2018年11月29日

「65歳の壁」はなぜ生まれるのか-介護保険と障害者福祉の狭間で起きる問題を考える

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

障害者が65歳以上になることで、従来の障害者福祉サービスを受けられなくなる「65歳の壁」問題が一部で注目されている。障害者に福祉サービスを提供する障害者総合支援法では、介護保険に同様のサービスがある場合、介護保険を優先するよう求める規定があるため、それまで受けていたサービスが受けられなくなったり、急に負担が増えたりする不都合が生じており、司法判断が下される事態も生まれている。

本レポートでは、介護保険法と障害者総合支援法の概要や相違点、国会での議論などを考察し、2つの制度の狭間で「65歳の壁」が生まれやすい構造を明らかにする。さらに、過去の通知や近年の制度改正、今年3月の岡山地方裁判所の判決などに触れつつ、問題解決に向けた選択肢を提示する。

■目次

1――はじめに~「65歳の壁」問題を考える~
2――「65歳の壁」問題の概略
  1|2つの法律の主な相違点
  2|障害者総合支援法の給付に関する概要
  3|「65歳の壁」のイメージ
  4|「65歳の壁」の実態
  5|国や関係団体の調査
3――「65歳の壁」問題が起きる理由~法的な枠組み~
  1|介護保険優先の原則
  2|介護保険法優先の原則を巡る国会答弁
  3|介護保険法優先の原則の妥当性
4――「65歳の壁」の問題が起きる理由~(2)現場の視点~
  1|2007年3月の通知
  2|自立観の違い
5――「65歳の壁」の解消に向けた制度改正
6――介護保険制度改正の影響を受ける可能性
7――岡山地裁の判決
8――「65歳の壁」の解消に向けた選択肢
  1|制度の統合は困難か
  2|「合理的配慮」の考え方を踏まえた柔軟な対応を
9――おわりに

(2018年11月29日「基礎研レポート」)

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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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