2018年11月29日

EC(欧州委員会)がソルベンシーIIレビューに関する協議を開始-EIOPAの助言をベースにドラフトを作成-

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(1)指令2009/138 / ECの適用初年度の保険及び再保険会社によって得られた経験は、2018年12月より前にソルベンシー資本要件の標準式を計算する際の方法、前提及び標準パラメータの見直しに使用されるべきである。

(2)InvestEU Programmeを確立する新たな規制に関する欧州委員会の提案は、EU全体の市場の失敗や準最適投資の状況に対処することに焦点を当てている。その提案には、投資プロジェクトの堅実なパイプラインの開発を支援するべきであるInvestEU Advisory Hubと投資家に簡単にアクセス可能で使いやすい投資プロジェクトのデータベースを提供するInvestEU Portalの設立が含まれる。これにより、InvestEUは、債券、ローン又はプライベート・エクイティの形での中小企業向けファイナンスへの投資ならびにその他の長期投資を支援する。標準式では、プライベート・エクイティ及びエクイティ投資に対する特定のルールは規定していない。InvestEU Portalによるこのような投資のアクセシビリティの向上が期待されているので、そのようなルールを導入する必要がある。2015年9月30日のキャピタル・マーケット・ユニオンの構築に関する行動計画に照らして、欧州への投資を促進し、欧州の中小企業の株式や債務へのアクセスを促進すべきである。従って、プライベート・エクイティ及びプライベート・ポジションの債務の健全性取扱は、これらの資産クラスへの投資に対する不当な障壁を取り除くために改正されるべきである。

(3)保険及び再保険会社による比例原則の適用が保証されるべきである。さらに、保険業界及び他の金融部門における経済運営者間の平等な競争の場を確保するために、保険及び再保険会社に適用される規定の一部は、信用及び金融機関に適用される規定と、そのような調整が異なるビジネスモデルに対応したものであるという程度で、調整されるべきである。

(4)適格CCPs(中央清算機関)への貿易エクスポジャーは、適格CCPsが提供する多国間のネッティング及びロスシェアリングのメリットから利益を得る。結果として、彼らは取引先の信用リスクが低下しているため、CCPのメカニズムを享受していない取引相手よりも自己資金需要が低くなるはずである。従って、カウンターパーティデフォールトリスクの標準的な計算は、信用機関や金融機関に適用されるエクスポジャーの資本要件と一致する形で、適格CCPsへの貿易エクスポジャーを扱うべきである。

(5)長期的な持続的成長のための連合の目的に貢献するためには、私募債務に対する保険会社の投資を促進すべきである。そのためには、保険又は再保険会社の内部信用評価に基づいて、指定ECAIによる信用評価が信用度ステップ2又は3に利用できない債券及びローンの割当てを可能にする基準を設定すべきである。

(6)関連するリスクフリー金利期間構造に関する技術情報の決定に使用されるデータの大幅な変更は、過去に使用されたデータソースがもはや利用できなくなる状況につながる可能性がある。さらに、データの利用可能性が向上すると、関連するリスクフリーの金利期間構造に関する技術情報の決定に使用される技術が時代遅れになる可能性がある。市場環境の大幅な変化は、終局フォワードレート、リスクフリー金利の外挿の開始点、又は終局フォワードレートへの収斂期間を含む、パラメータの再評価を必要とする可能性がある。そのような変更が、時間の経過とともに関連するリスクフリー金利期間構造に関する技術情報を決定する方法の透明性、慎重さ、信頼性及び一貫性の目的に見合っているかどうかを評価するための条件を明確にすべきである。この目的のために、EIOPAは、変更された技術、データの仕様又はパラメータの影響、及びデータの変更に関する変更の比例性の評価を欧州委員会に提出する必要がある。

(7)払込済劣後相互勘定、払込優先株式及び関連する株式プレミアム勘定の形態の劣後債務で支払われる自己資金項目は、ソルベンシー資本要件が3ヶ月連続で違反している場合の部分的な元本損失吸収メカニズムを提供するかもしれない。そのような項目がTier1自己資本としてどの程度適格であるかを明記する基準を確立すべきである。

