、停滞感がますます強まることになる。また、大企業非製造業でも、構造的な消費の伸び悩みや長引く人手不足などから景況感が悪化すると予想。携帯料金の値下げ圧力も景況感押し下げに繋がっている可能性がある。インバウンド消費は自然災害の影響こそ薄れているものの、勢いが鈍化しており、全体の景況感を押し上げるには至らない。
中小企業の業況判断D.I.は、製造業が前回から2ポイント下落の12、非製造業が1ポイント下落の9と予想。大企業同様、製造業、非製造業ともに悪化が見込まれる。
先行きの景況感も幅広く悪化すると予想。製造業では、海外経済の減速や貿易摩擦の激化に対する懸念が示されそうだ。月初の米中首脳会談の結果、米国による対中国関税引き上げは一時猶予されたが、米中貿易摩擦の終結は見通せない。さらに、来年1月からは日米通商交渉が開始され、米政権による対日圧力が強まることが想定される。自動車の関税引き上げや輸出数量規制導入、為替条項導入などによる輸出環境悪化が警戒されていると考えられる。非製造業もインバウンドを通じて世界経済との繋がりが強まっているだけに海外情勢への警戒が現れやすいほか、人手不足深刻化に対する懸念も現れそうだ。
2018年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前回調査で前年比8.5%増へと上方修正され、9 月調査としては1990年度以来の高い伸びとなったが、今回調査では前年比8.3%増と小幅に下方修正されると予想する。例年12月調査では、中小企業で計画が具体化してくることによって上方修正される傾向が強いうえ、高水準の企業収益(投資余力)や省力化投資需要が一定の追い風となる。しかしながら、貿易摩擦や世界経済を巡る先行き不透明感の強まりという逆風によって、設備投資の様子見や先送りの動きが広がりつつあり、その影響が設備投資計画を押し下げると見込んでいる。
2018年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前回調査で前年比8.5%増へと上方修正され、9 月調査としては1990年度以来の高い伸びとなったが、今回調査では前年比8.3%増と小幅に下方修正されると予想する。例年12月調査では、中小企業で計画が具体化してくることによって上方修正される傾向が強いうえ、高水準の企業収益(投資余力)や省力化投資需要が一定の追い風となる。しかしながら、貿易摩擦や世界経済を巡る先行き不透明感の強まりという逆風によって、設備投資の様子見や先送りの動きが広がりつつあり、その影響が設備投資計画を押し下げると見込んでいる。
(注目ポイント:設備投資計画と販売価格の動向)
今回の短観で最も注目されるのは設備投資計画の動向だ。既述の通り、12月調査では、例年、計画の具体化に伴って上方修正されやすいという統計のクセがある。一方で、前回調査以降、海外経済減速や貿易摩擦の激化の影響により輸出環境が悪化、先行きの不透明感も強まっていると考えられる。
例年のパターンに沿って、今回も上方修正されるのか、それとも海外から強まる逆風の影響で下方修正されるのかがポイントとなる。下方修正された場合は、12月調査としては2011年度以来7年ぶりのこととなる。
近年の日本経済において、設備投資が国内需要の牽引役となってきただけに、日本経済の先行きを占ううえでも設備投資計画の動向が注目される。
今回の短観で最も注目されるのは設備投資計画の動向だ。既述の通り、12月調査では、例年、計画の具体化に伴って上方修正されやすいという統計のクセがある。一方で、前回調査以降、海外経済減速や貿易摩擦の激化の影響により輸出環境が悪化、先行きの不透明感も強まっていると考えられる。
例年のパターンに沿って、今回も上方修正されるのか、それとも海外から強まる逆風の影響で下方修正されるのかがポイントとなる。下方修正された場合は、12月調査としては2011年度以来7年ぶりのこととなる。
近年の日本経済において、設備投資が国内需要の牽引役となってきただけに、日本経済の先行きを占ううえでも設備投資計画の動向が注目される。
(日銀金融政策への影響:追加緩和策の説明を求める声が強まる)
なお、今回の短観で筆者の見立て通り、景況感の幅広い悪化や設備投資計画の下方修正が示されたとしても、日銀の金融政策に対する直接的な影響はほぼないだろう。悪化したとしても、景況感の水準や設備投資計画の伸び率自体は引き続き高めという評価が可能であるためだ。
また、日銀が7月末に副作用軽減を目的とした金融緩和の修正(長期金利の変動許容幅拡大、ETF買入れの弾力化など)を決定してからまだ間がないため、しばらくは様子見スタンスを維持すると見込まれることもある。
ただし、貿易摩擦の激化や世界経済減速などが企業のマインドや設備投資計画に悪影響を及ぼしつつあることが明らかとなることで、景気・物価下振れ時の政策対応(追加緩和策とその余地)についての説明を求める声が強まる可能性が高い。黒田総裁は、従来、追加緩和の選択肢として、「金利の引き下げ」、「国債買い入れによる資金供給量の拡大」、「資産買い入れの拡大」を挙げてきたが、詳細については説明してこなかった。その具体的な効果や副作用、両者のバランス、緩和余地等についてのより具体的な説明が求められそうだ。
なお、今回の短観で筆者の見立て通り、景況感の幅広い悪化や設備投資計画の下方修正が示されたとしても、日銀の金融政策に対する直接的な影響はほぼないだろう。悪化したとしても、景況感の水準や設備投資計画の伸び率自体は引き続き高めという評価が可能であるためだ。
また、日銀が7月末に副作用軽減を目的とした金融緩和の修正(長期金利の変動許容幅拡大、ETF買入れの弾力化など)を決定してからまだ間がないため、しばらくは様子見スタンスを維持すると見込まれることもある。
ただし、貿易摩擦の激化や世界経済減速などが企業のマインドや設備投資計画に悪影響を及ぼしつつあることが明らかとなることで、景気・物価下振れ時の政策対応(追加緩和策とその余地)についての説明を求める声が強まる可能性が高い。黒田総裁は、従来、追加緩和の選択肢として、「金利の引き下げ」、「国債買い入れによる資金供給量の拡大」、「資産買い入れの拡大」を挙げてきたが、詳細については説明してこなかった。その具体的な効果や副作用、両者のバランス、緩和余地等についてのより具体的な説明が求められそうだ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年12月06日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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