2018年11月28日

若年層と中壮年層に着目した外国人の人口動態

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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1――はじめに

総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態および世帯数」によれば、日本人は減少し続けているのに対し、外国人が急速に増加している。2017年度は、日本人が約1億2,520万人であるのに対し、外国人は約250万人に達した(図表1・左グラフ)。増減数をみると、日本人が前年から約40万人減少したのに対し、外国人は約20万人増加したことで、総人口は約20万人程度の減少に留まった(図表1・右グラフ)。日本人の減少の半分を外国人の増加が補っている。人口減少局面に入った日本において、外国人の存在感は一層高まっている。
図表-1 人口の推移(全国)
このうち、若年層(15歳~29歳)と中壮年層(30歳~64歳)に着目すると、日本人はどちらの層も減少する一方で、外国人はどちらの層も増加している。2013年度を100とした時、2017年度の外国人の若年層は144、中壮年層も116となり、特に若年層が大きく増加している(図表2)。
図表-2 若年層および中壮年層の推移(全国)
外国人労働者の受け入れ拡大に向け、2018年11月に、新たな在留資格を創設する出入国管理法の改正案が閣議決定された。改正案では、今後5年間で最大34万人の外国人労働者の受け入れを見込んでいる。今後も外国人の増加が続く公算は大きく、住宅市場や労働需給への影響等、外国人の人口動態を注視する必要性が高まっている。

そこで、本稿では、若年層と中壮年層に着目し、外国人の人口動態を概観する。
 

2――外国人の人口動態

2――外国人の人口動態

(1)概況
前章に示した通り、外国人は過去4年で約200万人から約250万に急増しており、総人口に占める外国人の割合も2013年度の1.6%から2017年度の2.0%へ上昇している。

図表3は、都道府県毎に、総人口に占める外国人の割合を示したものである。外国人の割合が最も高い都道府県は、第1位が「東京都(3.8%)」で、第2位が「愛知県(3.1%)」である。「群馬県(2.7%)」や「三重県(2.6%)」も外国人の割合が高い。製造業が盛んな県では、工場や物流拠点等において、深刻な人手不足を外国人労働者に頼る企業が増加しており、外国人の割合が高くなっている。
図表-3 総人口に占める外国人の割合(都道府県別) 
外国人の増加要因の1つに外国人労働者の急増が挙げられる。厚生労働省「外国人雇用状況」によれば、外国人労働者数は、2013年度の約72万人から、2017年度には約128万人へと大幅に増加した(対2013年度対比78%増加)。

外国人労働者を在留資格別にみると、「身分に基づく在留資格」(45.9万人)が最も多く、次いで「資格外活動」(29.7万人)、「技能実習」(25.8万人)が多い(図表4)。「身分に基づく在留資格」とは、永住者や日系人、日本人の配偶者等であり、「資格外活動」は留学生のアルバイト等を指す。「技能実習」は、入国後1年目の技能などを習得する活動(第1号技能実習)、2・3年目の習得技能をさらに習熟させるための活動(第2号技能実習)、そして4・5年目の技能をさらに熟達する活動(第3号技能実習)の3段階に分かれている。
図表-4 外国人労働者の在留資格
従来、わが国では専門的・技術者に従事する者の受け入れは積極的であった一方、単純作業を目的とした労働者の受け入れには慎重であった。そのため、単純作業等を行う仕事は、アルバイトを行う留学生や、技能実習生等で担われている実態があり、国内で就労する外国人の中でも大きな比重を占めている1。2013年度を100とした時、2017年度の「資格外活動」の在留資格に基づく労働者は244、「技能実習」も180となり、大幅に増加している(図表5)。こうした「資格外活動」や「技能実習」の労働者は、若年層(30歳未満)が多い。
図表-5 外国人労働者の推移(在留資格別)
人口における年齢構成(人口ピラミッド)をみると、日本人は、若年層(15歳~29歳)14.4%、中壮年層(30歳~64歳)45.4%、高齢層(65歳以上)27.7%と、若年層が少なく高齢層が多い「壺型」となっている(図表6)。一方、外国人は、若年層34.2%、中壮年層50.7%、高齢層6.6%と、高齢層が極端に少なく、若年層・中壮年層の割合が高い「富士山型」に近い形をしている。