(8)元本損失吸収メカニズムが引き起こされた場合の税効果による基本的な自己資本の損失は避けられるべきである。従って、保険及び再保険会社は、その仕組みの適用の免除を要求することができなければならない。しかし、免責条項を付与する前に、監督当局は、そのメカニズムの税効果が保険又は再保険会社のソルベンシー・ポジションを大幅に弱める可能性が高いと信ずる可能性があるかどうかを評価すべきである。

(9)保険セクターと他の金融セクターの経済運営者との間の平等な競争の場が確保されるべきである。従って、保険及び再保険会社は、事前の監督当局の承認を条件として、自己資本からその項目を除外する可能性のある自己資本項目の規制上の分類における予期せぬ変更がある場合、又はその項目の適用される税処理に予期しない変更がある場合、発行日の後最初の5年以内に自己資本項目の返済又は償還を行う可能性がある。

(10)ルックスルーアプローチは、会社の投資構造にかかわらず、保険又は再保険会社が晒されているリスクが適切に把握されるようにすべきである。従って、そのアプローチは、その保険又は再保険会社のための資産の保有又は管理を主目的とする保険又は再保険会社に関連する会社に適用されるべきである。

(11)ルックスルーアプローチを集合的投資会社又はファンドとしてパッケージングされた投資に適用することができない場合、保険又は再保険会社は、その単純化アプローチが関係するリスクの性質、規模及び複雑さに比例していることを条件に、集団的投資会社又はファンドの最後に報告された資産配分に基づく単純化アプローチを使用することが認められるべきである。

(12)解約リスクサブモジュールは、単一保険契約の水準に基づいて複雑な計算を必要とする。そのような複雑さが、サブモジュールに該当するリスクの性質、規模、複雑さに比例しない場合、それらのサブモジュールの計算は、もし、グループ分けが重大な誤りにつながるのでなければ、単一保険契約というよりはむしろ保険契約のグループに基づいて行うことが可能でなければならない。

(13)標準式の自然カタストロフィリスクのサブモジュールの計算は、そのリスクに対する保険又は再保険会社のエクスポジャーの性質、規模及び複雑さに比例する必要がある。自然カタストロフィリスクのサブモジュールの計算では、保険及び再保険会社が保険金額をリスクゾーンにマッピングする必要がある。全ての保険及び再保険会社が、内部システムで利用可能なこの計算に必要なリスクゾーンレベルに関する情報を持っているわけではない。これらの会社については、この情報を作成するのに費用がかかる可能性がある。これらの会社は、そのようなグループ分けに十分に根拠があり、エクスポジャーに比例している場合に、リスクゾーンのグループ分けに基づいて計算を行うことができるべきである。

(14)標準式の火災リスクサブモジュールの資本要件の計算では、保険及び再保険会社が最大の火災リスク集中を特定する必要がある。計算負担を制限するために、保険又は再保険会社は、そのアプローチが、保険又は再保険会社の火災リスクへのエクスポジャーの性質、規模及び複雑さに比例していることを条件に、最大の火災リスク集中のための識別プロセスを最大の火災リスクエクスポジャーの周辺に制限することができなければならない。

(15)標準式の生命・健康死亡リスクサブモジュールの資本要件の簡略化された計算は、保険契約のリスク資本が時間とともに変化する可能性があることを反映するように改正されるべきである。

(16)標準式を使用してソルベンシー資本要件の計算の格付けを取得するためのコストは、関連する資産リスクの性質、規模及び複雑さに比例する必要がある。従って、外部格付け機関を指名した保険及び再保険会社は、外部格付けが取得されていない負債ポートフォリオの部分について簡略化された計算が提供されるべきである。

(17)カウンターパーティデフォールトリスクに対するソルベンシー資本要件の標準式計算では、保険会社及び再保険会社は、カウンターパーティの破産財産に対するシェアがどのように決定されるかを考慮する必要がある。標準式による計算における不均衡な負担は避けられるべきである。それゆえ、カウンターパーティデフォールトリスクのためのソルベンシー資本要件の計算に標準式を使用した保険及び再保険会社は、保険又は再保険会社のカウンターパーティの破産の比例配分の決定担保を超える不動産の決定は、会社が担保を受領することを考慮しているとの前提に基づいて、計算を行うことができるべきである。

