2018年11月28日

若年層と中壮年層に着目した外国人の人口動態

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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(3)外国人の中壮年層の状況
2017年度の外国人の中壮年層は約127万人となり、2013年度から約18万人増加した(図表13)。中壮年層に占める外国人の割合も1.8%から2.2%へ上昇している。
図表-13 中壮年層の推移 
都道府県別にみると、東京都(26.3万人・中壮年層に占める割合3.9%)が最も多く、次いで愛知県(12.1万人・3.5%)、神奈川県(11.1万人・2.5%)、大阪府(11.1万人・2.7%)、埼玉県(8.8万人・2.5%)、千葉県(7.7万人・2.6%)の順に多い(図表14)。若年層と同様に、首都圏(1都3県)に中壮年層の約4割が集中している。
図表-14 外国人・中壮年層[都道府県別]
また、人口増加率に着目すると、2013年度からの2017年度にかけて最も増加した都道府県は、島根県(43.2%)であり、北海道(39.6%)、香川県(37.2%)、鹿児島県(36.9%)であった(図表15)。大都市圏だけなく、地方でも外国人(中壮年層)が増えていることが窺える。
図表-15 外国人・中壮年層の増加率(2013年度→2017年度)
市区町村毎の状況をみると、中壮年層でも、若年層と同様に9割以上の自治体で外国人の占める割合は上昇した(図表16)。外国人の占める割合が特に高い(10%以上の)自治体は、「東京都新宿区」・「横浜市中区」・「大阪市浪速区」・「大阪市生野区」・「名古屋市中区」・「群馬県大泉町」・「北海道占冠村」であった。
図表-16 中壮年層に占める外国人の割合(市区町村別)
先行研究4等によれば、外国人の集住が進んでいる地域の特徴として、「(i)大都市インナーエリア(中心部)」、「(ii)地方の工業都市」、「(iii)エスニック・コミュニティ」等が挙げられる。

「(i)大都市インナーエリア(中心部)」とは、大都市の中心部で就業や、日本語学校などの就学機会が得やすいことから外国人の居住が進んだ地域を指す。前述の自治体では、「東京都新宿区」・「大阪市浪速区」・「名古屋市中区」が該当する。これらの自治体の在留外国人の国籍構成をみると、日本全体における国籍構成と同様に、「中国」の占める割合が最も大きい(図表17)。

「群馬県大泉町」は、「(ii)地方の工業都市」であり、大手家電メーカーや食品メーカーの工場が立地し、製造業が地域の基幹産業となっている。在留外国人の国籍構成をみると、「ブラジル」の割合が最も大きく、半数以上を占めている。1990年の入管法改正により、日系ブラジル人は就労に制限がなくなったことで、工場等での単純労働に従事する目的で来日する労働者が急増した。2008年の世界金融危機や、2011年の東日本大震災により、来訪者が減少した時期もあったが、現在も、ブラジル人をはじめとする多くの外国人が暮らしている。

また、「(iii)エスニック・コミュニティ」とは、戦前から、航路の開通等をきっかけに移住者が増え、現在でも外国人住民が多い地域を指す。前述の自治体では、「横浜市中区」と「大阪市生野区」が該当する。在留外国人の国籍構成をみると、「横浜市中区」は「中国」が5割強、「大阪市生野区」では「韓国」が約8割を占めている。「横浜市中区」は「横浜中華街」、「大阪市生野区」では「生野コリアンタウン」が形成されている。
図表-17 在留外国人の国籍構成 [対象;中壮年層に占める外国人の割合が10%以上の市区町村]
 
4 是川夕『非類似性指数からみた在日外国人の住み分けの現状と要因-国勢調査小地域集計を用いた分析』人口学研究第44号、2009年5月
 

3――おわりに

3――おわりに

日本人が減少する中、外国人の増加は著しい。特に、住宅市場や労働需給等に大きな影響を及ぼす若年層と中壮年層ではその存在感は急速に高まっている。また、首都圏だけなく、地方の市区町村にもその動きは広がっている。今後も、政策に後押しされ、留学生および外国人労働者の流入は続くと見込まれる。我が国の経済成長率や不動産市場、労働市場への影響が考えられ、各種経済指標の見通しを立てる上で、外国人の人口動態を引き続き注視する必要があるだろう。
 
 

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

(2018年11月28日「基礎研レポート」)

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