そこで、次項以降は、外国人に占める割合の大きい若年層と中壮年層について確認する。
図表-6 日本人と外国人の年齢構成 (全国)
 
1 小針泰介『賃金から見た外国人労働者問題』国立国会図書館・調査と情報、2018年11月15日
(2)外国人の若年層の状況
2017年度の外国人の若年層は約85万人となり、2013年度から約25万人増加した(図表7)。若年層人口を押し上げている要因の1つは、大学や日本語学校に通うために来日した留学生の増加である。日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」によれば、外国人留学生は、2013年度の約17万人から、2017年度には約27万人に増加した(2013年度対比59%増加)。政府は、2008年に2020年までに留学生を30万人まで増やす方針を示したが、目標の達成に近づいている。

この結果、若年層の人口に占める外国人の割合は、3.0%から4.5%まで上昇した(2013年度→2017年度)。30歳未満の若者の約20人に1人が外国人という状況である。
図表-7 若年層と外国人留学生の推移
また、都道府県別にみると、東京都(19.2万人・若年層に占める割合8.6%)が最も多く、次いで愛知県(7.4万人・6.1%)、大阪府(6.4万人・4.7%)、神奈川県(5.6万人・4.0%)、埼玉県(5.4万人・4.8%)、千葉県(5.4万人・5.1%)の順に多い(図表8)。就学やアルバイトの機会を得やすい首都圏(1都3県)に若年層の約4割が集中しており、なかでも東京都では、若者の約10人の1が外国人という状況である。
図表-8 外国人・若年層[都道府県別]
次に、人口増加率に着目すると、2013年度から2017年度にかけて50%以上増加した都道府県は、16自治体にのぼる(図表9)。首都圏だけでなく、北海道や東北、九州でも大きく増加している。外国人留学生数を都道府県別にみると、2013年度から2017年度にかけて50%以上増加した都道府県は、15自治体を数える(図表10)。首都圏の大学だけでなく、地方の大学でも留学生を積極的に受け入れていることがわかる。こうした留学生の大幅な増加が若年層の人口を押し上げている。
図表-9 外国人・若年層の増加率(2013年度→2017年度)
図表-10 都道府県別にみた留学生数
市区町村毎の状況をみると、若年層に外国人が占める割合は、2013年度と比較して9割以上の自治体が上昇している(図表11)。外国人の占める割合が特に高い(30%以上の)自治体は、「北海道留寿都村」・「北海道赤井川村」・「北海道占冠村」・「北海道ニセコ町」・「北海道倶知安町」であった。
図表-11 若年層に占める外国人の割合(市区町村別)
上記の自治体は、オーストラリア等からの訪日客に人気が高いスキーリゾートが立地しており、外国資本によるホテル開発等が進んでいる2。また、「北海道ニセコ町」では北海道インターナショナルスクール・ニセコ校が2012年に開校しており、就学環境も整いつつある。在留外国人の国籍構成をみると、いずれの自治体も、オーストラリア等を含む「その他」の割合が最も大きい(図表12)。外国人観光客をターゲットとした宿泊施設の従業員や、スキーのインストラクター3として働く在留外国人やその子弟が増加していると考えられる。
図表-12 在留外国人の国籍構成 [対象;若年層に占める外国人の割合が30%以上の市区町村]
 
2 日本経済新聞・電子版「ニセコ開発 周辺に広がる あふれる海外投資マネー(不動産最前線下)」2018/7/3
3 住宅新報「地域が変わるインバウンド 交流人口増加がもたらす恩恵」2018年9月25日号
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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