(18)ソルベンシー資本要件の計算のために標準式を用いている保険及び再保険会社は、タイプ1のエクスポジャーの損失分布の標準偏差が7%未満である場合に、タイプ1のエクスポジャーのカウンターパーティデフォールトリスクの資本要件の計算に特定の式を使用しなければならない。その要件を計算する際の不均衡な負担は避けられるべきである。従って、保険会社及び再保険会社は、タイプ1のエクスポジャーの損失分布の標準偏差が7%から20%の場合に適用される同じ式を使用して、タイプ1のエクスポジャーに関するカウンターパーティのデフォルトリスクの資本要件を計算することができる。

(19)保険引受リスクに対するリスク軽減効果の計算は複雑であり、損害保険事業を行っている保険及び再保険会社にとって、不均衡な負担となる可能性がある。従って、簡素化された式の使用が会社のリスクプロファイルの本質的規模及び複雑さに比例する場合、保険及び再保険会社が簡略化された式を使用できるようにすることが適切である。

(20)将来の契約に関する保険料のリスク費用は、1年超の契約期間に過度にペナルティを科すべきではない。従って、期間が1年以下の契約の場合、損害保険リスク及びNSLT健康保険の保険料のボリューム指標は、当初認識日から12ヵ月間に取得される保険料を除外する必要がある。期限が1年を超える契約の場合、より長期間の契約による将来の保険料に関連するより低いリスクを考慮に入れるために、損害保険リスク規模措置は将来の保険料の30%のみを考慮すべきである。

(21)自然カタストロフィリスクに対するソルベンシー資本要件の計算における会社の実際のリスクエクスポジャーを標準式に反映させるためには、自然カタストロフィに対する補償の契約上の限度を考慮する必要がある。

(22)人為的カタストロフィリスクに対するソルベンシー資本要件の計算は、保険及び再保険会社が晒されているリスクを引き続き反映するべきである。従って、海上、航空、火災のリスクに対するシナリオベースの計算は、再保険又は特殊目的の車両から回収可能な額の控除後の最大のエクスポジャーに基づいて行われるべきである。

(23)海上リスクサブモジュールのタンカー衝突シナリオを遊覧船又は硬式ゴムボート(RIB)に適用することは適切ではない。従って、このシナリオは最低250,000ユーロ以上の保険金を有する船舶にのみ適用される。

(24)保険会社による非上場株式への直接投資は、EUの長期的な持続的成長の目的に寄与することができるため、とりわけ、高品質の非上場株式投資のポートフォリオが、標準式で株式リスクの資本要件を計算する際に規制市場に上場されている株式と同じ取扱から恩恵をうけることを可能にすることによって、促進されるべきである。高品質の非上場株式ポートフォリオが十分に小さいシステミックリスクを有することを確実にするための基準が設定されるべきである。

(25)資本市場への長期投資は、資本市場組合に貢献する可能性があり、従って奨励すべきである。従って、保険会社は、少なくとも12年間平均で保有されているリング・フェンスの株式投資のサブセットに対して、株式リスクに対するより低い資本チャージを適用することが許されるべきである。しかし、保険又は再保険会社は、長期的にこれらの株式投資を保有することができることを証明し、そうする意向を文書化すべきである。

(26)標準式のスプレッドリスクサブモジュールの資本要件の計算は、保険又は再保険会社が高格付け私募債への投資を妨げてはならない。保険又は再保険会社は、信用機関又は投資会社との間で、指定されたECAIによる信用格付が利用できない債券及びローンに共同投資することを締結する可能性がある。その場合、保険又は再保険会社は、その信用機関又は投資会社の承認された内部格付手法の結果を、その信用機関又は投資会社が欧州経済域(EEA)に本店を有することを条件に、ソルベンシー資本要件を計算するために使用することが許可されるべきである。保険又は再保険会社が、指令2009/138 / ECの第100条に従って承認された内部モデルを使用する別の保険又は再保険会社との契約を締結した場合にも、同様のことが適用されるべきである。

(27)金融セクターをカバーする法律は、セクターのビジネスモデルの差異、資本要件の決定の分岐要素、又はその他の根拠を考慮しながら、一貫しているべきである。従って、地域政府及び地方自治体が発行する保証の認識のための保険及び再保険の規則は、信用機関及び投資会社に適用される機関によって発行された保証の認識のための規則と一致させるべきである。

(28)デリバティブは、デリバティブがヘッジ又は投機目的で保有されているかどうかにかかわらず、保険契約及び再保険契約を相手方のデフォルトリスクに晒す。従って、全てのデリバティブは、標準式のカウンターパーティのデフォルトリスクモジュールでタイプ1のエクスポジャーとして扱われるべきである。

(29)標準式による市場リスク集中の資本要件の計算の順序における相違は避けるべきである。従って、個々のエクスポジャーは、まず信用力のステップと相対超過エクスポジャー臨界値にマッピングされ、リスクファクターはその後単一名エクスポジャーのレベルで適用されるべきである。

(30)保険及び再保険会社は、例外的な損失シナリオ後の将来の課税利益の予測において過度に楽観的な仮定を使用すべきではない。標準式を用いて計算すると、繰延税金、保険及び再保険会社の損失吸収能力は、瞬時損失後の財務及びソルベンシー・ポジション、将来の課税対象利益の予測に関する不確実性の増加などがある。さらに、保険又は再保険会社の投資に対する想定収益率を含む瞬時損失に続く将来課税利益を予測するための仮定は、貸借対照表上の繰延税金の評価に適用される仮定及び予測される新契約の総額は事業計画の総額を超えてはならない。保険及び再保険会社は、これらのリターンが瞬時損失の後に実現されることを実証できる場合に限り、関連する金利期間構造に含まれるものよりも高いリターンを仮定することが許されるべきである。

(31)リスク管理実務の開発、特にリスク軽減手法の使用は、標準式のソルベンシー資本要件の計算に反映されるべきである。従って、この計算により、保険及び再保険会社は、期限切れ時に同様の手配で置き換えられる場合、又はリスク又は調整の頻度が1週間に1回に制限されていなければならないとの条件でリスク軽減手法の対象となるエクスポジャーの変動を反映するよう調整される場合に、リスク軽減技術の効果を考慮に入れることができるべきである。また、標準式は、いくつかの契約上の手配がリスク軽減手法の効果を併せ持つ場合に、デリバティブとヘッジ戦略の間のネッティング契約を可能にすべきである。一方で標準式に反映されたリスク緩和効果と他方に対する実際のリスク緩和効果との間に起こり得る偏差、及びベーシスリスクの評価は、会社自身のリスク及びソルベンシー評価に含めるべきである。

(32)再保険カウンターパーティがソルベンシー資本要件を遵守しなくても、最低自己資本要件を満たしている場合には、保険又は再保険会社は不利益なペナルティを科すべきではない。従って、再保険カウンターパーティとの再保険契約のリスク軽減効果を部分的に考慮に入れて、保険及び再保険会社を6ヵ月まで許可する必要がある。再保険カウンターパーティが最低自己資本要件を遵守しなくなった場合、保険又は再保険会社は、その再保険カウンターパーティとの再保険契約によるリスク軽減効果をもはや考慮に入れなくてもよいとすべきである。

(33)ストップ・ロス再保険契約は、ソルベンシー資本要件の計算において、標準式を用いて損失再保険契約を超過した場合と同様の扱いを受けるべきである。従って、保険会社及び再保険会社は、ソルベンシー資本要件の標準式計算におけるストップ・ロス契約によって提供されるリスク軽減を考慮に入れるべきである。会社固有のパラメータを計算するための標準化された方法を定めることにより、非比例再保険の標準的なパラメータを置き換える。

(34)繰延税金の損失吸収能力は、保険及び再保険会社のソルベンシー・ポジションに重要な影響を及ぼす。従って、保険又は再保険会社の管理、経営、監督機関(AMSB)は、これらの繰延税金の損失吸収能力を考慮した繰延税金に関連するリスク管理方針を採用すべきである。特に、その方針は、将来の課税対象利益の予測に適用される基礎となる仮定を評価する責任を定めるべきである。

(35)ソルベンシー資本要件の計算は、ソロとグループレベルで一貫していなければならない。ルックススルーアプローチが集団投資会社、又は参加保険又は再保険会社の関連会社であるファンドとしてパッケージ化された投資にソロレベルで適用される場合、ルックスルーアプローチもグループレベルで適用されるべきである。これらの集団投資会社又はファンドが保険又は再保険グループの子会社である場合、分散化利益は、他の連結資産及び負債との完全分散化を前提とするべきである。

(36)グループの通貨リスクに対する資本要件の計算は、特に保険又は再保険活動が異なる通貨建てである場合に、そのグループの特定の経済状況を反映すべきである。そのため、参加保険会社及び再保険会社、保険持株会社又は複合金融持株会社は、連結グループソルベンシー資本要件の通貨リスクが標準式に基づいて計算される場合、連結勘定の準備に使用された参照通貨以外の参照通貨を選択することができる。その選択は、グループの技術的準備金の重要な金額又は自己資本が表示される通貨などの客観的基準に基づいて行われるべきである。

(37)損害保険料及び準備金リスクサブモジュール、健康保険料及び準備金リスクサブモジュール、及び自然カタストロフィリスクサブモジュールの標準的な計算式は、保険料引当金及び支払備金に関する最近の経験的証拠を反映するように改正する必要がある。

(38)大量事故及び事故集中のための資本要件の複雑さの計算は、健康保険を提供する会社が曝されているリスクの性質、規模及び複雑さに比例していなければならない。従って、事故に起因する10年間続く障害に関するイベントタイプは、もはやこの計算から除外されるべきではない。

(39)委任規則(EU)2015/35には、間違った内部相互参照などのいくつかの誤植が含まれているがこれを改正する必要がある。

(40)損害保険市場における混乱を回避するために、特に一事業部門のみを運営する保険及び再保険会社については、保険及び再保険会社が損害保険及び健康保険の保険料及び責任準備金リスク・モジュールの計算における変更を準備するのに十分な時間を与えるべきである。従って、これらの変更は2020年1月1日より前に適用されるべきではない。

(41)従って、委任規則(EU)2015/35はそれに従って改正されるべきである。

 

4―まとめ

4―まとめ

ここまで、今回のレポートでは、欧州委員会が、EIOPAからの助言セットの提出を受けて、ソルベンシーIIのレビューに関する検討を進めてきた結果としての「ソルベンシーII規則改正案」について、その具体的内容等を報告してきた。

2―3|今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案のポイント」で述べたように、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案では、欧州委員会での検討を踏まえて、EIOPAの助言からの若干の改正が行われている。保険業界の大きな関心の的となっていた問題については、リスクマージンの問題はEIOPAの提案通り、金利リスクの見直しは保険業界の要望を受け入れてEIOPAの提案を却下等と、監督当局と保険業界の双方の意見を一定程度踏まえたドラフトとなっている。

今回の欧州委員会からの改正ドラフトの提案を受けて、Insurance Europe等の保険関係団体がどのような反応を示すのかは現段階では不透明だが、いずれにしてもこれらのフィードバックを踏まえて、最終案の策定が行われていくことになる。

因みに、EIOPAのGabriel Bernardino会長は、11月20日にフランクフルトで開催された第8回年次総会(8th Annual Conference)におけるオープニング基調演説において、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案について触れて、「我々は、欧州委員会が委任法のドラフトにおいて、我々の助言の大部分を考慮したことを喜んでいる。それにもかかわらず、私は金利リスクの取扱の見直しを検討することを延期することを残念に思う。そのような状況において、私は、株式リスクとリスクマージンの取扱のような他の分野に関する同様の決定が行われることを期待している。2020年のレビューに関して、EIOPAは改革ではなく進化を信じている。」と述べた。

このように、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案の中に含まれなかったリスクマージンや金利リスクの見直しについては、いずれにしても2020年のソルベンシーIIの全体的な見直しの中では検討されていくことになり、それが大変重要な課題になってくることになる。

ソルベンシーIIの改正を巡る動きについては、グローバルベースで資本規制の見直しが重要な課題になっている中で、世界各国の保険監督当局や保険会社等の保険関係者が注目している。その意味において、今回の欧州委員会によるソルベンシーII規則改正案に対する保険業界の反応及びそれを受けての欧州委員会の動き等については、大変関心が高いものであることから、今後も引き続き注視していくこととしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2018年11月29日「基礎研レポート」)

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【EC(欧州委員会)がソルベンシーIIレビューに関する協議を開始-EIOPAの助言をベースにドラフトを作成-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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